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レミッチOD錠、レミッチカプセル及びノピコールカプセルの承認に基づく「止痒剤」特許の延長登録事件

レミッチOD錠、レミッチカプセル及びノピコールカプセル(以下「本件医薬品」)の承認に基づく、止痒剤用途特許(特許3531170)の存続期間延長登録無効審決及び延長登録拒絶審決を取り消す判決(4件)が出されたことは、弊所知的財産ニュース「レミッチOD錠2.5μgの後発医薬品侵害差止請求事件で請求棄却判決」で触れさせていただきましたが、補足説明をさせていただきます。
https://note.com/kubota_law/n/n6f40d6ee8407

争 点:
これらの知財高裁判決(令和3年3月25日)では、以下が争点となっていました。
1)本件(特許3531170)発明の実施には、本件医薬品の製造販売承認を受けることが必要であったのか。
2)延長登録がされた「用途」の一部について無効理由がある場合、その部分のみを無効審判において無効にすることができるのか。

審査経過:
止痒剤用途特許は、「一般式(I)で表されるオピオイドκ受容体作動性化合物を有効成分とする止痒剤」に係る発明です。一般式(I)には、ナルフラフィン(フリー体)は含まれますが、ナルフラフィン塩酸塩は含まれません。
当初は、請求項2「オピオイドκ受容体作動性化合物がモルヒナン誘導体またはその薬理学的に許容される酸付加塩である請求項1記載の止痒剤」に従属する請求項3「モルヒナン誘導体が下記一般式(I)で表されるものである請求項2記載の止痒剤」と、ナルフラフィン塩酸塩も含まれる請求項でした。
しかし、拒絶理由通知に対応する補正において、請求項1及び2を削除し、その際に、請求項3の「またはその薬理学的に許容される酸付加塩である」の部分も除かれています。

判 決:
争点1)について
本件医薬品の有効成分は、製造販売承認書に記載された「ナルフラフィン塩酸塩」と形式的に決するのではなく、実質的には、本件医薬品の承認審査において、効能、効果を生ぜしめる成分として着目されていたフリー体の「ナルフラフィン」と、本件医薬品に配合されている、その原薬形態の「ナルフラフィン塩酸塩」の双方であると判断し、「ナルフラフィン塩酸塩」のみを本件医薬品の有効成分と解し、本件発明の実施に本件製造販売承認を受けることが必要であったとはいえないと判断した本件審決の認定判断は誤りであると判示しました。

争点2)について
明文の規定はありませんが、延長登録がされた「用途」の一部については、製造販売承認を受けることが必要であったとは認められない場合には、その部分のみを無効審判において無効にすることができると判示しました。

無効審決を取り消す判決に対しては、上告及び上告受理申立てがされています。
①令和2年(行ケ)10096(審決取消):上告(令和3年(行サ)10002)、上告受理申立(令和3年(行ノ)10012) (2021/04/03)
②令和2年(行ケ)10097(一部取消):上告(令和3年(行サ)10003)、上告受理申立(令和3年(行ノ)10013) (2021/04/03)
③令和2年(行ケ)10098(一部取消):上告(令和3年(行サ)10004) 上告受理申立(令和3年(行ノ)10014) (2021/04/03)

一方、存続期間延長登録出願(特願2017-700154)の拒絶審決取消判決(令和2年(行ケ)10063)に対しては上告されず、特許庁で審理が再開され、新たな拒絶理由通知が出されることはなく、既に審理終結通知書が出されています。

(文責:矢野 恵美子)


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