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垂直の詩

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空       言 間 に 立てる 葉
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2021年11月の記事一覧

逆さまの重力

逆さまの重力

僕は泥の塊で
海水の記憶を餌にバクテリアは活動している
有機物の体温のなかに
宇宙という言葉に収まりきらない宇宙がある

逆さま世界 からっぽの穴
むなしさの底に落っこちないように
大地にへばりつき 根をおろす
重力という垂直運動

温度のない永遠の昼間のなかで
雲のうえに投げられた数字と記号
目に見えないものの信奉者は 僕ではなかった
逆さま世界 からっぽの穴

見える化 見えるか 可視化する仮

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黒鉛

黒鉛

削った黒鉛を紙の上にこすりつける
実感 実存を超えた意識の渇望
縦に書きつける声の痕跡 鉛の跡

排泄と循環を繰り返す
臓器の内側をひっくり返して
ほんとのことに つながる瞬間

鉛を飲み込んだ鳥の声
僕の言葉 その曖昧な境界線の上
こすれる黒鉛の雲がかかる

ほんとのことのB面を
Bの鉛筆で書きつける ユニ・ヴァース
表出する世界のB面には聴こえない
A面の歌を聴くために

超猿の歌

超猿の歌

宇宙の赤ん坊の産声 獣の雄叫び
太く握る スプリフと骨
腹の中に世界をまるごと飲み込んで
ねじれた時間軸のなかに残響は揺らぎ木霊する

縦と横に織り上げるテキスタイル
煙を吹きかけて 黒い箱舟のなかに入れる
次元を半歩スライドし
羽毛に包まれたまま覚醒する

空という巨大な穴 ブラックホールの底
剥がれた月に住むコオロギの羽根の音が
アフリカのジャングルに住むライオンに届くとき
狂った超猿は 焼き

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触れる

触れる

冷たい月 わたしの手が
木葉の朝露 わたしの舌が
蒼い風 わたしの声が
触れる 触れる 触れる ゆっくりと

気が触れた振り子のように
繰り返す 等間隔の往復運動
此方と彼方を 行ったり来たり
結んでひらく無限の距離

反復するリズム 記憶に触れる
差異のなかを歩む 犀の角
現実と幻想を隔つ水平線を
指でなぞる 曖昧な蜃気楼

遠い記憶を近く
わたしの内に知覚する
世界の境界線 その向こう側
わた

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塩の行進

塩の行進

歩く 歩く
たしかめるように
大地の上 水平に
うろつく 獣の巡礼

ゆっくり ゆっくり
みつめるように
ひまわりの茎 垂直に
ゆっくり登る カタツムリ

まわる まわる
欲望機械の外側に
この手でまわす
いのちを紡ぐ 糸車の音

アフダマーバードから
ダーンディ海岸まで
ゆっくり 歩く
僕の足音