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「トレパク」を指摘するツイートに対し発信者情報開示が認められる

イラストレーターが作成したイラストが他人のイラストをトレースしたものであること、いわゆる「トレパク」を指摘するツイートがTwitterに投稿されたことに対し、イラストレーターがTwitter社を被告として発信者情報開示を求めた事件で、東京地裁はTwitter社に対し発信者情報の開示を命じる判決をしました(東京地裁令和3年12月23日判決(令和2年(ワ)第24492号))。

問題となったツイートは、氏名不詳の投稿者CおよびDが投稿した、以下の4件のツイートでした。(「B」は原告のペンネーム)

① 投稿者Cによるツイート
・「これどうだろうww ゆるーくトレス? 普通にオリジナルで描いてもここまで比率が同じになるかな」を本文とし、原告作成のイラスト(本件原告イラスト1)を含む画像が添付されたツイート(本件ツイート1-1)
・「この鏡餅も画像検索ですぐ出てきた。トレス常習犯ですわ。Bさん」を本文とし、画像が添付されたツイート(本件ツイート1-2)

② 投稿者Dによるツイート
・「B様がトレースを否定するツイートをされたようです それを信じているファンの皆様 一度こちらのイラストを見て下さい これもまた、B様が描いたイラストです 横顔のイラストと比較し、画力の差に違和感を感じませんか?」を本文とし、原告作成のイラスト(本件原告イラスト3・4)を含む画像が添付されたツイート(本件ツイート2-1)
・「特に横顔同士で比較してみてください 左の絵には鼻と唇の間に不自然な山があり『横顔がどうなっているか』という基本的なデッサンを理解していない方が描いたようにしか見えません B様は他のイラストでも手が描けない方です それでもトレースしていない、という主張を信じられるでしょうか」を本文とし、原告作成のイラスト(本件原告イラスト5)を含む画像が添付されたツイート(本件ツイート2-2)

裁判所は、投稿者Cによる2件のツイートのうち、本件ツイート1-1は、原告が他者が作成した画像をトレースする手法によって本件原告イラスト1を作成したという事実を適示するものであり、本件ツイート1-2は、原告が常習的にトレースによってイラストを作成しているという事実を適示するものであり、これらのツイートにより原告のイラストレーターとしての社会的評価が低下したと認められ、また、実際には原告は本件原告イラスト1をトレースの手法によって作成しなかったから、上記事実は重要な部分について真実ではないとして、原告の名誉が毀損されたことは明らかであるとしました。

また、裁判所は、投稿者Dによる2件のツイートのうち、本件ツイート2-1が投稿されたことで投稿者Dは本件原告イラスト3および4を複製および送信可能化したものであり、また、トレース疑惑を指摘する上で添付する必然性がなかった本件原告イラスト4を添付した行為は引用(著作権法第32条)の要件を満たさず、本件原告イラスト4にかかる原告の複製権および送信可能化権が侵害されたことは明らかであるとしました。
さらに、裁判所は、本件ツイート2-2が投稿されたことで、Twitterの仕様として、本件ツイート2-2を表示するタイムライン上に、本件原告イラスト5の下部がトリミングされた画像が表示されるに至ったものであり、これにより本件原告イラスト5にかかる原告の同一性保持権が侵害されたことは明らかである、としました。

その上で、裁判所は、各投稿者がツイートを投稿する前にTwitterにログインした際のIPアドレスおよびタイムスタンプは発信者情報開示の対象になるとして、Twitter社に対し、各情報を開示するよう命じました。

Twitterでは、あるイラストが「トレパク」によるものであることを指摘するツイートが投稿されることはしばしばありますが、今回の判決は、そのようなツイートを行った場合、名誉毀損、著作権侵害および著作者人格権侵害を理由として発信者情報開示の対象となり得ることを、改めて明らかにしたものであると言えます。

(文責:乾 裕介)

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