コンピュータの頭脳 ~CPUとGPU~
第三次人工知能ブームを加速させているのが「ディープラーニング」ですが、そのディープラーニングを考えるうえでは切っても切り離せない関係にあるのがハードウェアの進歩です。ハードウェアの進歩で有名なのが、「ムーアの法則」です。
ムーアの法則
ムーアの法則は、1965年にゴードン・ムーアが最初に発表しました。彼は、「集積回路上のトランジスタ数が約18か月から2年ごとに倍増する」と予測しました。これにより、コンピュータの性能は飛躍的に向上し、コストは低下するとされていました。初めは予測通りに進んでいましたが、技術的な限界が見えてきた現在、法則の実現には工夫や新しい技術(例:量子コンピュータ)が必要です。
CPUは電子回路からできている
物理学者のリチャード・P・ファインマンは、「すべてのものは原子からできている」という名言を残していますが、CPUは「電子回路」からできています。電子回路とは、電子部品(例えば、トランジスタ)を接続して電気信号を処理、制御、伝送するための回路のことです。電子回路は、デジタルまたはアナログの形式で存在し、様々な電子機器やシステムで使用されます。
コンピュータは、「デジタル」回路の論理ゲート回路を採用しており、AND、OR、NOTなどの論理ゲートを使用して、デジタル信号の処理や演算を行います。「デジタル」という言葉は、情報やデータが2進数(0と1)で表現される形式を指します。デジタル技術は、アナログ技術(連続的な変化を扱う技術)とは異なり、データを離散的な単位で処理します。
コンピュータサイエンスやデジタル回路の基礎となる論理の数学的な体系をブール代数と言います。「心はすべて数学である(津田一郎)」によると、ブールは「神はすべてであるから1、それ以外は0である」と考えて、ブール代数を作ったそうです。なんだかぶっ飛んだ発想を起源としてコンピュータはできているようです。
CPUとGPU
コンピュータにはCPU(Central Processing Unit)とGPU(Graphics Processing Unit)の2つの演算処理装置があります。
CPUはコンピュータ全般の作業を処理する役割を担います。普段、私たちはパソコンやスマホでメールをしたり、音楽を聴いたり、SNSに写真をアップしたりと様々なことを行っています。CPUはこうした種類のタスクを順番に処理ことに長けています。CPUは汎用的な計算が得意です。
一方、GPUはグラフィクスという名前が表している通り、画像処理に関する演算を担います。映像や3DCGをなどを処理する場合は、同一画面に同じ演算を一挙に行うことが求められますので、大規模な並列演算処理が必要になります。GPUは専門化することで大規模で高速な計算ができます。
GPUはもともとは画像処理用の演算を行っていたのですが、最近の第三次人工知能ブームの影響を受けて、画像以外の目的での使用に最適化されたGPUが出てきました。それがGPGPU(General-Purpose computing on GPU)です。
このディープラーニング向けのGPUの開発をリードしているのがNVDIA(エヌビディア)社です。注意してもらいたいのが、GPUのほうがCPUより優れているというわけではないという点です。GPUはCPUのように様々なタスクをこなすことができません。
それでは、CPUとGPUの違いをまとめてみましょう。
CPU
用途:一般的な計算処理、システム管理、アプリケーション実行
コア数:少数(通常は4〜16コア)
処理能力:高いシングルスレッド性能
適用分野:一般的なコンピュータタスク、データベース、オフィスアプリケーション
GPU
用途:グラフィックス描画、並列計算、機械学習
コア数:多数(通常は数百〜数千コア)
処理能力:高いマルチスレッド性能
適用分野:3Dレンダリング、ビデオ処理、科学計算、AIトレーニング
CPUはどこが作っているの?
CPUを作っているメーカーといえば「Intel入っている?」のCMで有名なIntel(インテル)が浮かびますが、その他にも下記のようなメーカーがCPU or GPUを作っています。
Intel[インテル]
AMD(Advanced Micro Devices, Inc.) [エーエムディー]
ARM Ltd. [アーム]
Qualcomm[クアルコム]
Apple Inc. [アップル]
Samsung Electronics [サムスン電子]
Nvidia Corporation [エヌビディア]
Google [グーグル]
2024年8月時点でホットなメーカーは、やはりディープラーニング向けのGPUの開発をリードしているエヌビディアですが、検索エンジンで有名なGoogle社も、テンソル計算処理に最適化された演算処理装置を開発しており、「TPU(Tensor Processing Unit)」と呼んでいます。
また、国産のCPUとしては、富士通が開発した「A64FX」があります。A64FXは、富士通が設計した64ビットARMアーキテクチャのマイクロプロセッサです。このプロセッサは、富士通のスーパーコンピュータ向けプロセッサとして、SPARC64 VIIIfxに代わるものであり、スーパーコンピュータ「富岳」に搭載されています。また、富士通はA64FXを搭載したHPC向けのコンピュータであるPRIMEHPCシリーズも販売しています。
以上、CPUとGPUについて簡単にまとめてみました。昔は、パソコンを自作で組み立てたりして、CPUとかメモリとかは身近な存在だったのですが、いまは完成されたコンピュータが届くので、ものが忘れられているように感じます。もう一度原点に戻り、物理的な「もの」から世界を見つめなおすきっかけになれば幸いです。多謝。
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