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垂直の詩

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空       言 間 に 立てる 葉
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2022年7月の記事一覧

風と踊る

風と踊る

潮騒の夕暮れ 風と踊る
リズム 鼓動と呼応して
原始の記憶 ただ漂う

瞬きの時
僕は僕であることからも解き放たれて
音の波 揺られながら
曖昧なまま 空に溶ける

ちっぽけな感情は橙の雲に消えて
時間と空間 重鳴り逢う瞬間
その確さを抱きしめる

始まりも終わりもないステップ
やさしく 祈るように
一度きりの夜は いまここに 永遠に

深夜の宇宙ステーション

深夜の宇宙ステーション

居た堪れない感情を
どうすることもできず
街灯だけを頼りに
ぼくはただ歩くことしかできない

深い静寂 行くあてもなく
ぼくは船から放り出された
宇宙飛行士

気怠い重力に引っ張られながら
長い坂を下るサンダルの音

眠るバス通りのなかに
くっきり浮かぶコンビニは
そこだけ昼間みたいな顔をして

煙草の火 ペットボトルの冷たさ
時間はゆっくりと静止したまま
曇り夜空の隙間に星が見える
深夜の宇宙ス

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埋葬

埋葬

男は赤いターバンを巻いている
赤は深淵なる祖先の記憶を意味する

男は村に死者が出ると弔いのための弦を弾く
悲しみと慈しみの調べが、
ながいながい夜を包み込む

空が白々と明ける頃
白い装束を纏った娘たちが唄いながら
死者の掌にニッケの種子を握らせ、全身を麻の布で包む

亡骸は女たちによって運ばれ
村の外縁を流れる小川にかかる橋を渡り
森の奥まで運ばれ、日の出と共に埋葬される

埋葬と豊穣祭の日を

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