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埋葬

男は赤いターバンを巻いている
赤は深淵なる祖先の記憶を意味する

男は村に死者が出ると弔いのための弦を弾く
悲しみと慈しみの調べが、
ながいながい夜を包み込む

空が白々と明ける頃
白い装束を纏った娘たちが唄いながら
死者の掌にニッケの種子を握らせ、全身を麻の布で包む

亡骸は女たちによって運ばれ
村の外縁を流れる小川にかかる橋を渡り
森の奥まで運ばれ、日の出と共に埋葬される

埋葬と豊穣祭の日を除いて
森に足を踏み入れてはならない
女のほかに森に入るのを許されているのは
赤いターバンの男ひとりだけ

男が爪弾く弦の音は、亡骸とともに土に還り
やがて大地に根を張る

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