逆縁結び(さかえんむすび) 完全実話怪談

この話はYouTubeで朗読をされているemiko様の朗読用に書き下ろしをしたものです

https://youtu.be/HJfuORfIMqk?si=wKcp8MuhRRb_jLEf

縁結び、という言葉を聞くとまず思い浮かぶのは縁あって結ばれる縁起の良いものが思い浮かぶ
しかしそれは良縁だけではない
悪縁とも呼べる不運な縁結びも存在する
それが違う縁を結び、呪いを招く

ある女性の方から聞いた悪縁の話
特定や関係する場所への配慮のため、詳細は明かさない
彼女は幼い頃、高位の僧侶より
「あなたは念が強い。この念は良い方向に使いなさい」
と言われたが皮肉にもその恵まれた力は逆の方に使われる事となった
平成の頃、20代の彼女は結婚し、夫と子供と暮らしていた
彼女の夫は家庭に不向きな人物で、子供がいてもまともに働くことをしなかった
9年の結婚生活の間、夫が働いたのは実質5年位だった
代わりに彼女彼女の母親が協力しあい、家庭を支えつつ、パートをしていた
悪縁繋げるきっかけは、生活が苦しくなった夫が実家のある場所に引っ越すことを決めた
しかし、引っ越すにはかなりの遠距離
しかも貧困家庭
なけなしのお金を使い果たし実家の近くにある一軒家に住むこととなった
引越先の悪縁
その家は古い家で、引越当初猫と同じ位の巨大な女郎蜘蛛に出迎えられた
2階の窓からは墓地が見え、1階の部屋は何故か外から鍵がかかっており、人を閉じ込める仕様の不気味さに驚きを隠せなかった
そういった異様な雰囲気に負けず怪異も訪れた
夫婦共に感じた見知らぬ老女の気配
使っていた枕からは誰のものか分からない長い髪の毛
怪異に対抗するため、盛り塩をするもそれは1日で水浸しとなった
「引越先のあの家でも嫁姑問題があったのでしょうね。今となっては憶測でしかありませんが」
彼女は語る
恐らくは嫁姑問題の因縁があったとされる怪異の起こる家
そこに新たな悪縁が繋がる
夫の母親である彼女の姑は有名な業突く張りだった
近所に彼氏と同棲していた姑は4人の実の子にたかり
実の娘すら死を願う人物だった
そんな人物が長男の妻である彼女に優しく接する筈もなく
彼女は姑と夫から毎日のようにいたぶられ、地獄の日々を送った
精神を病み、自殺願望を起こす程に追い詰められた
その時に新たな縁が生まれる
その町にあった有名な縁結びの神社
そこであの姑との縁切りを願った
縁結びの神社は悪縁を断ち、良縁を結ぶ
彼女は必死に祈った
あの姑との縁切りを

帰宅した彼女は急な睡魔に襲われ、布団を敷き眠った
心労がたたったと彼女は語る
眠りから目覚めた彼女の心は自殺願望に支配された
目に写る鴨居
それに縄をかけ、自分の首をかける
ぶら下がれば楽に慣れる
今のこの地獄から抜け出せる
兎に角その事のみを考えた
少し寝て、自殺を実行しようと考えていた彼女に
「何故、お前が死ぬ必要がある?」
と言う聞き覚えのない声
この声に諭され、彼女は自殺を思い留まった
再度布団に入り眠ろうとする次は強い金縛りに襲われる
身動き出来ない状況の中、夢とも現実とも分からない映像が浮かぶ
タクシーの後部座席に座った姑
姑はいつも近場でもタクシーを使う
いつもの日常の風景
彼女は姑に呪いの言葉吐いた
「死ね!そこに車が突っ込んで死ね!死ね!」
殺してやりたい程の強い念を姑にぶつける
それ程までに姑が憎かった
自分を自殺にまで追い込む姑が憎い
死んでほしい
死ね
死ね
数時間がたち、所詮は夢の出来事と、布団に座り冷静になっていると、仕事中の筈の夫が急に戻ってきた
「大変だ!大変だよ!お袋が交通事故に!」
慌てふためいた夫は、先程まで見ていた映像そのままの出来事を彼女に話す
「取り敢えず!俺はお袋が運ばれた病院に行ってくる!」
病院に向かった夫に彼女は喜びにうち震えていた
やった
あれはない夢じゃない
現実だったんだ

結局姑は事故による怪我のみで、命に別状はなかったがこの事故の後に彼女は夫と姑からの悪縁が切れた
怪我をした姑を全く心配しようとしない妻に失望したのか、それともとっくに妻への愛情がなかったのか
2人は離婚した
しかし彼女がもっとも大事にしていた縁まで断ち切られた
愛する息子は夫側に親権が行ってしまった
長男の息子である彼女の子は夫の実家の跡取りなのだ

愛する息子を奪われた彼女の耳にはかの地での息子を捨てた鬼母と言う不名誉な噂まで立ってしまった

以上が彼女にまつわる縁の話だ

呪いに荷担した者の真意も正体も分からないが、呪いと言うのものは相手の死を願えば代償として、自分の命も失うこととなる

それ程までに死を願う呪いはこの世との縁を切るのだ

この悪縁を断ち切った彼女との縁があって私もこうして彼女から不思議な縁の話を聞くことが出来た

縁は本当に複雑で、どこで繋がっているのか分からない
呪いと言う恐ろしい縁も

終わり

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