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ほんとうに恐ろしいものは(2)

この話は、『Kカフェで会いましょう』の続きです。さてさて、Kカフェに『中野ブロードウェイ怪談』を聴きに来たレイカちゃんでしたが…

この物語はフィクションだと思います

(わたし、怖い話苦手なんだった!!)

そう、わたしは一人でホラー映画や怖い話につきあえない怖がりなのである。

(大丈夫かなぁ……)

胸がドキドキする。
カフェにいるお客様は8人。これだけたくさんいるなら、ちょっとぐらい話が怖くても大丈夫かなぁ。

渡辺さんが話を始めた……

「配信大丈夫かな~?声聞こえてますか?あ、はい、ありがとうございます!では、『中野ブロードウェイ怪談』そろそろ始めたいと思いますぅ~」

ライトなノリで話し始めてくれるのが救いなんだけど、もう、ちょっと怖い……

「これは、ここがカフェになる前に起きた、本当の話で、関係者から聴いた話を今日は話したいと思いますぅ…」

これは本当の話……怪談の常套句。渡辺さんは淡々と話を続けていく。

「僕が大昔に出版して、いまも重版されている本で【中野ブロードウェイ怪談】っていうのがあるんですけども、その中のエピソード5番【壁から謎の液体が】に通じる話なんですが……みなさん、読んだことありますかぁ?知らない人のためにさわりだけ紹介しますね」

うー。一応読んだことはある…あのちょっと気持ち悪いエピソードだ。わたしは眉間にしわを寄せるイメージで話を聴いていた(顔がないのであくまでイメージですよ)。

「このカフェって、もとは医院だったんですよ。差し押さえ物件で、格安で売っていたんです。現状渡しの物件だったので、中身は診察室とかあって、道具もそのまま。それじゃ使えないので、改装することにしたんですけど……改装のために、壁をはがしたら、不気味な配線・配管が出てきた。敷設時の図面などが見当たらなかったため、慎重に確かめながら壁中の不審なパイプを切ったら謎の、粘度の高い赤黒い液体が噴きだして、僕、その謎の液体を浴びちゃった……という経験をしたんです……」

お客さんはみんな静かに耳を傾けている。

「まぁ、そのよくわからない液体を浴びてもね、いま健康なので……あの粘液には多分健康に被害を与える成分はないんだと思ってはいますが」

渡辺さんがすこし微笑んで、一瞬和やかな雰囲気になった。

「今回の怪談は、僕がここを手に入れるずっと前の話で、当時その医院に働いていたという、看護婦さんの……あ、その人はもうとっくにお亡くなりになられてますが、その看護婦さんのやしゃごさんからわざわざご連絡いただいて…取材した話です」

誰かがゴクッと唾を飲んだ音が聞こえた。
わたしもいつ怖い展開になってもいいように構える。叫ばないように、音声システムをミュートモードにしておこう….…

「とある日、突然メールをいただきまして、そのやしゃごさん、お住まいの地域の図書館デジタルデータベースで、たまたま僕の本に興味を持って読んでみたんですって。でね、中野ブロードウェイってどっかで聞いたことがあるなぁ?と思ったら、よく親族の集まりなどで話に出てくる、ひいばあちゃんが勤めていた場所じゃないか、って気がついたそうなんです」

図書館のデジタルデータベースに、【中野ブロードウェイ怪談】が入っているんだ…と、わたしは変なところに感心してしまった。話は続く。

「その方、看護婦として医院に30年以上勤続されていて、不思議な患者さんばっかりよくくるところだった、とお子さんやお孫さんたちにもよく、昔話のように聞かせていたそうなんですが、あまりにも現実離れした話が多かったらしくて、みんな話半分で受け止めていたと」

現実離れした話ってどんな話?
みんなの疑問に応えるように、渡辺さんは話を続けた。

「最初は、工場の裁断機に腕を切断されてしまい、その切断された腕を握り締めてくっつけて欲しいとニコニコしながら医院を訪れた患者の話とか、夫婦喧嘩で出刃包丁を突き付けられてお腹から出て来ちゃいけないものが出ていた話とか、そういうグロテスクな話を子供たちや孫たちに聞かせていたそうなんです…」

趣味の悪い話を軽やかに話す渡辺さん、次の瞬間声のトーンがやや低くなる。

「いつからかグロテスクな話のほかに、奇妙な体験談を話すようになり…腹痛を訴えて医院を訪れた男性のお腹の膨らみから見たことのない奇妙な動物が突き破って出てきたとか、検査のために採血をしてみたら注射器に入ったのは、赤い血ではなく、青い色をした液体であったとか、まるでホラー映画か、SF映画さながらの体験談を話すようになったので、皆話半分に聴くようになっていった」

そのひと、話を盛ってるわけじゃなくて正気でいっていたのかなぁ。その話。真実なんだろうか。まぁ、中野ブロードウェイは得体の知れない人もたくさん来そうな場所ではあるけれど…

「そういった、眉唾物の話にひとりだけ食いついた子がいたんですね。やしゃごさんのおじいさんに当たる人ですが、中野ブロードウェイとその医院の話に興味を持って、その昔話の真実に迫ってみようと思ったそうです」

おっ!探偵登場。キタ!

「その方、中野ブロードウェイの管理事務所のOBに話を聞くのはもちろん、中野ブロードウェイの周りの住宅街で、一番古くから住んでそうな人に当たれるだけ当たってみた。足で稼いだんですね、情報を。そうすると、おもしろいことがおきました。みなさん口を揃えたようにその医院のある噂話を教えてくれたそうなんですよ」

医院の噂話……もうだめ、怖い…

「どんな内容かというと… 医院では何やら、条件を満たすと、怪しげな待遇をしてもらうことができた…という内容で…」

〈たぶん、まだ続く〉


作者覚書

2024年8月17日 18:00 執筆再開
18:52 1150文字くらいまで進む
23:55   2300文字くらいまで進む

風呂敷広げすぎではないのか?!
たぶん一気に畳みます(笑)





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