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東京地裁、「漫画村」に広告を出稿していた会社に損害賠償を命じる判決

漫画家の赤松健氏が、海賊版サイト「漫画村」に広告を出稿していた会社に対して損害賠償を求めていた訴訟で、東京地裁は、2021年12月21日、広告を出稿していた会社に対して1100万円の損害賠償を命じる判決をしました(東京地裁令和3年(ワ)第1333号)。

この訴訟は、漫画「魔法先生ネギま!」「UQ HOLDER!」の作者である漫画家の赤松健氏が、同漫画が海賊版サイト「漫画村」に無断で掲載されており、「漫画村」に広告を出稿していた株式会社エムエムラボおよび株式会社グローバル(被告会社)の行為は著作権侵害の幇助に当たるとして、被告会社に対して損害賠償を求めていた訴訟です。

東京地裁は、「漫画村」は、その運営資金のほとんどを、広告事業主から支払われる広告料収入によって賄っており、このような「漫画村」の運営実態からすると、「漫画村」に広告を出稿して広告料を支払っていた被告会社の行為は、「漫画村」の唯一の資金源を提供することによって、漫画を著作権者の許諾を得ずに無断で掲載するという「漫画村」の運営者の行為を補助し、あるいは容易ならしめる行為であって、著作権侵害の幇助に当たる、と判断しました。

また、東京地裁は、被告会社が「漫画村」に広告を出稿するようになった2017年5月当時、既に違法な海賊版サイトは社会問題となっており、そのことは広告業界においても認識されていたことや、被告会社は、「漫画村」が多数の漫画を著作権者の許諾を得ずに無断で掲載している蓋然性を認識していたことからすると、被告会社は、「漫画村」に掲載されている漫画が利用許諾を得ているどうかを調査した上で、「漫画村」への広告掲載依頼を取り次ぐかどうかを決めるべき注意義務を負っており、これを怠った被告会社には過失がある、と判断しました。

その上で、東京地裁は、「魔法先生ネギま!」「UQ HOLDER!」の正規の売上は約109億4940万円であり、赤松氏に支払われる印税は売上の10%であるところ、被告会社の行為が漫画の売上減少に寄与した割合は約1%であるとして、被告会社の行為と相当因果関係のある赤松氏の損害は、109億4940万円×10%×1%≒1000万円であると認定しました。
また、東京地裁は、被告会社の行為と相当因果関係のある弁護士費用は100万円であると認定し、合計で1100万円の損害賠償を、被告会社に対して命じました。

今回の判決は、著作権侵害を直接行っていた「漫画村」の運営者ではなく、「漫画村」に広告を出稿していた会社に対して、著作権侵害の幇助に基づく損害賠償責任を認めた点に特徴があります。

なお、損害額の算定については、今回の判決は、著作権法第114条が定める損害額の推定規定を用いることなく、赤松氏が受けた損害の額を算定しています。これは、今回の訴訟で問題とされた「魔法先生ネギま!」「UQ HOLDER!」が、「漫画村」においてどの程度閲覧され、それにより「漫画村」がどの程度の売上・利益を得たか、といったことを立証することが困難であることから、便宜的に、これらの漫画の正規の売上の何%という形で、損害額を認定したものであると考えられます。(そのような意味では、非常に大雑把な損害額の算定方法であると言えます。)

(文責:乾 裕介)

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