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気になった歌をひとつ
ゆっくりと同じ言葉を繰り返すかつて私を叱った人に/蛇口ひろこ
さらさらサラダの短歌コーナーにぴろこさんが応募していた短歌。
(テーマは「耳」)
いい歌だよなと思ったので、書く。
テーマが「耳」でこう来るか。
ということは、「聞く・聴く」または「聞こえる・聴こえる」というところに焦点が当たっているのだろう。
主体はしっかりとはっきりと覚えている。
「かつて」叱られたことを。その、言葉を。
それからどれ程の期間があったのかはわからないけど、「かつて」が遠い昔を示しているように思う。
その時叱られた「事」に対して放たれた言葉を、今度は主体がその人に対して発しているのだ。
叱られるべき事であったはずなのに、それと同じことを、その人がしてしまっている。
「ゆっくりと」にその人が年老いたことを感じ取れる。
そして、その「ゆっくりと」に、何よ、以前あんた私にこんな風に言ったじゃない、おんなじことしてるんじゃない、みたいな悪意は感じられない。
その人が聞き取りやすいように、聞き取れるように「ゆっくりと」なのだと思う。
もしかしたら、少しくらいは「何よ」と思ったかもしれないが、それをしっかり抑え込めるくらいに、主体は大人になっている。
優しい歌だなと思う。
本人はそんなじゃないと言っていたけど、そんなだと思う。
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私、ぴろこさんは短歌もぜったい向いていると思う、少なくとも私よりは向いていると思うんだけど、そうなってくると【クジラと蛇口】の私の仕事がなくなるので、もどかしいところ。
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