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『人工知能(AI)』と『人間』の思考は、何が違うのか?

先日、妻から堀 正岳 さんの『知的生活の設計―――「10年後の自分」を支える83の戦略』を、おもしろいから読んでごらん」と渡されました。久保家ではよくある光景です。

知的生活といえば、渡部昇一先生の『知的生活の方法 』がパッと浮かびましたが、読んでみるとなかなかおもしろい。自己啓発本によくある「これで明日から人生が変わる!」という要素は少なく、当たり前のことを論理的に淡々と説明している本でした。

その中でも、自分の「秘密基地」としての書斎をつくろうという記事には、ググッと惹かれるものがありました。憧れの書斎は一気に作るものではなく、本棚を工夫したり、部屋のレイアウトを整えたりしながら、ゆっくりと建設していくものであるという考えには、なるほどなと思うところがありました。

「まだ見ぬ誰かへの贈り物」と考えてブログで情報発信していく内容にも共感しました。久保家では、毎朝、朝食のときにホワイトボードで勉強会をする習慣があるのですが、最近はドローン、ドローンと夫がはやしゃいでいたので、こちらのNOTEも本来の姿から遠ざかっていました。そこで、ひさりぶりに本来の姿に戻って、毎朝の勉強会の内容を情報発信していこうと思った次第でございます。

@本日のテーマ:「AIと人間の思考」

本日は、「AIと人間の思考」というテーマでお話したいと思います。まず、ホワイトボードをご覧ください。

左側は、AI(artificial intelligence:人工知能)の思考方法です。言語学に、
シニフィアン(signifiant)とシニフィエ(signifie)いう言葉がありますが、今回は猫のイメージを例に説明したいと思います。

やりたいことは、コンピュータに猫の絵を学習させて、これは『Cat』だよ理解させたいわけですね。そこで、機械学習では、大量の猫の絵、10,000枚くらいの猫の絵を学習させるわけです。

そのときに、コンピュータがやっていることは、猫の特徴、この例ですと、丸い顔の輪郭が1つあって、眼が2つあって、口が1つあって、ひげが4本、耳が2個あるものが猫だとと知覚させるわけです。この例は、単純なモデルですが、それを複雑にしているのが『ディープラーニング(深層学習)』という技術なんですね。

コンピュータは、0から1しかわかりませんので、猫の絵を見せるときにはサイズを整えて上げる必要があるのですね。FAXをイメージして頂ければわかりやすいのですが、例えば、縦が28ピクセル、横が28ピクセルの絵に、白(0)と黒(1)で猫の絵を書くわけです。

大量の猫の絵を書いて、コンピュータに見せるわけです。すると、コンピュータは猫の特徴を学びまして、猫の絵を見せたら、『Cat』と応答できるようになるわけです。この絵のサイズを調整したり、ラベルを付けたりするのは、なんと『人間』の仕事なんですね。奴隷のために働く奴隷みたいものです(笑)

では、コンピュータは特徴をどうやって学ぶかというと、高校生のときにつまづいた『微分』を使うわけです。微分というと難しく聞こえますが、要するに、特徴に『分ける』のです。学習するとは分けることです。さきほどの猫の例であれば、猫の図を耳とか、口とか、眼とかに分けましたね。それが学習です。

学習するとは分けること。

ですから、ディープラーニングと聞くと、随分と難しいことをやっているように聞こえますが、単に『分けているだけ』です。分解しているだけ。それも幾何学的に『連続性』のあるものだけを分けているだけなんですね。森博嗣風にいえば、「すべてがベクトルになる」です(笑)

すべてがベクトルになる。

要するに、分けられない問題は、ディープラーニング、人工知能には解決できません。古い諺の「半切れのパンでも、ないよりはまし」は人工知能でも判断できますが、ソロモン王の裁きの「半分の赤ん坊は奪われるよりも悪い」は、人工知能には理解できないわけです。意味を理解しているわけではないのです。

@人間の思考、38億年の進化

右側は、人間の思考ですが、こちらは井筒俊彦さんの『意識と本質』からモデルを拝借いたしました。『表層意識』の部分がシニフィアン、『イマージュ領域』のシニフィエに該当するわけですね。

イマージュから下は深層意識になっていまして、イマージュの配下に『言語アラヤ識』『無意識』『意識のゼロポイント』が控えているわけです。本当に知りたいことは、幾何学的な特徴じゃなくて、この『見えない領域』ですよね。心理学の世界でも、意識と無意識で別れているはずですので、無意識を無視できない存在です。肝心要のところは、よくわからないのです(笑)

引用:https://www.slideshare.net/youichiromiyake/78-98820953

この深層意識で『謎の抽象化』が行われているので、人間は猫と犬の写真を見て、これは『動物』ですねと『抽象化した上位概念』を考えることができるわけです。幾何学的な特徴量から、抽象化への飛躍はちょっと考えにくいのですが、人間はなぜか抽象化して考えることができる。実におもしろいですね。

井筒俊彦さんの本だと、この『言語アラヤ識』の部分で、ライプニッツの『思考のアルファベット』のような究極の単純観念が出てくるわけですね。日本語でいえば『50音』です。表音文字が組み合わさって、イマージュ領域が生成されるわけ感じですね。

単なる音だけではありません。仏教の考えでは、五識(眼識・耳識・鼻識・舌識・身識)が合成されて、イマージュ領域のようなものができると考えるわけですね。ディープラーニングのような幾何学的情報(眼識)だけではなくて、さらに4つのファクターが組み合わさっている。それだけでも大変なのに、『体内時間』という独自の時間概念も考慮しないといけませんから、
複雑過ぎてわけがわからなくなりますね。

引用:https://www.slideshare.net/youichiromiyake/ai-zen

要するに、コンピュータの思考と人間の思考は違う。似ているところもあるけれど、それは眼識程度に過ぎない。38億年かけて進化してきた生命の仕組みは複雑であり、『ドラえもん』とか『アトム』のような汎用人工知能へ至る道は、かなり険しいということです。

そろそろ、過剰な期待のツケがまわってきて、『AIの冬』が訪れた気がします。夫が保有しているNVIDIA 社の株式も急落しています…(´;ω;`) 昨年はビットコインのバブルが弾けましたし、「IT業界は浅はかだねぇ」とぼやきながらIT業界に留まり、一人で楽しい未来を夢想しながら、今日もPRMLの勉強にもくもく励む夫なのでございましたヽ(=´▽`=)ノ

@編集後記

近頃は、ドローンオジサンと認識されるようになってきましたが、本職はネットワークエンジニアです(笑)専門分野は、GSLB(広域負荷分散:Global Server Load Balancingの略)というインターネットを超えてのロードバランシング技術なのですが、一般的には「ネットワークなんて、ケーブルをつなぐだけでしょ?」くらいに思われているので、込み入った説明をする機会はございません。華やなコンサルタントやシステムエンジニアの世界と違って、縁の下の力持ち的な存在です。

ディープラーニングは、脳のニューロンをモデル化した『ニューラルネットワーク』という単純な仕組みが深くなったものだろうという安易な解釈で勉強をはじめました(笑)いきなり微分積分だの、ベクトル・テンソルだの、確率統計だのの数式がダダダッと出てきまして、じつに弱りました。勉強していくうちに、『ニューラル』でも『ネットワーク』でもないことに気づきました(笑)『Layerd Representaion Leaning』くらいに改名してくれたら、誤解を防げると思うのですけどね。


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