見出し画像

『思い出のマーニー』

魔法使いみたいな言葉遣いをする人がいるもので。その人といると、心地よい宇宙旅行をしている気分になるの。ふわりと漂って、呼吸も忘れる。それでも、生きていける。星々の瞬きは、二人を歓迎しているよう。

それはきっと、運命に導かれている。だから何一つ無理はしないで、リンゴが木から落ちたり風船が空へ舞い上がったりするのと同じく、ごく自然に幸せが降り注いでくる。怖いくらいの幸せだ。

『思い出のマーニー』に出てくる二人の少女。杏奈とマーニー。なんだかああいう風な。

二人は愛し合っているに違いない。けれど、あの関係性はどんな既成概念にもハマれない。

だから抱き合っても泣きじゃくっても立ち入り禁止に侵入しても好きと叫んでも、それは恋愛になり得なかった。彼氏ができようが結婚しようが二人の仲は変わらないんだ。俗っぽさや恋愛至上主義に支配されているのではなく。

もっと透き通っている。どこまでも、手の届かない神聖さ。

好きだけど、好きだから、離れなければならない。そんな瞬間があって、思い出になって、一生揺るがない宝となる。

#エッセイ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?