見出し画像

[同人誌]ある英国メイドの職場遍歴

本テキストについて

本書は、2016年8月に作成した同人誌『ある英国メイドの職場遍歴』をnote用に公開するものです。まえがき部分が試し読みでき、内容は有料マガジンに登録した場合に読むことができます。以下のリンクは内容紹介です。


ここから、以下、本文です。

まえがき

 2016年の夏コミ用の新刊冊子です。久しぶりに英国の方のメイドです。
 英国の家事使用人研究を専門としながらも、ここ5年ぐらいは主に日本のメイドブーム研究をしておりました。今年に入ってようやくそちらの研究の目処もつき始めたので、英国に原点回帰する本を作ろうと作ったのがこの本です。

 本書は、自伝や手記を残した家事使用人たちが「職場で一緒に働いた、上司や同僚の家事使用人たち」をリスト化しようとの試みから始まりました。個性豊かな語り手たちは、職場で様々な家事使用人たちと出会い、その名前や特徴を記載しました。記録には、必ずしも屋敷で働く全員が記載されているわけではないですが、使用人の目で見て、職場の規模がわかったら面白いかも、と考えたのです。

 そこで最初に選んだのがJean Rennieです。彼女は、自伝『Below Stairs』(日本では、『英国メイド マーガレットの回想』として刊行)を記して一躍ベストセラー作家となった元コックのマーガレット・パウエルと同時代人です。元コックという経歴も同じで、Jeanは自伝『Every Other Sunday』(St Martins Pr, 1981)を記しました。

 Jean Rennieは頭が良く、高等教育への進学を目指していたものの、家庭の経済的事情で家事使用人として働くことになりました。彼女の職場遍歴は多様でした。

 本当はJean以外の使用人の職場遍歴もあわせてリスト化する予定でしたが、Jeanの転職回数が多すぎたために、別の機会にまとめます。

【職場1.スコットランド:スカラリーメイド】

 最初の職場はスコットランドのアーガイル州のBallymoreで、海沿いの丘の上に立つ美しい城壁や塔を持つ貴族(夫妻と2人の娘、息子、ハウスキーパーと数名のゲストが時々来る)お城でした。

■1. Jessie:セカンドハウスメイド
 Jeanと同じ部屋に寝泊まりする、最初に会ったメイドの女性です。非常にスタイルが良く、コルセットを着けていませんでした。容姿端麗で、Jeanは彼女のようになりたい羨望の眼差しを向けました。お茶を用意する役目を、Jeanに引き継ぎました。

■2. Margaret:ハウスメイド
 Jeanに最初にハウスメイドとしての仕事(部屋の掃除や暖炉周り、カーテンの扱い、窓の開け閉め)を教えました。あわせて、Jeanを連れて入った令嬢の部屋では彼女が切るべき衣装や下着、靴を取り出して、並べました。Jeanはなぜ令嬢が自分で服を選ばないのかなど疑問に持ち、質問をしまくる。衣装に触れられる役割を持つ点で、上級使用人の侍女に近しい、ファーストハウスメイドと考えられます。

■3. Maggie:スカラリーメイド
 屋敷で働くスカラリーメイド(流し場女中)。スカラリーでじゃがいもの皮をむいているところがJeanとの初遭遇。家事使用人たちの食事後、JeanはMaggieの食器片付けを手伝おうとするも、手伝ってはダメと言われました。

■4. Ella:キッチンメイド
 あまりエピソードがない。ガーデナー(庭師)の寮で、仕事を終えた家事使用人たちがダンスを行う時には同行しました。

ここから先は

13,756字

※有料マガジンから移管します。 ■どんなメンバーシップか 英国メイド(と執事と屋敷)を研究したいの…

研究会会員

¥500 / 月

メイドスキー

¥5,000 / 月

いただいたサポートは、英国メイド研究や、そのイメージを広げる創作の支援情報の発信、同一領域の方への依頼などに使っていきます。