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【4月編】漫画家9℃の月推しマンガ2021

こんにちは、9℃です。

こちらは
マンガ好きの漫画家が、先月発売した中からおすすめタイトルを紹介する
という主旨の記事になります。

のんびり更新ですが第3回!

忙しい方のために、まずは今回推したい作品タイトルを一気にどうぞ。
4月発売新刊の中から、今回は5作品選出させていただきました。こちらです!

から騒ぎ
陽気なしめりけ(1)
リスタート!~34歳ゲームディレクターのつよくてニューゲーム~(1)
恋愛マトリョシカガール やさぐれ女とダメ恋女
空飛ぶ馬

今回は単巻・第一巻多めです。名作をひといきに楽しめる&いち早く出会えるチャンスをぜひお見逃しなく!


以下、作品タイトル(巻数)・著者・レーベル(出版社)・あらすじ・セールスポイント、という感じで紹介していきます。
電子書籍ストアBookLive!のリンクを貼っていますが、「書影がすぐ見れる」「登録なしでブラウザ試し読みができる」「私が普段使いしている」という理由からです。

それでは紹介させていただきます!


から騒ぎ』 著・河原和音/ウィリアム・シェイクスピア
…別冊マーガレット(集英社)

戸部ありすの通う女子校は、年一度の男子校との合同文化祭を前に浮足立っている。男嫌いであり、特に犬猿の仲である辺嶺と顔を合わせる機会が増えることに、ありすはイライラ。
しかし仲間たちの策略による互いの想いの勘違いから、物語は大きく動き出し…!?
シェイクスピアの名作を現代風に大胆アレンジした青春ラブストーリー。

昨年『素敵な彼氏』の連載を終えた河原先生の最新作です。
不朽の名作を少女漫画にオマージュという企画。強引にも見えるような展開やキャラクターの”チョロさ”を、作者の得意とする明るく優しいラブコメディの風合いで違和感なく成立させています。
1冊がまるごとひとつの舞台のように華やかで賑やかで楽しい、元気になれる作品です。


陽気なしめりけ(1)』 著・緒木鈴人
…ゲッサン(小学館)

暗くてじめじめな人生を送る少年・根倉しめりけ。
好きな子の理想に近づきたくて陽気になろうとするも、なかなかうまくいかなくて…。
シュールでダークでグルーミー、だけどなんだか癖になるじわじわコメディ。

間違いなく傑作です。間違いなく傑作なんですが、「最近どういう漫画読んでる?これとかオススメだよ!」という感じに爽やかに薦めていいものかは迷う、そういう作品。
ほどよくレトロに洗練された絵柄と、静かでありながらもリズムの良い構成の唯一無二な作風は、一度読んだら忘れない強さがあります。
(ほぼ悪い方に)一癖も二癖もあるキャラクターたちの救いのなさに面白さが詰まっているので、ゲラゲラ笑うたびになんだか胸奥の罪悪感が疼くのですが…
暗いからこその明るさ、救いがないからこそもらえる元気というちぐはぐな魅力、ぜひ読んで体感してください。


リスタート!~34歳ゲームディレクターのつよくてニューゲーム~(1)』 著・坂木原レム
…モーニング・ツー(講談社)

1995年。ゲームソフト「ドラゴンレジェンド4」のディレクターである宮友は、マスターアップの直前、謎の力により2020年にタイムスリップしてしまった。
完成を見届けられなかったものの名作としてゲーム史に残っているドラレジェ4、技術の進歩と時代の遷移を経て大きく変わっているゲーム業界を前に困惑する宮友。
元の時代へ無事に戻るため、宮友は”この時代の”ゲーム開発に乗り出す!

昔→今タイプのタイムスリップものの醍醐味とも言える「技術発達への適応の困難さに立ち向かう」ことと「それを補う時代不朽の才・感性・努力」から生まれるカタルシスが特にこの作品では気持ちよく感じられます。
スマホを触ったことのない主人公がスマホゲームの開発に取り組むわけですが、ワンマンの才能見せつけ展開でもなく、あくまでチームとして奮闘する姿をまっすぐに捉えたドラマが熱いです。
主人公同様に読者には詳しく明かされていない、空白の25年間が少しずつ紐解かれていく今後の展開にも注目です。


恋愛マトリョシカガール やさぐれ女とダメ恋女』 著・山本白湯
…文春e-book(文藝春秋)

外見で判断されて、勝手に品定めされて、飽きたらほっとかれて、気分でまた求められて。
ひとつひとつの恋は違えど、みんなそれぞれ戦っている。
ダメでも美人でもかわいくなくても強くても弱くても、しあわせになりたい私たち。

生々しい、すぐ側にありそうなリアルを感じる恋物語を、やわらかくあたたかく描き出す山本白湯先生の書籍化最新作。
タイトルは「ガール」だしメインは女性たちなのですが、描かれる男性たちもひとりひとり丁寧に描かれており、あるときは男性にも感情移入しながら、揺れ動く感情と関係の波を「人間」というむき出しの存在として浴びられる気持ちよさがあります。
キャラクターのこれまで生きてきた輪郭がくっきりと見えてくるような、解像度の高い感情や生活の描写が魅力です。そのためか、いわゆる"地雷彼氏・彼女"として登場する人たちにもどこか愛着を感じます。

こちらの作品はnoteの先発WEBメディアであるcakesにて現在も連載中です。
美央編・理恵編以降もかなり読みごたえがあるので、ぜひ続きも書籍化していただきたいなと思います!(そのためにすごく売れてほしい)


空飛ぶ馬』 著・タナカミホ/北村薫
…トーチ(リイド社)

大学生の「私」と、噺家の円紫さん。彼らはひょんなことから出会い、些細な違和感から大きな不思議、見逃せなかった日常に潜む謎を見つけては紐解いていく。
誰も死なない、だけど必ずしも救いも用意されない。人が人として生きていく中で生まれた小さな綻びと愛憎に触れる、名作ミステリ小説のコミカライズ作品。

1989年に発表された小説「空飛ぶ馬」ですが、全く古びた印象を受けません。時代に揺られつつも大きく変わることのない人間の機微を描く物語と、涼し気でシンプルでありながら繊細に感情を表現されている作画と両方からくるものでしょう。
ミステリらしく、"分かっている人"の勿体ぶるような会話に焦らされながらページをめくっていくのがじれったくも心地よいのは、ひとつひとつの言葉のセンスと配置の巧みさの成せる技。
謎が解けることと事態が解決することが同義ではなく、すっきりとした単話完結構成でありながらも、語り部である「私」の成長として地続きに紡がれ魅せられていくことで、物語にさらなる深みを生み出しています。
「私」と円紫さんの物語、まだまだ続きを漫画で読めるといいなと思います。(そのためにすごく売れてほしい)


今回の紹介は以上です!
気になった作品がありましたら、ぜひお手に取ってみてください。

最後にちょっと世間話を…
次にくるマンガ大賞2021のエントリー期間がスタートしましたね!

マンガはとにかくたくさん出ているし、色々読んでても取りこぼしが尽きないもので…こうした機会をきっかけに、新たな作品と出会えるのが楽しみですね。

私も投票しようと思って色々絞り中なのですが…10作品、かなり厳しいです…!
エントリー作品が発表されたころに、エントリー内で特にオススメの作品の紹介とかを記事にできたらいいなと思います。


それでは、またお会いしましょう~!

9℃

ありがとうございます!これからも頑張ります。