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レミッチOD錠2.5μgの後発医薬品侵害差止請求事件で請求棄却判決

東レは、沢井製薬及び扶桑薬品工業(被告ら)が製造販売等している、レミッチOD錠の後発医薬品である止痒剤は、止痒剤用途特許を侵害しているとして、差止等を求めましたが、東京地裁は、これを棄却しました(令和3年3月30日)。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/391/090391_hanrei.pdf

被告らは、文言侵害、均等侵害のいずれにも当たらない上、特許権(特許第3531170号)は存続期間が経過したなどとして争っていました。
被告らの製品に含まれている成分はナルフラフィン塩酸塩です。ナルフラフィン塩酸塩から遊離して生体に吸収されて止痒効果を発揮するのは、ナルフラフィン(フリー体)です。ナルフラフィン(フリー体)は、止痒剤用途特許の有効成分である化合物に含まれますが、ナルフラフィン塩酸塩は含まれません。
また、本特許について、出願から20年が過ぎており、存続期間延長登録の出願に対する拒絶査定不服審判で請求が棄却され、審決取消訴訟係属中でした。
東京地裁は、止痒剤用途特許の有効成分に該当するのは原薬であり、被告らの製剤ではナルフラフィン塩酸塩が原薬であるので、構成要件を充足しないと判断しました。
また、ナルフラフィン塩酸塩を有効成分とする被告らの製剤が、本件特許出願の手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの被告ら製剤と本件発明に記載された構成とが均等なものといえない特段の事情が存するとし、本件発明に記載された構成と均等なものとして、本件発明の技術的範囲に属するということもできないと判断しました(平成30年(ワ)38504、平成30年(ワ)38508)。

レミッチOD錠及び同じ有効成分を含むノピコールカプセルの承認に基づく、止痒剤用途特許の存続期間延長登録及び延長登録出願については、承認を受けたナルフラフィン塩酸塩を有効成分とする医薬品が本特許に含まれないことを理由に、延長登録を無効とする審決及び延長登録を認めないとの審決が出されていました。
そして、本東京地裁判決が出される直前である本年3月25日に、知財高裁は、承認書の「有効成分」の記載内容から形式的に判断すべきではないとし、本件処分の対象となった医薬品の有効成分はナルフラフィン(フリー体)とナルフラフィン塩酸塩の双方であるとし、前記審決を取り消しました(令和2年(行ケ)第10063号、令和2年(行ケ)10096、令和2年(行ケ)10097、令和2年(行ケ)10098)。その後、本件は上告されています。

本東京地裁判決は、控訴されることが予想されますので、知財高裁が、どのような判断を下すのか、興味深いです。

(文責:矢野 恵美子)

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