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円周の求め方はどう伝えるのがよいか?【小5シリーズ②】

※この記事は、深澤英雄先生(神戸市の小・中学校で38年間教壇に立ち、教職大学院の特任教授を4年半務める。現在は和歌山大学教育学部の非常勤講師として学生の指導にあたる。元久保田学園の生徒でもある。)をお招きして、久保田学園グループ代表久保田勤とグループ講師宮後のお話をベースに記事にしています。 ※前回の記事はこちら

宮後:今回は子どもに学習のポイントを伝える方法を例に挙げながらお話していただくという回です。学習塾っぽくなってきましたね。小学校5年生ともなると抽象的な事が増えてきますから、ある程度具体的にわかりやすく説明してあげることが、ポイントという話でしたよね。

久保田:小学校5年生ともなると、公式だけでなく、なぜそうなっているのかという考え方も大事になってきます。では今回は小5の保護者が特に気になっている、円周の求め方を例に挙げて説明します。それではまず、質問なんですが、円周率って何ですか?

宮後:円周率は3.14ですよね?

久保田:それは、円周率が数字いくらか?であって、円周率が何かということではありませんよね。円周率が”なにものなのか”を”3.14という数字だ”と考えると、わけがわからなくなってしまうのです。これを具体的に伝えることが大事なんです。例えばこんな教え方があります。下の図を見てください。

久保田:円を四角で囲った赤い部分の長さは、円の直径の何倍ですか?ときいたら、どう答えると思いますか?

宮後:点線の部分が直径だとすると、ちょうど4倍ですね。

久保田:もちろんそのとおりですね。じゃあ、〇の部分、緑の円の周りの長さは直径の何倍かな?っというように聞いてみると、とても面白い問題だと思いませんか?

宮後:なるほど、それで直径を正方形で囲ったら、4倍、直径を丸で囲ったときの倍率が3.14倍になる、だから円周率というのは3.14なんだよと教えると、かなり具体的にイメージできますね。

深澤:でしたら、このようにきいてみるのも面白いですよね。

このように、3つの辺と〇だと、どちらの方が長いのかを聞いてみるんです。実際に糸を使って長さ比べができるとより面白いかもしれませんね。もちろん〇の部分の方が少し長いわけですが、イメージさせてみることが大事ですね。

久保田:こういうところに、抽象的なことを具体的にイメージしやすく伝えるのがポイントがあります。これを機械的な公式で
 円周=直径×3.14 
と教えてしまうとイメージしにくいものになってしまう
んです。

宮後:”円周率は3.14”というのがとても印象的で、数字だけを先行して覚えてしまう事もあると思います。そうやって数字や公式だけしておいただけでも、一部の宿題とかは簡単にできてしまいます。でも意味を理解せず暗記だけしてしまうと、結局頭の中に残らなくて時間が経ったら忘れてしまったり他の公式と勘違いしそうです。それだとせっかくやった宿題も無駄になってしまいます。

深澤:保護者の方が円周の求め方を検索されているのには、そういう伝え方を知りたいという気持ちの表れかもしれません。保護者の方も円周=直径×3.14であることはご存じだと思うんです。

久保田:少し話が長くなるのですが、円の面積でも応用が効くんです。円の面積の公式は何ですか?

宮後:半径×半径×3.14ですよね。

久保田:では半径ってどういうものだというイメージがありますか?

宮後:直径の半分ですよね。こういうイメージです。

直径が4だとすると、半径は2と半分というイメージです。

久保田:これだと、半径×半径×3.14がどういうことを表現しているかちょっとわかりにくいですよね。だから、こう考えてみるといいんですよ。


こう見てみると、半径×半径が 縦×横になっているのがわかりますよね。こう考えるとこの半径×半径が、面積を表しているということがすぐにわかるんです。

宮後:なるほど、黄色の部分を4つ分、つまり4倍にすると、全体の正方形の面積になる、でも〇の部分だけにしようと思ったら、4倍だと大きすぎる。何倍にすればちょうどよくなるんだろうか?と考えてみて、そこで円周率の3.14倍すればいいんだと考えるといいんですね。かなりイメージしやすいです。

深澤:円周の長さの公式と、円の面積の公式をよく混同して覚えてしまう子どもが多くいるんです。今のお話のように考えておくと、混同せずに覚えることがしやすいと思います。

久保田:これにはもちろん、小学校4年生の縦×横で面積がでるということをまず知っておかなければなりませんが、円でも応用することで面積の考え方がより補強されて忘れにくくなるんです。算数は積み上げの科目と言いますが、5年生で習うことが4年生で習ったことをより補強していくという面もあります。こうなっていると、5年生のことを復習するだけで4年生の事も復習することができるようになるんです。

深澤:視点を変えることや、以前習った視点に”あてはめる”ことを利用しているという点が含まれているというのもこの教え方の素晴らしいところです。抽象的なことを具体化するには、様々な視点を持っていることが大切になってきます。単に公式だけ覚えるということでは決して身につかないことです。

久保田:このような教え方は技術的な部分があります。円周の求め方がたくさん検索されているとのことでしたので、今回ご紹介させてもらいましたが、全てのことで保護者の方がこのような教え方ができるようになってほしいというわけではありません。注意してほしいのは、あくまで機械的に公式に当てはめて計算だけしていないかどうかを良く見守ってほしいのです。問題文の数字の部分だけでなく、きちんと図形のどの部分を見て計算しているか、その目の付け所が正しいかをよく見ていてあげてほしいのです。

宮後:円の計算は円周率の3.14を扱った計算をするので、計算間違いしやすい。間違えて、もう一度やり直しと言われたら、投げ出したくなる気持ちもよくわかります。答えが間違っていることの原因が計算ミスなのか、目の付け所が間違っているのか、間違いの原因を子どもに伝えることで、投げ出さずもう一度やってみようという気持ちになるかもしれませんね。今回の場合は計算ミスで間違っていると、小数の計算を復習する必要があるかもしれませんね。

久保田:いずれにせよ、間違ったことを否定せず、励まして、間違えた原因を伝えて再チャレンジを促す。そうすることで、子どもがたとえ一度間違えたとしても投げ出さない”粘り強く学ぶ”という姿勢が身についていくのだと思います。

深澤:今聞いたお話は、算数の円の部分だけの話でないと思います。三角形の面積の求め方でも同じことが言えると思います。三角形の面積の話も交えつつ、アドバイス法についてお話できたらと思います。

宮後:それでは次回は三角形の面積でまたお話伺いたいと思います。よろしくお願いします。

まとめ

・公式だけだと抽象的です。公式の意味、役割を考えると具体的になる。
・子どもが機械的に公式に当てはめていないかを注視しよう。問題の目の付け所が合っているかを見てあげよう。
・円は計算間違いが多い単元。努力を認め、励まし、原因を伝え再チャレンジする気持ちを持たせることが何よりも大切。結果だけで否定しないように。