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[資料翻訳]家事使用人のマネジメント 14 第14章. バトラーの仕事

バトラーの責任範囲

バトラーの職務は古くからあり、大規模なものから小規模なものまで、すべての家政においてその部門の長であり、担当する財産の責任を負い、部下であるフットマン(またはフットマンたち)が適切に職務を遂行するための責任を負っています。

バトラーは、まずアンダー・フットマンとして経歴を始め、次にヘッド・フットマンまたはアンダー・バトラーとして、家事労働の経験を重ねていったとされています。

既婚者のバトラーについて

既婚者をバトラーにすることに反対する主人や女主人もいます。既婚者のバトラーは自宅で過ごす時間が長くなり、最も必要なときに主人の家から離れてしまう可能性があると雇用主たちは考えます。

さらに、家族の世話や出費によって、未婚者が当然できるような身なりやスマートな見た目の使用人にならないことを理由に、既婚者をバトラーにすることに反対するのです。

また、妻や家族を養うことで、大きな誘惑にさらされることも懸念されます。誘惑に対抗する力が弱い場合、そうした誘惑に使用人がさらされてはいけないと考える主人もいます。極度の貧困は、父親や夫に不誠実な行為をさせ、独身男性なら犯す気にならないような信頼に背くかもしれないのです。

例えば、執事のバトラーが妻や子供の病気やその他の理由で非常に困窮している場合、屋敷の銀食器を管理しているため、一般に使用されていない部分や物品を、それが必要とされる前に質屋で換金する誘惑に駆られるかもしれません。これは決して想像上の誘惑ではなく、警察の報告書が証言しているように、よくあることです。

また、バトラーが担当するワインは、妻が病気で、体力を回復させるワインをとても必要としている既婚男性にとって、誘惑の対象となります。このような状況下では、ワインのハーフボトルやホールボトルがバトラーの家に入る可能性は少なくありません。

ワインセラーに豊富にワインをストックしている主人にとって1本や2本のワインは何の違いもありません。バトラーは(ワインが)自分の妻の健康や体力を回復する上で大きな違いがある、というまやかしの理由で、この信頼を損ねる過ちを自己正当化します。

これは人間の本性の弱い部分で、もちろん、結婚しているバトラーの中にも信頼に値する人はいます。しかし、主人や女主人の多くは、前述の理由からバトラーが既婚者であることを認めません。一方で、未婚者よりも既婚者の方が安定すると考える雇用主もいます。独身女性や未亡人は、バトラーが既婚者であることを非常に重視し、彼の誠実さを十分に保証するものとして、その性格を信頼しているのです。

もしバトラーが、実際は既婚者であるにもかかわらず、未婚者であるかのように装った場合、自分のことを偽っていたとして、予告なしに解雇される可能性があります。

バトラーの雇用に際しての注意事項

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