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「クボタ食堂」

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自作レシピ集
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#小説

【第4皿】 「わたしの着地点。」

雲は低く、蓋をした様に空を覆っている。まだ風も強い。 ここ最近は世の中もだいぶ通常モードになってきて、仕事先に出向いて行くことも多くなった。そんな訳で今日は久しぶりのまっさらな休日だ。 連日の台風の影響もなんとか収まったので、寝起き早々恒例の洗濯機2回しを敢行。その間に顔を洗い、軽くスキンケアをする。髪もだいぶ伸びたな、忙しさにかまけてたけど、そろそろサロン行かなきゃだ。 それにしてもすっかり寒い。中間コーデを色々楽しみたかったのに、いつだって秋って人は足早だ。もはや実

【第3皿】 「わたしの夏のゆくえ。」

気付いたら夏が行ってしまった。 カレンダーが9月に捲られた途端、まるで会期を終えた催し物かのように夏は夏であることをやめてしまったようだ。 窓の外の抜けるような青空を見て、回していた洗濯機からシーツと枕カバーを取り出し、ベランダに1枚ずつきっちりと干していく。心なしか真夏よりすっきりとした青い空と綺麗なコントラストとなって風に揺れていた。 まだ涼しいとは言えないけれど、もう夏ではない何かを胸に吸い込んだ。 それにしてもこの一週間はなかなかハードだった。 半分はリモートワ

【第2皿】 「わたしのハッピーの分水嶺。」

これはまずい、溶ける。 「見ろ、化粧が泥のようだ…!」(見ないで) 本来なら今日はお盆休みだったはずだったのが、よりによって急きょ対面の打合せが入り、この冗談みたいな日差しの中、赤坂にあるオフィスビルまで出向いてきた。 どうやらこの業界の人の元にはご先祖様は帰ってこない世界線らしい。 自宅から電車だと30分かからない程度の距離なので、久々のこの状況だし自転車で向かうことにした。(あとでこれはミステイクだと後悔する事になる) Bianchiのスポーツタイプ、軽くて取り回しの

【第1皿】 「わたしの美味しい夏。」

ムダに長いZOOM会議が終わって、いったんノートブックを閉じ、ふーっと息をついた。 あの人なかなか話終わらないんだよな…。わたし的にはPDFに全部要約して出してるのに何故に一から説明させるかね。ぶつぶつ。 少し換気しておこうと閉めきったサッシを開けると、狂わんばかりの蝉の鳴き声と共に、むっとした熱気が飛び込んできた。 ベランダに出てみると室外機の排熱と相俟って、地獄みたいな状態になっている。これはまいっちゃうな。たまらずにヘアゴムで髪をまとめ、プランターの子達の様子を見てま