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Ethereumのロンドンハードフォーク(EIP-1559)について知っておくべきこと

2021年7月に向けて、Ethereumは最も重要で論争の的となっているアップグレードを行う予定です。それはロンドンハードフォークと呼ばれ、ネットワークの取引手数料の高騰問題解決が期待されています。マイニング業界内での論争や反対意見に関わらず、Ethereum Improvement Proposal (EIP) 1559の実装に踏み切る形です。

「ETH 1.0ブロックチェーンの手数料相場の変更」と題されたEIP-1559は、2019年にVitalik Buterin氏自身によって最初に提案されました。ロンドンハードフォークでは、この7月に5つのEIPを実装すると予想されていますが、その中でもEIP-1559による影響が最も大きいとされています。本記事では、そのEIP-1559の提案について、それがユーザーやマイナーにどのような影響を与えるのかを解説していきます。

EIP-1559とは?
簡単に言うと、EIP-1559の提案には主に2つの変更点があります。

デュアルフィーシステム
イーサリアムは、非効率的で予測不可能とされる「ファーストプライスオークション」の形式に基づいて手数料を計算しています。手数料オークションの仕組みを最適化するため、イーサリアムはすべての取引に関連する2つの手数料、基本手数料と優先手数料の導入を目指しています。

基本手数料とは、ネットワークの混雑状況に応じて調整される動的な金額です。ウォレットは、「ファーストプライスオークションモデル」を用いる代わりに、ネットワークの混雑状況に応じてユーザーのガス料金を自動的に設定することができます。また、ユーザーは、自分が支払ってもよいと思う最大の基本手数料を手動で設定することで、トータルコストを抑えることもできます。

ETHの経済的価値を確保するために、基本手数料をバーンする一方で、優先手数料はマイナーのために確保されます。手数料をバーンすることで、イーサリアムのインフレを抑え、プラットフォーム上のマイナーに報酬を与えるための資産も残します。

ダイナミックブロック
今回のアップデートでは、ネットワークの混雑状況に合わせて調整するダイナミックブロックを導入します。1ブロックあたりのガス上限を、現在の1,250万ガスの2倍である2,500万ガスに設定することで、ネットワークはより多くの取引を促進しつつ、手数料を低く抑えることができます。

ファーストプライスオークションモデル
イーサリアムの取引手数料は、「ファーストプライスオークションモデル」と呼ばれる単純なオークションの仕組みによって設定されています。これはネットワーク上のユーザーが「ガス代」と呼ばれる入札額を付けて取引し、それに対してネットワーク上のマイナーが最も高い入札額を付けた取引を優先的に処理するというものです。

しかし、このオークション形式こそが、イーサリアムのネットワークにおける非効率性や様々な問題の原因となっていました。というのも、取引が処理されるには、最新のブロックにその取引が含まれる必要があります。そうすると、自分の取引を早く処理したい場合には、より高い入札額を付ける必要があります。

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ファーストプライスオークションモデルの最も大きな問題点としては、次のようなものがあります。

ユーザーにとって不必要なネットワークの混雑と遅延の発生

誤ったガス料金の見積もってしまう非効率なオークション形式

利己的なマイニング攻撃の可能性

ネットワーク料金の激しい変動

ファーストプライスオークションモデルは、価値の高いユースケースを優先して、ブロックチェーン上の価値の低いユースケースをフィルタリングするために導入されました。しかし、この方法では、ネットワークが単一取引の最適価格を予測・計算することができませんでした。

さらに、人々が一般的に使用している現在のイーサリアムウォレットでは、支払うべきネットワーク手数料を正確に見積もることができない場合が多いのです。ユーザーは、自分の取引をブロックに含めるために、しばしば過剰に手数料を支払わなければなりませんでした。

イーサリアムは、最新の入札額がその前の入札額よりも高くなければならない「均一価格オークション」モデルの導入を計画していました。しかし、マイナー自身がダミー取引をブロックに含めることで、取引手数料を増やし操作するという可能性がありました。

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EIP-1559の活用
EIP-1559では、EIP-2718から新しい取引タイプを導入します。このプライシングメカニズムは、ファーストプライスオークションモデルに内在する問題を克服することを目的としています。基本手数料と優先手数料の2種類の手数料が導入される予定です。

基本手数料は、ネットワーク上の取引すべてに含まれる、ブロックごとの固定ネットワーク手数料として導入されます。基本手数料は、前のブロックで使用されたガスと、親ブロックのガスターゲットに依存します。

ブロックが、計算されたガスターゲットの制限を超えた場合、基本手数料は増加します。また制限を下回る場合、基本料金は減少します。この新しい基本手数料は、ネットワークの状況に合わせて調整することができるため、イーサリアムのウォレットは最新のネットワーク手数料を正確に見積もることができます。

さらに、EIP-1559では基本手数料をバーンすることで、イーサリアムのインフレに対抗することも計画しています。現在の4.5%という年間発行率は、今後のハードフォークでこの提案が導入されると、0.5%から1%にまで下がると予想されています。

マイナーはどうなるのでしょうか?
EIP-1559はマイナーにとって良いものではありません。マイナーの収益の約50%が取引手数料によるものです。先月、イーサリアムのマイナーは23.5億ドルという驚異的な収益を上げましたが、そのうちの10.3億ドルはネットワークの取引手数料だけによるものでした。

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EIP-1559は、マイニング業界に大打撃を与えます。EIP-1559で導入される新しい取引タイプでは、2つの手数料があります。基本手数料と優先手数料です。優先手数料は、マイナーへのチップの役割を果たします。ユーザーはマイナーへのチップを払わないことを選択できるため、この新プロトコルはマイニング業界にとって不利なものになると考えられます。しかし、マイナーにとって悪いことばかりではありません。ダイナミックブロックサイズの導入により、EIP-1559ではマイナーがブロックサイズをコントロールして収益を調整できるようになりました。

まとめ
EIP-1559は、プラットフォームに多くの変化をもたらそうとしています。導入によるデフレ効果、解決される問題、取引手数料推定モデルの最適化方法を考慮すると、イーサリアムは今後数ヶ月で大きな勢いを得ることが予想されます。
EIP-1559が実装された後は、イーサリアムが市場に出現すると、デフレの特性によりETHの価値は年々高まっていくに違いありません。また、同プラットフォームは、数ヶ月以内にProof-of-Stakeシステムに移行することを発表しました。
イーサリアムは、今年に入ってからずっとライバルであるビットコインを上回っています。7月中旬にはロンドン・ハードフォークが予定されており、長期的には価値の貯蔵手段としてBTCに匹敵する存在になることは間違いないでしょう。

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