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【2月編】漫画家9℃の月推しマンガ2021

こんにちは、9℃です。

こちら、
マンガ好きの漫画家が、先月発売した中からおすすめタイトルを紹介する
という主旨の記事になります。

ということで、記念すべき第一回!
2月分からという若干中途半端なスタートになってしまいましたが、定期マガジンとして頑張っていけたらと思います。

忙しい方のために、まずは今回推したい作品タイトルを一気にどうぞ。
2月発売新刊の中から、6作品選出させていただきました。こちらです!

ふろラン(1)
友達として大好き(2)
お部屋は見ての汚楽しみ(1)
ピーチクアワビ(1)
渡り鳥とカタツムリ(2)
ほっかほか!なにわリーマン

もうこのタイトルだけ見てフーン買お!としてくださったらとても良いのですが…
丁寧に紹介もさせてください。

以下、作品タイトル(巻数)・著者・レーベル(出版社)・あらすじ・セールスポイント、という感じで紹介していきます。
電子書籍ストアBookLive!のリンクを貼っていますが、単に「書影がすぐ見れる方がよさそう」「登録なしでブラウザ試し読みができる」「私が普段使いしている」という理由からなので、回し者とかアフィリエイトとかではありません。お好きなところでお求めください。

それでは、紹介させていただきます。


ふろラン(1)』 著・石田裕揮
…ハルタコミックス(KADOKAWA)

街中を、公園を、旅先を走る女子大生ふたり。
汗だくになり、足もへろへろの少女たちを待っているのは、格別な"入浴のひととき"だった。

銭湯・温泉×ランニング×美少女とよくばりセットなこの作品。
繊細な筆致で描かれるこのマンガは、街並みから湯気から吐息から髪の毛一本に至るまでとても魅力的で、リアルな温度感がひしひしとこちらに伝わってきます。
特別で専門的な知識を得られるタイプの趣味題材系マンガではなく、内容はいたってシンプルかつストイックではあるのですが、その分先述した画面の美しさと主人公ふたりの人間的な愛らしさが際立ち、光っています。


友達として大好き(2)』 著・ゆうち巳くみ
…アフタヌーン(講談社)

人間関係の足並みを揃えられない女子高生・サナコと、真面目で厳しくて優しい生徒会長・結糸。
片や大好きな結糸と「友達」になるために、片やサナコが人と関係を紡いでいくための成長を支えるべく、不器用ながらも慈しみあい奮闘していく青春ストーリー。

1巻当初から異彩を放っていたこちらの作品、2巻でさらに魅力の幅が広がってきました。
ふたりから始まったお話でしたが、生徒会選挙~体育祭~文化祭と盛りだくさんに起こるイベントの中でどんどん輪が広がっていきます。
誰しもが共感しうるような、人と繋がっていくことの難しさ・コミュニケーションの些細な齟齬を、包み隠さず鮮烈に描ききるピリ辛さを持ちながらもそれによって、丁寧で優しくもまっすぐ心に響くフレーズの威力をより一層引き立ているという、絶妙なバランス感が何よりの魅力。
一切のえぐみを読後に残さない、爽やかであたたかい物語です。


お部屋は見ての汚楽しみ(1)』 著・束ユムコ
…モーニング・ツー(講談社)

散らかった部屋―"汚部屋"をこよなく愛する男・更屋敷の仕事は整理収納コンサルタント。
今日もあらゆる汚部屋の主から依頼を受け、彼は言う。
「こんなに素敵な汚部屋…本当に片づけてしまっていいんでしょうか?」

ありそうでなかった、というかなさそうなのに生まれてきた、汚部屋マンガ
作画の緻密さに頭が上がりません…。
散らかった部屋をただ闇雲に搔きまわすのではなく、部屋から主人公が感じ取り、紐解かれていく、隠された真実や人生の軌跡にスッキリサッパリホッコリできる作品です。
お仕事解決モノは往々にしてドラマ化に向いており、ヒット作品も多いですが、こちらそういうジャンルの満足度が詰まったマンガです。人間の心理と生活との結びつきの解像度からくる魅力だなと。
…ただ、マンガだからこその緻密な線の美しさであり、ドラマ化してこれらの汚部屋を現実に再現…となったら、主人公のような嗜好の持ち主じゃないとちょっと視覚に刺激が強すぎるような気がします。笑


ピーチクアワビ(1)』 著・岩田ユキ
…アクションコミックス(双葉社)

駆け出し映画監督のキナコは、様々な障壁に阻まれ不完全燃焼の作品を発表し、進むべき道に迷う。
そんなとき彼女を見出したのは…AV制作会社の社長だった。
作品を作りたい、作るしかない気持ちだけでがむしゃらに突き進むキナコと、様々な人生の物語。

シンプルでありながら柔らかく、マイルドで親しみやすいタッチの画面でありながら、怒涛の迫力と展開の濃さのギャップに思わず「ヤバイ」とかからっぽの語彙しか使えなくなる衝撃作。
AV制作というなかなか強めの題材で、初っ端からかなりのギアの上げっぷりなのですが…
創作者の焦燥や嫉妬、憧れや高揚など、内面に沸き起こるあらゆる感情ひとつひとつの描写力が突き抜けており、どんどん引き込まれていきます。
どこかメルヘンを感じつつも地に足のついたリアルさを共存させた、今後の展開がとても楽しみな作品です。


渡り鳥とカタツムリ(2)』 著・高津マコト
…ニュースクランチ(ワニブックス)

愛犬と車旅を楽しむ年齢不詳の美少女お姉さん(?)・つぐみと、彼女に会って旅と恋の魅力に目覚めたわんこ系リーマン・雲平。
久しぶりの再会は、もちろん車旅で。
新たな仲間も加わり、風の向くまま気の向くまま、賑やかで鮮やかな非日常が人生を彩っていく。

車中泊を軸にしたアウトドア作品。車中でも"アウトドア"でいいのかちょっと詳しくないので分かりませんが…
つき抜けるような青空など、特に広々とした空間の美しさが魅力です。緻密でありながら洗練された黒さの少ない画面が、そのまま彼らの旅の眩しさ楽しさを感じさせてくれるよう。
優しくユーモアがあり、でもどこか奥深さを秘めているお姉さんと、スポンジのように新しい感動を吸い上げていく純粋でまっすぐな青年の微妙な距離感も愛おしいです。がんばれ雲平くん!
人間・自然・文化すべての観点から余すことなく吸い上げ描かれるきらめきを、ぜひ感じてください。


ほっかほか!なにわリーマン』 著・新藤たそ
…文春e-book(文藝春秋)

毎朝の憂鬱な出勤も、犬見て猫見て犬見たら元気いっぱい!
くだらないことで笑える友達と、一生くだらない遊びして楽しく生きていきたい。
大阪に暮らす青年たちの、ちょっとおバカなゆるゆる日常。

絵もゆるいし話もゆるい。全部ゆるい
でも生きていく中で、定期的に浴びるべきゆるさです。
私は女でして、「男性しかいない空間」という場に存在することは不可能で…そういうのはフィクションでしか味わえないわけなんですね。
だから本当のところ、「男友達とだけ集まったときのゆるくてくだらないやりとり」というものが、現実どういうものなのかはわからないのですが…
こんなんだったら最高だな。素直にそう思います。こんなんであってくれ。


というわけで、6作品紹介させていただきました。
興味惹かれるタイトルがありましたら、ぜひ読んでいただければと思います!

第一回から絞り切れなさがすごくて、これでもなんとか6作まで厳選しましたが…
なるべく色んな作品を紹介したい気持ちと気軽に読んでもらいたい気持ち、バランスは数を重ねて模索していきたいなと思います。

それでは、またお会いしましょう!

9℃

ありがとうございます!これからも頑張ります。