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小4の壁…前向きに乗り切るポイントとは?【小4の壁①】

※この記事は、深澤英雄先生(神戸市の小・中学校で38年間教壇に立ち、教職大学院の特任教授を4年半務める。現在は和歌山大学教育学部の非常勤講師として学生の指導にあたる。)をお招きして、久保田学園グループ代表久保田勤とグループ講師宮後のお話をベースに記事にしています。


小4の壁って何?

宮後:先日ヤフ・ーデータソリューションズさんの記事を見ていると興味深いデータが掲載されていました。小学校4年生の保護者の方が検索している子育てキーワードの第二位が”小4の壁”でした。非常に保護者の皆さんの関心が高い言葉であることがわかります。※第一位は”子どもコロナ症状”

久保田:コロナ禍の時代で、家庭で子どもの勉強を見守る機会が増えた保護者が子どもの事が心配で色々検索されているのだと思います。小4の壁を上手に乗り切りたいというのは保護者の願いだと思います。そのポイントを深澤先生に是非詳しいお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

深澤:小4の壁は9歳・10歳の壁とも言われています。小4の壁とは、小4になって子どもが勉強面で躓いたり、成長・交友関係でも難しいことに直面することを指します。文部科学省でも”子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題”の中の学童期の課題の一つとして”小4の壁”をあげています。小学校の教師としての私の経験から見ると、4年生の子供たちは、発達の面で大きな成長を遂げる時期です。この時期は、教師側からしても特に教育の面で手応えを感じやすい学年と言えます。

宮後:やはり、小4、9歳・10歳の頃が子どもの成長が大きく実感できる時期ということですか?

深澤:そうですね。子供たちはまだ幼さを残しつつも、徐々に大人の会話ができるようになり、学習面や運動面で積極性を見せます。この年齢の子供たちは、低学年の頃の自己中心的な考え方から徐々に脱却し、友達のことを深く考えたり、友達の立場に立って物事を考えられるようになります。もちろん学年ごとに子どもたちは成長を見せるのですが、私の経験上最も大きな変化を感じる学年だと思います。

肉体面での変化・成長

深澤:まずは、肉体的な成長や、精神面の変化についてお話したいと思います。勉強が難しくなってくる時期なのでそちらの方が気になる方が多いかとは思いますが、肉体・精神が基礎の部分なので、しばらくお付き合いいただきたいです。

久保田:まずはどのような変化がでてくるのでしょうか?女の子の方が成長が早いなど、個人差もあるのではと思いますが、いかがでしょうか?

深澤:この時期の女の子は急激に変化します。もちろん個人差はありますが、大人びた体つきに変化していきますので保護者の側も子ども扱いのままではよくありません。具体的には、今まで親やおじいちゃんおばあちゃんといった家族とお風呂に入っていたのが嫌がり始めたりしますが、それは当然の変化なんです。この変化に保護者や教師は配慮していかなければなりません。

宮後:確かに女の子の方が先に大人びてきますね。男の子のほうがいつまでたっても幼い面が残るような気がします。クラスで女の子に”男子たちはもっとしっかりしなさいよ!”と言われているイメージがありますね。

深澤:確かにそうなのですが、男の子もやはり体力が急激に伸びてきます。クラスでドッチボールをすると、男子の投げる球がすごい勢いになって女の子では受けるのが難しいといったようなことも起こり始めます。まだ身長などは女の子の方が大きいケースもあり、個人差はありますが肉体的な成長が見え始めてきます。それに伴って精神的な変化も見え始めてきます。

精神的な変化

深澤:そして小学校4年生の時期から、ある意味、大人と同じように考えることができるようになります。やはり幼いときは自己中心的にものを考えるものですが、この時期ごろからお友達の事が気になりだしたり、お友達にどう見られるかということを意識するようになります。要は、客観的にみるという考え方が芽生え始めます。

久保田:客観的にものごとを考えられるようになることは、子どもの自立に向けての発達段階でとても重要な事だと思います。周囲だけでなく、自分自身を客観的に見ることができるようになると、子どもは飛躍的に成長します。そのような考え方が、4年生くらいになると、身に付き始めるのでしょうか?

深澤:もちろん個人差はあります。”精神的に成長し始めたな”という子どもには、言葉や行動に変化が出てきます。例えば、何でも言うことを聞いていた子が、”うるさいなぁ”と反発しだしたり、親が子どものためにやっていたことを、”これは自分でやるから”と言い始めたりするのは成長の兆候ですね。子どもの反発をなんでも認めてしまうのはもちろん良くありませんが、反発は成長の兆しと考えて落ち着いて子どもと向き合うことが、子どもの成長には望ましいと思います。急に子どもが反発したり言うことを聴かなくなると保護者の方も心配になると思います。対処についてはまた後半お話します。

子ども同士の世界

深澤:そして、大人や先生から独立しようと考えるようになると、子ども同士の世界をつくるようになります。子ども同士で内緒話をするようになったり、仲良しのグループを作るようになるのがその兆候です。今まで、なんでも親について来ていた子どもが、”今日は友達と遊んでくる”といったことも増えてきます。感情を共有できるグループを作り始めますので、これまで男女関係なく遊んでいたのが、女の子同士、男の子同士のグループを作り始めるのもこの時期です。

久保田:親としては子どもが離れていってしまうのでちょっと寂しい時期ですね。ですが、このような子どもの世界観を尊重していかないと、いつまでたっても子どもは自立していきませんもんね。

深澤:その通りなんです。このように、親子や教師とだけでなく子どもの世界を作っていくことは、子どもの成長に欠かせないことなのですが、ここにも”小4の壁”があるんです。やはりまだまだ人間関係の作り方が未熟なので、子どもたち同士のトラブルがおこることもあり、時にはいじめといった問題に発展していくこともあります。ここが難しいところで、どこまで親が手出ししていいのか難しいという問題があります。こどもが大きく変化していくこの時期に、どのように子どもに接していくのがよいか、そのあたりについて、次回お話をしたいと思います。

まとめ

・小4の壁とは、勉強が難しくなったり、交友関係が複雑化することである
・肉体的に成長し、大人の側も子ども扱いだけではいけない場合もでてくる
・精神的にも成長し、自己中心的なところから客観性が身に付き始める
・子ども同士の仲間グループを作り始める時期である。