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【同人ネタバレ感想】織日ちひろ さん

多種多様なお世話になっております、織日先生。

盛りだくさんすぎやしませんか

僕の次回の新作小説『余命の方程式』でも表紙イラストをご担当してくださっている織日先生。
キャラクターのタッチが、作品の雰囲気に合わせて変幻自在になるのが本当に印象的です。同人誌に使用する用紙にもこだわりは現れていて、蓮の本は特に、キャンパスのような質感になっていて、芸術性の高い織日先生の作風に拍車をかけています。

そんな織日先生による記念すべき初の蓮の空本『欲動パラドックス』。

こんなに美麗なエロ本があっていいのか……

最近蓮の空を履修し始めたので、まだ蓮の空の薄い本が少ない現状に憂いていたのですが……。
まさか織日先生が描いてくださるとは思っておらず、狂喜乱舞したのを覚えています。

まず導入が非常にお上手ですよね。
“何か”を見てしまったさやかちゃん。その“何か”が何であるかは伏せられたままだが、『欲動』の説明文によってどのような類のものを見てしまったのかだけは予感できる。

そんなドキドキを抱えたまま序盤が進行していくことで、二人の抱えたドキドキとリンクし、真相に辿り着く頃には読者の心情がより登場人物と近くなっている。

そして普段「フラワー!」なんて天真爛漫な花帆ちゃんだからこそ、こんなにもしおらしく恥じらう姿が新鮮で、かつ欲動をそそられます。
恐るおそる静かに肌に触れるさやかちゃん。それでも花帆ちゃんの言葉がトリガーとなって、交わりは段々と過激なものになっていく。

しっとりとしながらも、確かなエロスと濃密さ、そして音を感じられる織日先生ならではの作風で磨き上げられた本作。素敵でした。


毎度お馴染み『芸術品』です

『青く色褪せろ』

もうタイトルがおしゃれですよね。文字書きとして悔しくなるくらいです。
色褪せるといえば、灰色になるか茶色になるか、そんなイメージがありますが、本作では『青』を色褪せた先と捉えています。
それがどういう意味かは、読めばわかるというやつです。

えっちな本が、ただえっちなだけで終わらないのが織日先生の作品の素敵なところだと思っています。
毎回テーマにした脚本やアイテム、言葉があって、それを軸に、エロも含めた二人の関係性が語られていく。

えっちな本ではありますが、あくまでそれは物語を描く上で必要不可欠なもの、という立ち位置であり、主題は他のところにあるように感じさせるのです。

さて、イベントの度に楽しみしている織日先生のゆうしずシリーズ。
今作は過去と現在が交互に描かれる構成になっていますが、サラサラとスムーズに読んでしまうと、一瞬「ん?」となってしまうかもしれません。

過去の回想に入る、また現在に話が戻る、その境目があまり濃くは描かれていないんですよね。夕方の空のグラデーションのように、気づけば過去の話になっている、そんなイメージです。

どうしてこんな風にしているのか。なぜ黒いコマを挟むとか、もっとわかりやすい『回想ですよ』とわかる表現にしなかったのか。
織日先生ほどの方ですから、必ず狙いがあります。

僕なりの推理になってしまいますが、これは二人の『変化の薄さ』を表しているのかと思いました。

そもそも、青くなった、と振り返ることに違和感があるんですよね。
一般的に青いといえば、青二才とかケツの青いとか言うように、未熟という意味合いが含まれています。
つまり「今は青くなった」というセリフは言葉通りだと「未熟になった」ということであり、一般的に人は成長するものですから、表現としておかしくなります。

でもきっと、しずくちゃんはそのまま、自虐的な意味で「青くなった」と言ったのかなと。
前のように、欲望のまま、そして侑さんの望むがままに交われない。
どこか自制心だとか、大人としての在り方みたいなものに囚われて、自ら行動に制限をかけてしまう。

それは成長でもあり、劣化でもある。

だけど、心の奥底に秘めた想いはそこまで変わっていない。
最後に「家で着る分にはアリ」と言っているところからも、それはわかります。

変化しなくちゃいけないと思いつつも、変われない部分がある。
そんな青くなりきれない変化の薄さを表現したのが、あの曖昧な境界線、つまりは過去回想との境目のわかりにくさに繋がっているのではないかと。

全然違うかもしれません。

僕は青くなれるでしょうか。
青くなりたいな。なれればいいな。

こうやって色々考えられる同人誌って意外と少ないですから、本当にありがたいです。物語として面白い、そこから解釈次第で無限に楽しめる。
最高の作品です。

真面目な考察はここまでだ!

考察文で頭が疲れたみんな、安心するんだ!
空っぽになった脳みそにありったけの馬鹿馬鹿しいエロを流し込んでやる!

読み終えてから「読む順番これでよかったのか……?」となっている僕です。

ほぼマイページで「織日先生こういうのも描けるんだ……」と「織日先生の“癖”が滲み出てるな……」という相反する想いが交差する、それほどカオスな一冊でした。

ちなみに僕、えっちな本を読むときは歩夢ちゃん推しになります。
それくらいえっちな歩夢ちゃんが大好きなんですよね。

織日先生の、たしかな肉感を感じる筆のタッチで描かれる歩夢ちゃん、めちゃくちゃにえっちでした。
そして読み終えて初めて裏表紙を見たのですが、なるほど、細部までのこだわりはここまで至っていたのか……。映像版はどこで手に入りますか?

小ネタとカオスさに満ち溢れながらもしっかりえっちな作品、ありがとうございました。

まとめ

今回は織日先生の表現の幅の広さに圧倒されました。

告知ペーパーでとんでもない発表もありましたから、今から楽しみで仕方ありません。

これからもよろしくお願いします!

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