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【9月編】漫画家9℃の月推しマンガ5選2021

こんにちは、漫画家の9℃です。

こちらは
マンガ好きの漫画家が、先月発売新刊の中からおすすめタイトルを紹介する
という記事になります。

第8回です!

まずは今回推したい作品のタイトルを。
9月発売新刊の中から、今回は5作品選出させていただきました。こちらです!

ひらやすみ(1)
生き残った6人によると(1)
今日のさんぽんた(3)
ミワさんなりすます(1)
ひかるイン・ザ・ライト!(1)

ほのぼのゆるやかな日常モノから、これからの展開も楽しみなドキドキハラハラ劇まで。
ぜひお気に入りを見つけてもらいたいです。


以下、作品タイトル(巻数)・著者・レーベル(出版社)・あらすじ・セールスポイント、という感じで紹介していきます。
電子書籍ストアBookLive!のリンクを貼っていますが、「書影がすぐ見れる」「登録なしでブラウザ試し読みができる」「私が普段使いしている」という理由からです。

それでは紹介させていただきます!


ひらやすみ(1)』 著・真造圭伍
…ビッグコミックスピリッツ(小学館)

野心なくゆるりと生きる男・ヒロトと、漫画家を志し上京してきた(すでにちょっと心が折れ気味の)美大生・なっちゃん。
いとこ同士ふたりの、とある平屋での共同生活が始まった。
理想とは違う、きらきらもしていない、それでもやさしい毎日の話。

あたたかなタッチで描かれる家屋や街並みが心地よく、そしてストーリーも画の柔らかさを裏切りません。
10~20代の「変わっていく」周囲や自分への戸惑いにしっかりと現実感を持たせスポットライトを当てつつ、主人公の人間性から溢れる魅力によってじんわりと疲れや辛さを癒してくれる、心に栄養を戻してくれるような作品です。


生き残った6人によると(1)』 著・山本和音
…ハルタコミックス(KADOKAWA)

ゾンビに街を占拠される中、運よくショッピングモールに逃げ込んだ若者たちは、籠城し共同生活を始めた。生き残ったのは、男3人・女3人。
一癖も二癖も、それぞれに秘密や思惑もある彼らは―極限状態の中、何を想うか。

ゾンビサスペンスの中での人間関係に焦点を当てた作品。
それぞれのキャラクターが個性的で尖ったところが目立ちつつもどこか可愛気があり、不思議と地に足のついた「いそうな感じ」も兼ね備えた造形が見事です。
今のところ思想のドッジボール状態でありつつも全体としてはうまくやっている…という一触即発のバランス感も絶妙。ゾンビとの闘いと人間模様と、それぞれ呼応しながら緊迫感が高まっていきます。
決して重すぎない、けれど引き込まれる必見タイトルです。


今日のさんぽんた(3)』 著・田岡りき
…ゲッサン(小学館)

柴犬のポン太と、飼い主(の家の娘)のりえ子。
散歩も何もかもちょっと雑で、話しかけてくる内容にもなんだかツッコみたくなるようなことが多いりえ子に対して、ポン太はいつも思うところあり。
だけど散歩は、やっぱり悪くない。

ボケ相手には届くことのないツッコミを読者だけが楽しめる、一風変わったほのぼのギャグ。
しっかりした犬とアホな飼い主の安定感あるコントというのが主な楽しさではありますが、各話ごとに描かれる時系列が違う構成になっており、例えばポン太・8歳&りえ子・15歳の話とポン太・1歳&りえ子・8歳の時とではコントの雰囲気や彼らの関係もかなり変わってきます。
ゆるい日常の連続に癒されながら、成長やなつかしさ・寂しさも感じられる、味わい深いオススメ作です。


ミワさんなりすます(1)』 著・青木U平
…ビッグコミックオリジナル(小学館)

映画があれば生きていられる。"推し"がいれば生きていける。冴えない毎日をそんな気持ちで過ごす映画マニア・ミワに、千載一遇のチャンスが舞い込んできた。
それは、憧れの俳優のもとで家政婦として働ける環境。…ただし、別人のふりをして。
バレれば全てを失うかもしれない。だけど気持ちを抑えられない。ミワは、人生を賭けた「嘘」をつき始める。

静かで淡々とした語り口爽やかな作画でありながら、主人公から溢れ出すピュアな狂気と情動がしっかりと伝わってくるテンポ感コマ割りセンスが気持ちよくかみ合っています。
展開の表面を掬い取ると、端的に”ヤバイ人”の物語なのですが、どこか憎めない、応援したくなるような可愛さが魅力です。そしてそんな主人公の”推し”である俳優・八海さんの求心力もまた強力で、噛めば噛むほど味の出てくる大注目のカップル(カップルとは呼べない関係かもしれませんが…)です。
展開としてはギリギリのチキンレースでありながらも、不思議と安心感すら感じるような、共感と反感の紙一重を楽しめる新感覚オタク×芸能人モノのおもしろさを是非!


ひかるイン・ザ・ライト!(1)』 著・松田舞
…アクションコミックス(双葉社)

おじいちゃんの経営する銭湯の看板娘であるひかるは、歌うことが大好き。
ある時、敏腕プロデューサーによる「本物のアイドルを育てる」ことを謳ったオーディションが開催されることとなり、ひかるは幼馴染で人気アイドルである蘭に「一緒にアイドルを目指そう」と誘われる。
能力と魅力だけで道を拓く、厳しく華やかな世界へと踏み出していく少女たちの物語。

まっすぐ誠実に描かれるストーリー展開から薄さをまったく感じさせないのは、キャラの人間性と環境と感情が丁寧に編み込まれた構成から滲み出る「ごまかしのなさ」にしっかりと支えられているからだと感じます。
ゆるく和やかなギャグテイストから真剣でエモーショナルな見せ場へのスイッチが気持ちよく、飽きさせない・張りつめすぎないバランス感覚が絶妙です。
オーディションは序盤で終了してデビュー奮闘編へと切り替わっていくのか、オーディション部分を主軸としてまずは全メインキャラを魅せてくれるのか、どちらにしてもこれからの展開がとても楽しみです!


今回の紹介は以上です!

全体的に今回は「マイルドさとスパイシーさの配合の妙」みたいな選出が多めでした。
胃に優しいけどそれだけじゃないようなもの、いくらでも食べていられますね。マンガも同じだなと…。
もちろん胃もたれ必至の作品だって浴びたいし、毒も薬もマンガなら大歓迎。色んな作品が読み切れないほどあって、贅沢で幸せです。

それでは、またお会いしましょう。楽しいマンガ生活を!

9℃

ありがとうございます!これからも頑張ります。