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9月8日、大阪は雨。

クリープハイプとの思い出を語ってください。

この文字を見た時真っ先にあの日のライブを思い出した。

夏なのか秋なのかわからない9月に開催されたあのライブ。今まで参加したライブの中でも他とはちょっと違う特別な思い出。

これからあの時の記憶を文字に書き換えていこうと思う。



2022年9月7日 前夜

明日9月8日は待ちに待った「クリープハイプの日 2022」だ。胸の高鳴りが抑えられない7日の夜、私は明日の天気を確認するために天気予報アプリを開いた。家に引きこもってばかりの私に滅多に役割を与えられないこのアプリはホーム画面の隅の方で寂しく縮こまっていた。ライブ会場である大阪城音楽堂には屋根がない為、天気の善し悪しは重要だ。なのに久しぶり開いた天気予報アプリは、私の気持ちとは真逆にポップな色彩で曇のち雨のマークを示していた。

2022年9月8日 「クリープハイプの日」

グッズ先行販売の開始時間は14時30分
心配性な私は12時に会場に着き、既に長く伸びていた物販列の最後尾に並んだ。販売開始までは2時間半程ある。しかし暑い。とにかく暑い。雨など一滴も降っておらず、むしろ9月の燦々とした直射日光が私の頭上を照らしていた。このままこの天気が夜まで続けば良いのに…と心の底から願った。


17時を過ぎた頃だろうか、あんなに凛としていた太陽はもう何処にも見当たらず、すっかり空は灰色の雲で埋め尽くされていた。じきにぱらぱらと雨が降り始めた。開演時間の18時30分に近づく度に雨足はどんどん強くなっていく。先程まで和気あいあいとしていた大阪城公園には、一変してじめじめと湿っぽい空気が流れていた。

そんな中、隣に居た女の人が嬉しそうに言った。「雨の日のクリープハイプのライブはやばいで!!」

どうしてこんなに雨が降ってるのにこの人は嬉しそうなんだろう…?やばいってどういうことだろう…?

後にこの「やばい」の意味を重々知らしめられる事になる。


18時30分 開演

開演の数分前、相変わらず強い雨が降り注いでいる。
ビショビショに濡らされた椅子と前髪に不快感を感じながらも、心の内ではライブに対する期待に満ち溢れていた。「あの曲やって欲しいよな」「雨で中止にならんで良かったな〜」こんな会話があちこちから聞こえてくる。私は1人で参加していたため、この緊張感を誰かと共有できないのが悔しかった。

その時は突然やって来た。

会場内は暗転し3人のシルエット、そして1人のシルエットがステージに入ってくる。客席には沈黙と緊張感が流れた。空気を読まない雨の音がほんの少しだけ心地よく感じる。
そんな雨の音と気味が悪いぐらいマッチしている大正琴の音が聞こえてきた。そう、1曲「キケンナアソビ」の演奏が始まったのだ。透明だった雨には照明が照らされ、微に色彩がつく。つむじを刺すように地面と垂直に降り注いでくる雨とは対象に、尾崎さんの声、カオナシさんのベース、幸慈さんのギター、拓さんのドラムの音が地面と平行に真っ直ぐ届けられてくる。
あぁ、目に映るもの、耳に入ってくるもの全てが幻想的で美しい。

雨足は緩むことなくライブが続く。
途中、尾崎さんが「風邪ひかないでほしい。」とお客さんを心配する場面があった。今までライブに夢中になっていて気づかなかったが、雨がレインコートの中に侵入して私の体を濡らしている。9月の夜は濡れた体では少し肌寒く感じた。雨に濡れた私たちの体調に気を使いながらライブを進められる尾崎さんはやっぱり凄い。一番最後に披露した曲、「大丈夫」では「濡れてる顔も可愛いから」と雨の日でしか聞けないであろう特別な歌詞にアレンジして歌ってくれた。
クリープハイプはこの荒れ果てた天候までも用意していた演出ではないかと勘違いさせてくれる。いや、むしろ用意していた??あんなに不快で憎たらしくて仕方がなかった雨がこの瞬間は愛おしくて堪らない。あの女の人が言っていた「雨の日のクリープハイプはやばい」の意味がよくわかった。


この日、クリープハイプは大きなサプライズを用意してくれていた。尾崎さんの発表と共に視界の左側にあった看板の幕が外される。

「クリープハイプアリーナツアー 2023」

このnoteを書いている今、既にアリーナツアーは終了している。嬉しいことに大阪、幕張どちらも参加出来た。今でも発表された瞬間をよく覚えている。

突然の発表に感極まってしまった。目頭が熱いけど、涙を流しているかは顔をぐちゃぐちゃに濡らした雨のせいでわからない。雨でひんやりとしていた体もぽかぽか温かくなっていく。今すぐ「ありがとう、そしておめでとう!」と叫びたい。声を出せないもどかしさを感じながら奥歯をグッと噛み締め我慢した。


今もあの日のような雨が降ると、ステージから4人が届けてくれた音、そして客席の熱気を感じる事がある。
いつも突然降り出す雨と結びつけることが出来るこのライブは、私にとってとても大切な思い出だ。
雨を私の中で特別なものに変えてくれるのはきっとクリープハイプだけだろう。


そういえば、この日会場で話した関東から来た女の子に「関西弁の人、口調強くてずっと怒られてるみたいだった笑」と次の日にTwitterで呟かれていた。

うるせえ!!口調は強くともそこにはでっかい愛が込められてるんや!!!

9月8日、そんな関西弁が飛び交う愛の大都市、大阪にクリープハイプの音の雨が降り注がれた。


#だからそれはクリープハイプ


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