見出し画像

残像

ここ最近同じシチュエーションを幾度も繰り返している
 
それは夢であるには具体的すぎるが、現実には起きていない なんせその人とはもう一年以上お会いしていないからだ

私の頭の中で淡々と繰り広げられているパロディだと認識すると、懲りないなあ‥私は、とあたかも他人様の頭の中で起きているかのように俯瞰し始めた

なんでもないような商店街を友人と二人で歩いている いつもの海から駅へ向かう帰り道
私はその商店街が大好きだ お祭りがあれば誰かがTUBEの夏祭りを歌い、夏になると海へ足早に向かう人々を見る そして年中無休で海の近くに通っている学生達は秀でた学力でああでもない、こうでもないと討論しているのをみると 少年‥がんばれ‥といった気持ちになる 街自体の温度とは対照的に人の温度が高い 人がいることで街が生きている感覚に陥る そんなこの街がすきだ

駅まであとすこし‥友人と別れるのが名残惜しい気持ちと、これだったら終電に間に合うだろうという安心感が入り混じり複雑な心境で煌々としている駅へ急ぐ ふと目に付いたマクドナルドの看板をみて、まるでマックフルーリーみたいな気分だなんて思ったらまたすぐ会える気がして私の脳内ももれなく甘くなった

駅のホームで逆光であるのにもかかわらず、私は向かい側から歩いてくる数人の男の子たちが一瞬で誰だか感じ取ることができた 私は幾度となくその人たちの話を聞いてきたからだ この人は喧嘩が強い、この人はいて座、この人は初めて性行為をしたあとに「カブトムシとの性行為の方がましだ」と嘆き白ワインを一人で飲みきる‥等頭の中にインプットされている所謂どうでもいいことが男の群れの上にテロップのように映し出される その中に少しだけ離れて歩く彼がいた

こんなに狭い通路である故にみて見ぬ振りもできず友人の同級生でありあちら様もそういった様な眼差しであった

私をみるなり あぁと言って眉をひそめながら後ろに向かってその中の一人が合図を出す人もいれば
同じクラスだった男の中の一人もこういった状況の中では一変して軽く会釈する あぁもうやだ

彼に逢うのはいつ振りだろうね、なんてその時私は考える 鮮明に憶えているのに敢えてすっとぼけて久しぶりだね、なんて会えて少し嬉しい気持ちを隠しつつも これはばれてるな‥と彼の目をみて感じる

きっと彼の目の奥にはニヤニヤしている私が映っているのだな‥と陽の気持ちには抗えない恥ずかしい気持ちと、ほんの僅か彼にだけ伝わってほしいという気持ちでまたしても調理ができる オムレツの上にかかるケチャップかな?スープの上に乗っているバジルぐらいかな‥?私の心にスパイスをかけているのは事実で、美味しくなあれ~と魔法をかけてくれれば彼はもう立派な私のシェフだ

そんな私の脳内をよそに彼は私を見るなり、
会いたくなかったわ、じゃ
と冷たい風をきり男の群れの中に混じっていく

いつもここまで 現実ではないこのシチュエーション そういえばそんな人だったなぁとコロナを一気にのみほす 

近づくほどに遠くになって~鈴木真海子のサマシチュエーショーンの歌詞が波とともに身体に沁みる
いかれたbabyが続いて流れればもうこれを聴いて一年経つのだな、と時の速さに驚いたり 


yonigeのリボルバーが流れた頃にはそれでいいか、なんて思って煙を吐いていた 貴方がホープを願うならば私はピースを願うよ 強いタールの中にある甘さは私がみていた彼を彷彿させる こうやって燃えていったのかな、なんて落ちていく灰を見つめ、届くはずもないがごめんね‥と呟いた

丁寧に過去を振り返り小町通りの行きつけの喫茶店へ向かう 歩いても歩いても思い出ばかりだ 
けれど不思議ともう辛い気持ちにはならない
夏季限定で頼んだ珈琲はエスプレッソとミルクがはっきりとセパレートしていた 私は混ぜることなく一気に飲みほし店を出た 

ありがとうエスプレッソ
苦みの中にある甘美な香りは秋の生ぬるい風の匂いとまじり私をまた一歩前へ進ませてくれている気がした

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?