プレイヤーに楽しんでもらうためにGMとしてやってるサポート

 筆者はマイナーシステムのGMばかりしている。先日も新システムを買ったら人の集まりが良くない。
 その折に「どうやったら興味を持って、楽しんでもらえるだろう」「自分は今までやってきた工夫以外に何かないか」と、卓のサポートを見つめなおす時間ができた。

 今までほとんどをマスターとして過ごしてきた中で「こうしたほうが卓参加者が増えやすいし楽しんでもらいやすい」と思ってきたことほとんどをここに書き記している。
 本記事は自分の卓=マイナーシステムにどうやったら興味を持ってもらえるだろうかという筆者の工夫の粋を集めた
 そして概ね自分の卓はシステム未経験者、初心者へのマスタリングやサポートの参考にもなるかもしれない。

 先に述べておくが、そもそもTRPGシステムは優劣や勝敗を決める遊びではないし、システムが多様にあることは筆者個人としては望ましいことだと思う
 知らないシステムと世界観は胸躍るものだ。今でも新システムを見かけるだけで心が躍る。

 だがそれとは別にマイナーシステムは参加者にとって敷居が高いのも事実だろう。
 あのシステムはこんないいところが、こんな深い世界観がと思っても、それは既に知っている者だけの感想だ。手元にルールブックがない、経験したものがないものを、どうして自分の好きなシステムと同列に扱えようか。
 この記事が同じような苦悩を持つユーザーの慰めや参考になれば幸いだ。

 また、本題に入る前に先日買ったシステムが大変良かったのでそれだけ述べたい。冒頭で述べた購入させてもらったシステムである。
 あとこれとは別にマモノスクランブルの作者様製作ブラッドパスも買いました。マモスクが大変良かったのと、もとより気になっていたのもあり購入したが、こっちもめっちゃいい。

 日本製ヒロイックダークファンタジーのブレイド・オブ・アルカナの最新版だ。価格は8000円に消費税が入る。決して安くはないが、3冊分のデータが入っており中身は大満足。
 世界観や種族も細かく描かれており、過去買ってきたシステムの中でトップ3に入るくらい有意義な買い物だったと思っている。
 好みもあるだろうが、これに比肩するデータ量と満足度は、今まで買ったものだとD&Dの基本ルールブックセットくらいではなかろうか?
 価格の話はこれまでにして、公式のyoutube動画も興味深い。自分は動画見て改めて購入を決めました。
 システムはおおよそFEARといった感じ。といっても筆者はBBTとDX3rdくらいしかやったことはないが。

 世界観的にもハイファンタジーもので、PCたちはアルカナの欠片=聖痕をその身に宿した刻まれし者(エングレイブド)となり、聖痕を悪いことに使う殺戮者(マローダー)と戦うヒロイックな作品。
 過去・現在・未来のアルカナを身に宿して戦う、この一点がずっと好きで、買おう買おうとずっと思っていた。
 やっと手に入れられた今は、満ち足りた気分だ。

 同システムは世界観や舞台設定を担当されていた「司馬炳介」氏がおととしに逝去されたため、再展開や再始動が厳しいという話があがっていたようだ。
 だが、それでも本書は世に出た。
 関係者各位に敬意を表するとともに、素晴らしい世界観を織り上げてくださった司馬氏には感謝を。

 では、改めて本筋を話そう。


ユーザーの興味と参加者へのサポート

 ひとまずの自分の中の結論としてマイノリティなシステムを主催する際は「参加者をサポートしながら世界観で誘う、あるいは仲の良いPLに伝手できてもらう」感じかと思う。
 
 筆者の卓には基本人は集まらない、だから「ルルブなくていいから一回遊んでみませんか?」「今度こんなのやるんだけどきませんか?」と声をかけて回っている。
 やっていることはロビーイングと体験会の大安売りだ。

 そもそもプレイヤーの興味はシステム、世界観、一緒に遊ぶプレイヤー、シナリオに大別されるのではないだろうか
 全部サポートするようにしているが、筆者(と今回の記事)はシステムとシナリオへのサポートをできるだけ徹底している。

 システムは処理の方法やデータを、世界観はPCやPLたちの遊ぶ受け皿や物語の方向性を決める要素だ。ここまではルールブックによって決まる部分だ。
 
 人と遊ぶゲームである以上、一緒に遊ぶプレイヤーと気が合うかも大事だろうし、シナリオ(ひいては世界観)が好みであるか興味を引くかも大事な要素だ。人とお話の部分と言えよう。

 メジャーシステム、主にCoCは全ての要素がほとんど完璧なサポートを受けている、これはすごいことだ。
 動画や配信など触れる機会がとかく多いシステムな上に、キャラ作成のサイトも充実しているうえ有償無償問わずシナリオは多く良質。TRPGにありがちな「ルールブック買ったけど遊ぶ(生かす)機会がない」のを圧倒的母数とユーザー数と動画/配信数とシナリオ数でクリアしてる。そしてまたユーザーが増える。
 どんな正の循環?バケモンかな?
 そのうえ判定自体は非常にシンプル。最もネックなルルブ価格も上記サポートのおかげで購入まで敷居が低い。
 
 TRPGは勝敗や優劣を決めるゲームではないが、メジャーシステムと比較したときに、マイナーシステムは人の集めにくさ=プレイヤーの興味の薄さが如実に表れる
 だからこそ、卓ではサポートを充実させてメジャーシステムの卓との落差を補填するしかない、と筆者はそう思っているし、ずっとそうやって生きてきた。
 特にシステムやシナリオは殊更に丁寧なサポートをしている。

 以下は筆者が卓の募集で強調しているサポート内容だ。
 あくまで筆者の卓の話である。本記事をもとに卓の条件の変更などを強要することなどなきよう。

参加者へのサポートの具体例

 以下は筆者が行っている参加者へのサポートではある。が、重ねて申し上げるが筆者の卓は「ルールブック未所持、システム未経験者」を想定したものである。
 そのためサポートは多岐にわたり膨大だ。参考にするにしても、GMへの負担が非常に大きいかもしれない。

 なんだかんだと筆者はGMに慣れている。
 こういったサポートはいまでこそ当たり前のようにやっているが、昔はマスタリングすらおぼつかなかった。
 当時このサポートを平行しろと言われたら、かなり難しいだろう。

 参考になればうれしいが、「これをしないといけないのか」と足枷になることは避けたい
 参考になる部分は他山の石として頂き、無理ならサンプルのひとつとして聞き流してほしい。

  • ルールブックの所持、システム経験の有無を不問とする
     筆者がいた(いる)コミュニティにルールブック自体を持っているユーザーがいたことがほとんどない。今でこそいるが、ほぼ全員がCoCのみというのが現状だ。
     正直な話、プレイヤー全員とは言わずともひとりくらい所持者、経験者がいてくれたほうが助かる。 が、何度遊ぶか分からないうえにマイナーなものにお金を出してくれ、というのは無茶な話だ。
     そのため「遊んで楽しかったら買ってくれ」「ルールブックがあると自分で自由にキャラが作れるよ」と伝えるに留めている。

  • 無制限のキャラ作成のサポートとデータ提供
     筆者は持っているあらゆるルールブックとサプリ、ソースブックの提供を矜持としている。これはクローズドな環境ゆえできるものかもしれないが……。
     PCは花形であり、PLの分身でもある。多様なデータを使えたほうがPCのデータ的・設定的表現の幅は広がる。

     具体的には、対話しながら行いルールブックを持っているかのようにPC作成を行う、要望を受けながらおすすめのスキルをお勧めする、大まかな方向性を決めてもらいPCをこちらで作成する、などだ。
     データは戦闘やセッションでの活躍に明確につながるうえ、キャラを作るだけでも楽しいものだ。
     よほどデータが複雑になるような状況でなければ筆者は断ることはない。現時点で断ったことはない。

  • データの確認は簡単かつ簡潔にできるように
     豊富なデータを持ってもいても、それにPLが振り回されてしまいセッションが著しく停滞するのは問題だ。
     そのため気を付けているのは2点。

     プレイヤーの参照するスキルや魔法、ルールは一ヶ所でみられるようにする
     おおよそセッションする画面で管理ができるように管理している。
     セッションで用いるツールやサイトで管理しており、筆者はだいたいココフォリアやユドナリウムなどセッション画面で管理できるようになっている。

     参加者がPCユーザーのみだったらdiscordなどで一覧を作り、そこで見てもらうのも良いだろうが、必ずしもみんながPCを持っているわけではない。
     実際、筆者のセッションでは何度かプレイヤーがスマホで参加することがあった。そのためできるだけ1画面(セッション画面)で管理できるよう努めている。

     プレイヤーが使いにくいデータは簡略化・省略・上方修正を行う
     これは後述している部分にも関わるのだが、筆者はルールブック通りのルール・データ運用はしないことがほとんどだ。
     データ、特にPCのスキルは簡略化し、正確な運用よりも達成感や自分が物語や進行に関わったと実感してくれるを目標としている。
     筆者の卓はPLがシステムに慣れていないことがほとんどであり、ルール・データ通りの運用はPLの負担になることも多い。だったら、分身となるキャラクターのデータくらいは分かりやすいほうが良い。
     ボス戦で「よくわからないがボスになんかしたらしい」より「自分のキャラは敵にデバフを掛けられる、そのおかげで味方が攻撃を当たった!」と実感できるほうが楽しいじゃん?
     こと戦闘システムは少々大味になってもいいと割り切ってスキルの簡略化を行っている。

     例えば魔法。だいたいは遠距離攻撃で、本来ならそれぞれに射程がある。だが具体的に射程が何マスというのを管理しても面倒だ。
     そこでいつもやっているのは、射程が極端に短いもの以外は、マップのどこへも届くとしている
     ほかにも追加効果が長々書いてあるものもばっさり割愛することも多い。
     マスターには非常に大きな裁量権が渡される。そのためよりプレイヤーの負担になる可能性がある要素は常に変更を加えている。

  • ルールや判定の簡略化・省略・緩和
     セッションは楽しかったねと終われればよい。
     もし厳密なルールや処理が円滑な進行の妨げ、あるいはプレイヤーの負担になると判断したものはいつも簡略化・省略・緩和している。

     特に戦闘と固有システム、PCのリソースにまつわるシステムはこういった調整を行う傾向にある。

     例えばネクロニカは戦闘もあり、CoCでいうSAN値とSANチェックのようなルールが搭載されている。正気を回復もできるが、この回数は制限がありルール通り運用すると発狂が免れられない。
     その卓ではSAN値自体が戦闘のリソースになるPCもいた。また発狂ロールを強いられるのも大変だろう。
     そこで上限を大幅に引き上げて、他PCと関わり、物語へ積極的に移入するCoCライクなシステムとしてカジュアルな運用を行った。

  • 戦闘の難易度をカジュアルにし、リソースにかかわるシステムは緩和する
     最近は非戦闘系システムが結構あるが、戦闘がメインのシステムも未だ数多く存在する。戦闘のルール簡略化とは別に、明確に筆者が掲げている方針が「慣れていないプレイヤーでも戦闘を楽しめる=勝てる」ように調整を行う。カジュアルな戦闘としてのマージンを保証する感じ。
     極端に言ってしまえば、同じスキル連打で勝てるように調整を行っている。
     転じて、PCが極力ロストしないような難易度にしている。

     特に気を付けているのはスキルや特技の多いPCだ。具体的にはファンタジーシステムにおける魔法使い。彼らは他PCに比べて使用できるスキルが多いキャラで、運用が少々難しい。
     魔法使いでなくても、スキルをたくさん取得するシステムなどもデータが多く、プレイヤーはどれを使えばいいか分からない時がある。
     あまりにもカチカチな戦闘難易度にすると、最適解や強行動以外は損になってしまうし、それは面白くない。
     そのためある程度の行動がぶれてもボスが倒れるように調整している。

     またPCの中には魔法使いとは対称的に、剣や斧を振るうような戦士系キャラもいるだろう。
     戦士系は魔法使いよりできることが少ない。だがそのシンプルさこそ彼らの良さだと思う。
     だいたいは武器を用いて毎ターン攻撃をしてくるだろう。彼らの攻撃がちゃんと命中しダメージを与えられるように調整するのも大事だ。

     またもしかしたら戦士系には大技がなく、武器を用いた通常攻撃一辺倒になるかもしれない。魔法使いにも通常攻撃のような低コストの魔法があるだろう。
     筆者の調整は、大げさに言えば「通常攻撃に頼ればなんとか勝てる」ものにしている。
     大技を一切使わないで倒せるのも問題だが、初めての戦闘システムにプレイヤーは慣れるのに手一杯だ。時折「大技を使ってもいいんだぜ」と促すことはあっても強制はせず、彼ら自身の選択でボスを倒したと実感してほしい。
     通常攻撃は戦闘への関与の保証だと筆者は割り切って、大味ではあるがそのようにシステム運用をしている。

  • PLの好みやPCの設定を盛り込んだシナリオ
     今までがデータ、システム的サポートだとするとこちらはシナリオやキャラを介したアプローチだ。
     これはシステムの世界観にも依るが、個々のプレイヤーが求める経験をシナリオへ盛り込むのはいつも筆者のやる定石だ。
     筆者は0からシナリオを書くのが苦手のため、PLの好みやPCの設定をもとにシナリオを書いている。それが自分の書き方に合っているのもそうだけども、なによりPLの満足度が上がる。やらない手はない。

     仮にシナリオを書いたことがない、シナリオを書くのが苦手という人もぜひやってみてほしい。
     大げさな話ではない。PCの見せ場を作りながら、その見せ場により没入しやすいよう、方向性を合わせてやるだけだ。
     まぁ、だけとはいえそこが難しいんだけども。

  • ロストの保険をかけておく
     基本的にTRPGにおいてキャラクターロストはできるだけ避けるべき結果だと筆者は考えている
     CoCなど探索メインのシステムで、ロスト確率が高いことが告知されているなら話はまた別なのだろうが、ロストやロストに繋がる可能性は極力排除している。PCはPLの大事な半身だ。PLが大事に作成し、セッションの思い出が詰まった存在だ。
     筆者は自前のシナリオなのもあり、危ないタイミングではよくアドリブの場面やシステムを生やしている。
     だがそれはあくまで次善の策だ。そうならないためには「PCができることを明示し、それを学習してもらうこと」と「それでもロストしそうならば追加のルールや描写でそれを回避する」ことだと思っている。

     非戦闘系システムの扱いは分からないが、基本的に戦闘系システムにおけるロストは戦闘の敗北とキャラクターの死亡に直結する。
     それを未然に回避するためにも、まずはPCが行える行動を提示しそれを覚えてもらう。それでも迷っているならさらに提案をする。
     特に最初の戦闘で各々のキャラはなにができるのかは明確に示しておいたほうが良い。ミドル戦闘も入れてあげれば、クライマックス戦闘になるころにはある程度一人で考えられるようになっているだろう。
     チュートリアル戦闘は大事。戦闘に限った話ではなく、当たり障りのない障害を用意し「ではシステムの判定について説明しますね」とシナリオ冒頭で判定について触れておくのも良くやる。
     特に筆者の卓環境はシステム初めての人が多いからこそ、そういった提案・学習の場は常に設けるようにしている。

     それも踏まえたうえで戦闘やそれ以外含めロストしそうなら、それをサポートする処理や描写・提案を行う。
     例えばDX3rdなどで浸食率が下がりきらなさそうなら「さらに経験点を減らすことで追加で浸食率を下げてもいいよ」といった提案をするとか、戦闘で倒れかけているなら「道中君たちが助けたNPCが勇気を振り絞って助けにきてくれた。HPを回復するアイテムを君たちは受け取るだろう」などといった具合だ。

  • 何度も卓を開いて、システムのコミュニティ内地位を確立していく
     これは筆者がやっているというより、やるべきなんだろうなと痛感していることである。
     体験会を開いても一度きり、また別の体験会が開くではプレイヤーの負担が大きいなと最近直感した。
     別システムの体験会を何度か開いたがその都度都度で集まりはまばらだった。
     実際に負担が大きいのか、それともタイミングが悪かったのか、興味を引く要素がなかったのか。
     だが、一度触ってもらったシステムの二回目などは参加者が結構乗り気だったように思う。同一システムを何度か回す方向性で良いのだろう。
     最近感じ始めたことなので、確証はないが。

最後に

 本記事では筆者がやっている卓のサポートをできるだけ細かに書いた。少々細かい部分もあるかもしれないが、情報量が少ないよりかはいいだろう。
 ネットの海に泳がせておけば、もしかしたらこんな記事でも誰かの役に立つかもしれない。
 自分の中で課題と培ってきた技術を明確に形にするために本記事を書いたが、機会があればシナリオを書く際に意識していることや自分流テクニックもいずれ形にしたい。
 形にすることで自分の中で見えてくるものもあるだろう。

 TRPGの魅力とはなんだろう。
 魅力的なシステムと世界観、シナリオがありそれに積極的に関与できること、仲間と旅を共有できることではなかろうか。
 どんなシステムでもきっと楽しい旅になるだろう。それはきっと間違いないのだ。

 こんな路傍の石でも、誰かにとっての他山の石になることを願う。
 仮に、努力しようというユーザーが何かを求めて本記事を開いたなら、何かを提供できていれば幸いだ。

 ……筆者は現在、GMとしての在り方、力量などすべて見つめなおし、スキルアップするべきだとして、努力を少しずつ行っている。
 その中で苦悩も多い。というより苦悩しかない。
 筆者の環境的には、もはや筆者の卓は人を集める意味がない。あらゆる面において需要がなく、有償のシナリオと比較してボリュームや面白さもない。メジャーシステムでもないからプレイヤーへの負担も大きい。
 筆者の卓に誰かを呼ぶくらいなら、よく遊ばれている有名なシナリオをやったほうがはるかに有意義だ。
 筆者はゼロからすべてを見直すしかなかった。脚本技術を見直すため技術書も購入した。需要なども計算してシナリオを考えているし、迎合するために著名システムも購入する手はずだ。
 それでも苦悩と課題は付きまとうだろう。それでも真正面から立ち向かう以外に選択肢はなかった。それが小さな意地とエゴとプライドのためだとしても。
 すべての努力する者に祝福あれ。すべての卓に祝福あれ。

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