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ジョギング

クロエ「おや。遊部さんではありませんか」

遊部「クロエお姉さま!? そ、そのお姿は――どぶしゃぁぁあああああ!!!(吐血)」

クロエ「普通の運動着ですが……なぜ遊部さんは吐血なさっているのでしょう……?」

遊部(僧侶)「問題ありませんわ、クロエ様。ええ。問題など、あろうはずがありません。クロエ様の豊満なバスト、細いウエスト、形の良いヒップ、そしてスラリとした美脚を強調するトレーニングウェアなど、全人類の宝以外の何物でもありませんもの……」

クロエ「そうですか。それは、なによりです」

遊部(僧侶)「ところで、クロエ様はなぜ運動を……? 《資産》であるクロエ様はジョギングなどせずとも体型は変わらないはずですが……」

クロエ「意識の問題ですね。マスターの《資産》として、正妻第一候補として、意識から女を磨く必要があるのです。体型も運動能力も変わらずとも、細かな所作や雰囲気などに、必ずこの努力は現れるものと確信しております」

遊部(僧侶?)「なるほど……。そうなのですね……。そこまで想われるとは、あの敗斗さんが羨ましいやらなにやらで、ぬっころしたくなりますね……」

クロエ「……。ところで、遊部さん。あなたは確か世界の裏表を問わず《情報屋》として活躍なさっていたかと思いますが、私にも情報を売ってもらえるのでしょうか?」

遊部「ほえ? いいっスけど……百合ちーの情報料は高いっスよ? クロエお姉さまなら可能な限りサービスしますが……」

クロエ「ぱふぱふ一回でいかがでしょう?」

遊部「なんでもお聞きください」

クロエ「ありがとうございます。では、マスターを男女的な意味で落とす方法を教えてください」

遊部「敗斗さんっスか? あー……それはちょっと難しいっスねー……」

クロエ「と言うと?」

遊部「クロエお姉さまもご存知の通り、あの人、重度の拝金主義者ですし、基本的に女の子へのアレコレよりお金が優先なんスよ。お姉さま方が近くにいるのに手を出さないのは、以前言っていた『女は負債!』を本気で思ってるんじゃないっスかねー……」

クロエ「なるほど……。しかし、マスターも健全な男子高校生です。どんな拝金主義者でも性への情動は少なからず持っているはず。クリティカルな性癖などないのでしょうか?」

遊部「性癖っスか? うーん……強いて言えば、『使える女』とか好きなんじゃないっスか? ほら、敗斗さんって百合ちーを頻繁に訪ねてきますし、電話もメールもしょっちゅうしてくるし、なんならラブホに呼び出されたことも――」

クロエ「…………遊部さん?」

遊部「ひぃっ!? こ、恐いっス、クロエお姉さま! ラブホといってもカナミお姉さまも一緒でしたし! あれも情報収集の一貫だったというか――!?」

クロエ「……まあ、良しとしましょう。では、マスター秘蔵のえっちぃ本、もしくはそれに類する『ご使用』になられた電子データの傾向を所望します」

遊部「いや、さすがにそんな情報はないっスねー……。百合ちー自身、敗斗さんの性事情なんて知りたくないですし、そんな情報を欲しがるクライアントも過去にいなかったので、データをとっていないというか……」

クロエ「そうですか……。時に、遊部さん?」

遊部「はいっス」

クロエ「これから私は人通りの少ない道を30分ほどジョギングする予定なのですが、遊部さんが希望するなら、後ろから追走することを許可します」

遊部「!?」

クロエ「きっと、胸もお尻もたくさん揺れるでしょうね。汗もたくさんかくと思います。レギンスや運動着もしっとりするかもしれません」

遊部「!!?」

クロエ「その上で、もし遊部さんがジョギング終了までに先の情報を見つけてくださったら――……ぱふぱふに追加して、この運動着を一式プレゼントすることとします」

遊部「どぶほぉぉぉおおおおおおおお!!?(吐血)」

クロエ「いかがでしょう?」

遊部(僧侶)「必ず……! 必ずクロエ様のご期待に応えてみせます……!」

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