見出し画像

ボードゲームデザインチェックリストやってみた。その2

「クラクラップ!」もチェックしてみよう

Studio GGのShun (@nannann2002)さんが「ボードゲームデザインチェックリスト」の記事の中で「つまらない」をなくすディベロップメントの確認ポイントをチェックリストにして示されてます。

「クラクラップ!」もこのチェックリストでチェックしてみます。クラクラップはゲムマ21大阪で頒布するのみとなっているため、もはや遅い感もありますが今後のためにもチェックしてみます。(その2ですがかなり長いです)

ルールはこちらで紹介しています

ダウンタイム

・手番で悩む時間が長くはないか?

クラクラップはデッキビルド系数値比べバトルです。3人から6人まで遊ぶことができます。この中でデッキビルドと6人という要素はダウンタイムの種になりえます。しかし、クラクラップは基本悩む部分が同時処理のため、十分悩む時間をとってもダウンタイムという感じにはなりません。

・手番でやることが多すぎないか?
・手番は分割出来ないか?

細かく6フェーズに分けてプレイが進むため、各フェーズで行うことは単純です。処理を複雑化しないため手番を分割しフェーズでの進行にしています。

・他プレイヤーの手番の間に出来ることはあるか?
・手番プレイヤーの行動に注目したい理由はあるか?

基本が同時処理のため手番を感じるのは、「技の交流」というカードを公開ドラフトする部分です。バトルで2番だったプレイヤーから順にカードを獲得していくので、他のプレイヤーは指をくわえているだけです。これは指をくわえてもらうしかありません。

収束性

・ゲームは長すぎないか?

8回のダンスバトル後にゲームは終了します。デッキの周りとしては3回シャッフルが入るだけです。比較的軽いゲームです。

・ゲーム中、必ず進行する要素はあるか?
・その要素はゲームの終了と関係しているか?

ダンスバトルの回数は必ず進行し、進行具合はメインボード横に置かれたカード枚数で管理されています。バトルごとにカードが公開され、そのカードは「技の交流」で獲得することができる特殊効果付きカードとなります。全てのカードが公開されるとゲーム終了となります。最後の2枚は獲得できるカードではなくミニイベント的なカードです。

・ゲームの終了を近づけない得点アクションはないか?

何をしてもダンスバトルの回数は進んでいきます。全員がバトルに参加しないことも起こりえますが、それでもバトルは進んでいきます。

多様性

・1ゲーム中に同一のシーンが発生していないか

基本的に2から6までのカードの2枚の組み合わせで数値比べするため、同様の場面は起こりえます。それを少し変化させる特殊効果付きカードが1割ちょっと含まれ、ダンスバトルが進むたびにその割合が増していきます

・ゲーム最初の手番の選択は毎ゲーム変化し得るか?
・ゲーム開始時に、毎回異なる戦略を検討することが出来るか?

デッキビルド系ゲームの初期デッキは共通であることが多いのですが、クラクラップではシャッフルが3回までということもあり、プレイヤー間のデッキの違いができにくいです。そこで、各プレイヤーには最初から1枚特殊効果付きカードが配られています。これによりデッキビルド系ゲームにありがちな初手の定番の行動は起こりにくく毎ゲーム異なる選択を迫られます。

耐久性

・50〜100回以上プレイしてももっとプレイしたいと思えるか?

こればかりは好みの問題もあると思うのでいかんともしがたいです。気持ちとしては、ショートタイムのデッキビルドという他にないカテゴリなので、適したシーンで長く遊んでいただきたいです。

・ゲームが解析済となっても、「遊び」として成立するか?

ゲームの理解が進むと、読み合いと誰があのカードを持っているのかを把握することが大事になってきます。それが全て解析されたとしても同値による早ポーズ決めが存在するため油断できません。また、デッキビルド特有の運要素を含んでいるため完全にその揺らぎをコントロールすることは難しく、運に翻弄されたゲームとしても楽しめると思います。

ガードレール

・初心者に取って分かりやすいゲームの指針はあるか?

フェーズに従って進んでいくわけですが、やることの種類や選択が多く、初心者にとっては難しく感じるかもしれません。今何をする場面なのかをフェーズごとに示したサマリーは用意していますが皆でフォローしあうのが良いかもしれません。とりあえず大きな数字になるようにバトルすることさえ分かっていれば初心者でも一喜一憂はできる仕様であります。

・罠(一見良く見えるが、実は非常に効率の悪いアクション)はないか?

クラクラップではダンスバトルに参加するかしないかの選択が重要です。ダンスバトルに参加しないとダンスバトルで勝利することはないため勝利点も得られません。よって、ダンスバトルに参加することが一見よく見えますが、これをやり続けるとテンションが下がっていきます。テンションが下がると勝利点ボーナスを得られなくなり、勝利から遠ざかります。まさに罠。罠であることに気づいてから休むこととのバランスを考えることになるはずです。一方テンションは0になると必ず休まなければならず、罠ストッパーになっています。

・ゲーム中または終了時、一見して点差が付き過ぎるということはないか?

テンションが4の状態で勝利すると4マスヴィクトーリロードを進むことができます(勝利点4)。このゲームでは2つ目の終了条件があり、ヴィクトリーロードを8マス進むと8回目のダンスバトルを待たず勝利となります。ということでテンション4で2度勝利すればそこで終わりのような気もします。しかし、テンションのキューブには上限があり終盤は高いテンションで勝利してもテンションによるボーナスが小さくなる仕様になっています。また、勝利すればするほどデッキが弱体化していき、勝利することが難しくなっていく、キャッチ・ザ・リーダー的な仕組みが自然に含まれています。

・セットアップは大変過ぎないか?

配置さえ理解できれば、セットアップ自体は簡単です。配置は説明書に図入りで示しました。

・インストに時間がかかりすぎないか?

これが一番の問題かもしれません。軽いゲームなのですが処理の種類は多いためインストはちょっと時間がかかります。確実に共通認識しておかなければならないことも多いため、インストには十分な時間が必要です。

・忘れやすい処理、間違えやすい処理はないか?

手をたたく回数ルール、捨て札の置き方、カードの重ね方、特殊効果、勝利時のボーナス等気を付けなければならないことばかり。テストプレイの様子で最も間違えやすそうと感じたのは捨て札の場所です。

・ゲーム中の処理を行う時間は選択を行う時間より十分に短いか?

コアな部分の処理は一瞬で行うことになります。そしておもむろにポーズを決めてください。

・多くの処理をさせる場合、それはそのプレイヤーに利益を与える処理になっているか?

手をたたく行為で他プレイヤーの情報を得る。参加するかの選択で得点行動に行くかどうか判断する。デッキの強化を行う。追加ボーナスを獲得する。という処理がそれぞれのフェーズにはあります。プレイヤーの利益につながっていると思います。

UI

・認知負荷が高過ぎないか?

6人プレイ時には数字のセットが最大6組表になり、それを足したり、時には引いたり割ったり掛けたり、さらには5や6が0になったりする処理を瞬時に行うのはかなり高負荷です。UI的には別府さいさんのデザインによってダンスっぽいポップなカードでありながら数字部分のコントラストがはっきりした見やすいものになっていると思います。見えにくい負荷ではなく、数字の嵐負荷に集中できると思います。

・ゲーム中必要な情報は閲覧しやすい位置にあるか?
・それらは小さすぎたり、コントラストが低すぎたりしないか?

基本的に共有すべき情報は各プレイヤーの得点とテンションなのですが、いい感じのデザインになっているメインボードとテンションゲージによって管理されています。キューブがクリアキューブを使っているため見にくい部分も多少ありますがキラキラした感じが好きです。

・カードテキストが長すぎないか?

プレイするカードにテキストは入れていません。数字に集中できます。

プレイ人数

・プレイ人数の幅は増やせないか?
・対応しているすべてのプレイ人数で面白いゲームになっているか?

当初3-4人プレイを考えていたのですが、最終的には6人までプレイできるゲームになりました。ただし、3人と6人では多少プレイ感が異なるゲームになっていることは否定できません。少ないプレイ人数になればなるほど誰がどのカードを持っているかの情報が重要度を増し、ガチ勝負寄りになると思います。6人プレイは運要素の揺らぎが大きくパーティ寄りになると思います。ただ拍手を聞き分けるおもしろさは6人で味わって欲しいです。びっくりします。

チェックしてみて

その1でも書きましたが、これらのチェックはゲーム制作の過程の中で、考えなければいけない課題として出てきたことだなと改めて思いました。その上でクラクラップに関しては、それらを指摘していただいたのは、黒澤でべそ(@kanjishima)さんの主催する富山のテストプレイ会に参加されていた皆様であり、みさき(@sakimiyamisaki)さんの主催する名古屋テストプレイ会に参加されていた皆様だったと思います。本当に感謝しかありません。そして、その課題がシステムにきれいに収まった時の感覚は、ボードゲームで自分なりのルートを見つけ出した時のような高揚感を感じる黄金体験でした。

クラクラップは今までにない体験をして欲しいという想いでシステムを構築しています。

テをタタキ ノルかミルか

感覚と論理と駆け引きのパズルを解く体験でクラクラしてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?