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映画『イエスタデイ』を観て

とても良かった。

全世界で停電が起きて、ビートルズがない(誰も知らない)世界に変わってしまう。売れないミュージシャンの主人公だけは(後で他にもいることが分かるのだけど)ビートルズの記憶があって、名曲を次々に自分の名前で出していき・・・という話。

アイデアとしてはまぁよくありそうな話なんだけど、いわゆるパクリで売れていくという嫌らしさをうまく消していて、全編さわやかなラブコメディに仕上がっている。

パクる主人公も、そして許す2人(記憶が残っている2人)も、ビートルズをリスペクトして心から愛していて、パクって成功する事が目的ではなく、ビートルズのないつまらない世界を、ビートルズのある素晴らしい変えたいという純粋な想いにあふれている。

そして主人公とヒロインは、思わぬ成功で距離が離れてしまうが、本当に大切なものは何かということを考えて、また結ばれる。テーマは、幸せは物質的な成功ではなく身近なところにあるものだというような感じなんだろうな。

主人公のヒメーシュ・パテル、インド系で描かれていたけどアフリカ系のイギリス人でした。知らなかったけどテネットにも少し出てたみたい。エド・シーランが本人役で出ているんだけど、全然違和感無い。演技できるんだね。ちなみに最初はクリス・マーティンにオファー出したらしいけど断られたらしく、後述の「Yesterday」を弾き語るシーンで、「偉大なビートルズをコールド・プレイごときと一緒にするな」というシーンがあるのは、それを知るとさらに笑える。

そしてヒロインはリリー・ジェームズ。これがめっちゃ良い!もともと好きな俳優で、ベイビー・ドライバーでは単に綺麗でモテそうな若い女性という感じだったけど、本作ではそれなりの歳になって恋(と近い将来の結婚)に悩む女性をうまく演じている。ベイビー・ドライバーからほんの数年だけど、少し太った?感もかえって今後の役の幅を広げていると思う。

好きなシーンはいくつかあって、ひとつは主人公ジャックが退院したお祝いに仲間から美しいギターをもらって、「何か弾いてよ」「なら良い楽器にふさわしい曲を」と言って「Yesterday」を弾き歌う。突然すばらしい曲が出てきたので皆あっけに取られるとともに絶賛するというシーン。

この前後のリリー・ジェームズの表情、演技が素晴らしい。楽しさ、驚き、困惑、称賛、不安みたいな感情を、細やかなしぐさや表情で表現している。隠してあるギターを取りに行くときの軽快さや、途中で弾くのをやめようとするジャックに「もっと弾いてよ」と促すところの真剣な表情、驚きや嬉しさを友人女性とボディタッチで表すしぐさ、とても良く伝わってくる。

あと、ジャックが家族やその友人の前で「Let it be」を弾くシーン。「Let it be」が初めて世に出る瞬間だが、家族たちはいつもの売れないミュージシャンのジャックだと思ってるから、ビールを用意しようとか携帯が鳴って長電話して何度も中断させてしまい、最後はジャックがキレてしまうシーン。

もうひとつ、エド・シーランのモスクワ公演の前座を務めることになり、「(Back in the U.S.S.R.」を披露してロシアの若者がノリノリに(特にウクライナの女性がセクシーだみたいな歌詞のところ)なった後、エド・シーランと即興で1曲作って勝負するシーン。「The Long And Winding Road」をピアノで弾き歌ったジャックに、エドが自ら「君はモーツァルト、俺はサリエリ」と負けを認めるシーン。これも良かった。

あと全般的に小ネタも多く、ビートルズファンはもちろん少し知ってるぐらいでも、すごい楽しめる映画だと思う。ビートルズってホント良い曲ばかりだな、と改めて思う。

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