【ほめことば】

「きっといいお嫁さんになるね」
そんな風に言ってもらうことが多い。

確かに私は料理が上手だし家事もてきぱきこなす気が利くしっかり者だ(或いはそう認識されていることが多い)。
でもそんなことは、良妻賢母が服着て歩いているような母のお腹に私が宿った時から決まっていたことで、別に大したことではない。

それよりも私にとっての一番のほめことばは
「あなたの文章が好き」とか「言葉遣いが好き」とかだ。
理由のないその「好き」が、無条件に私の内的世界を肯定してくれているような気がして、この上なく嬉しくなる。

私が懐く人間は須らく読書家だ。
本を読むということは、その著者の世界観や価値観に触れることはもちろん、その「言葉」に触れることである。
自分ではない他者の「言葉」の有限性と無限性に触れることで、読み手のなかに「言葉」がふえる。
そして今までとは違った「言葉」で自身の内的世界を表現することができるようになる。
新しい「言葉」の獲得は単なる表現の豊かさだけでなく、内的世界の充実にも働きかける。
だから私は文章が好きだし、文章が好きな人が好きだ。
そして、私が自分の内的世界を全力で旅して書き起こした文章を「好きだ」と言ってもらえることが何よりも嬉しいのだ。

ところで、「言葉遣い」という言葉には「使」ではなく「遣」が用いられる。
前者が即物的な「消費」を連想させるのに対して、
後者はなんだか思いやりとかそういったもののやり取りも含まれている感じがして好ましい。
言葉は相手への贈り物、そんな意味が込められているのだと、そうだったらいいなと思っている。