工高生の作品④-地域のお宝さがし-110
■工高生の作品-今宮工高Ⅱ-■
新年度の2年・3年生の設計課題には、コンペの課題を取り上げました。とまどい、苦労しながら、生徒たちは多様な提案をしてくれました。
■2年生■
●併用住宅●
2年生の当初は、授業で鉄筋コンクリート構造を習っていないし、図面も描いていませんので、構造的な制約は気にせず計画を進め、平面や外観の形態がある程度できてきた段階で、壁厚や柱の配置、1室の規模などをアドバイスし、再考を繰り返します。生徒は、設計を進めながら、並行して、図面の枚数に応じた図面のレイアウトやタイトルのレタリングなど考えますます(図1~3)。
図1は、レコード・CDショップとカフェ(喫茶店)の併用住宅です。店舗と住宅の外観を一体化させ、階段室の外壁を曲面にして外観に変化をつけています。断面図をみると、吹き抜けを設けて、1階と2階空間の融合をはかり、中庭の眺望を考慮するなど、各室の配置や空間の構成、外観のデザインなど、細部にわたり研究をしています。
南立面の大きな窓が壁式構造では「どうかな」、と危惧しましたが、結局、「構造屋さんに何とか計算してもうおう」という逃げを打って、まとめました。2枚目の図面には、外観パースのほかに部分パースも描かれ、自身の設計意図を見る者に伝える努力が窺われます(図2)。
図3は、男性衣料専門店との併用住宅です。新感覚の男性衣料と建築の一体化を図るために、ガラスを多用して光を多く取り入れ、床には段差を設けて、変化のある空間を構成していることは、平面図に記された複雑な切断位置からも窺えます。
住宅と店舗は中庭で分離され、最低限の通路でつながっています。図1の中庭は、店舗側からの眺望も意識されていますが、図3では住宅専用とし、浴室からの眺望を確保しています。また図面には、人物や自動車・自転車なども描かれ、賑やかで楽しい仕上がりになっています。
●図書館●
次の課題では、規模が大きく、用途も複雑になりますので、配置計画で全体をとらえ、平面計画では、各種の動線計画を意識しながら室の配置や構造計画(柱や壁の位置)を検討するので、時間がかかります。
図4は、図面やタイトルに陰影を施し、図書館全面の柱廊や内部ホールの柱を円柱とするなど、構造計画とデザインに工夫が窺えます。
図5は、設計主旨には、造園を洋風と和風に分けて計画したと工夫点を掲げていますが、パースにそれが表現されていないのが残念です。外観は、表面に施された目地から、コンクリート打ち放しと思われます。壁面に陰影を施し、窓ガラスの表現にも工夫がみられます。
■3年生■
2年生でコンペに入選した生徒は、3年生でも頑張ります。コンペの課題も難しくなりましたが、設計主旨で、室関連の機能図などを示して、自身の主旨を明確にし、図面表現にも工夫がみえます。様々な要素が描き込まれ、見ていて楽しい図面に仕上がっています(図6~7)。
●「地域住民のための体育館」(日大主催)●
●卒業設計●
上記の2人が、共同で卒業設計に取り組みました(図8~9)。
課題は、公園の整備と再開発を目指し、体育館・音楽ホール・ユースホステルを設計したもので、自主的に取り組み進めました。図面は一部ですが、各施設の平面・立面・断面図・パース、それに海岸線に立地するので、海側からの全体立面図を描いています。10数枚の図面を期限までに完成し、卒業設計コンクールにも入選しました。
●その他●
平常課題や卒業設計の作品を紹介します(図10~12)。
コンペへの参加は、入賞が目標ではありませんが、参加しなければ入賞もありません。コンペに参加することで、生徒の建築に対する考えや図面の表現力が上がったと思っています。
次回は、他の課題作品や他人クラスの作品を紹介します。
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