インターネットの「見える化」?
拝啓 奥さんへ
結論からいうと、インターネットの全体を見ることはできません。あまりにも巨大で複雑なネットワークであり、静的ではなく動的なネットワークなので、人間の能力ではとても認知することができません。でも、人間には部分から全体を推測する想像力があり、事実を明らかにする理性があり、見えない世界に対する好奇心があります。それらを総動員して、見えない世界であるインターネットの「見える化」を行ってみたいと思います。
「ネットワーク」の「ネットワーク」
インターネットは「ネットワーク」の「ネットワーク」です。世界中のコンピュータやネットワークが互いに接続され、情報をやり取りするための巨大な通信網です。このネットワークは、電話回線や光ファイバー、無線通信などの物理的なインフラを通じて、データが送受信される仕組みになっています。ここでは、部分から全体を推測するアプローチを取り、身近なネットワークである、LAN(ローカルエリアネットワーク)から理解を深めていきましょう。
LAN(ローカルエリアネットワーク)
LANとは、Local Area Network(ローカル エリア ネットワーク)のことです。ローカルエリアとは、会社や学校、家などの閉じられた場所のことです。LANとは、そのような閉じられた場所にあるパソコンなどがつながったネットワークのことです。パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレット、テレビなどの家電もつなぐことができるようになっています。
「ネットワーク」とは、パソコン、スマホなどの通信端末や各種サーバーの間をつなぎ、情報の伝送を行うための通信設備のことであり、通信回線と通信機器から構成されます。ネットワークは、以下のような要素によって構成されます。
通信媒体:デバイス間でデータを送受信するための物理的な経路(LANケーブルや無線など)。
ネットワーク機器: ルータ、スイッチ、ハブなど、データの送受信や経路設定を行う機器。
プロトコル: データ通信の規則や手順を定めたもの。例えば、TCP/IPやHTTPなどがあります。
LANには大きく分けて、「有線LAN」と「無線LAN」があります。
インターネットに接続するプロバイダ(ISP)
LANなどを使ってパソコンなどをインターネットに接続するためには、プロバイダ(ISP:Internet Service Provider:インターネット サービス プロバイダ)などに接続する必要があります。LANとプロバイダの間は、光ファイバーなどの専用回線でつながっています。また、LANをプロバイダ(例:NTT西日本:フレッツ光)に接続するために、「ルータ」という機械を家や学校、会社などに置きます。
プロバイダのネットワーク(例:SINET)
プロバイダのネットワークは、通常、ブラックボックス(または企業秘密)になっています。そのため、一般の人はインターネットにどのようにつながっているのかをイメージすることができません。
※Tracerouteコマンド等である程度推測することは可能です。
ここでは、学術情報ネットワーク(SINET)を見ることによって、プロバイダのネットワークがどのようにつながっているのかを見てみましょう。
学術情報ネットワーク(SINET)は、日本全国の大学、研究機関等の学術情報基盤として、国立情報学研究所(NII)が構築、運用している情報通信ネットワークです。教育・研究に携わる数多くの人々のコミュニティ形成を支援し、多岐にわたる学術情報の流通促進を図るため、全国にノード(ネットワークの接続拠点)を設置し、大学、研究機関等に対して先進的なネットワークを提供しています。※SINET: Science Information NETwork (サイネット)
2022年4月からは、従来の学術情報基盤であるSINET5を発展させたSINET6の本格運用を開始しています。世界最高水準の 400Gbps回線ネットワークで有機的につなぎ、約1000機関に及ぶ大学・研究機関等にハイレベルな学術情報基盤を提供しています。下記がSINETのネットワークです。
SINETを利用するにはいくつかの接続形態がありますが、主たる接続形態は接続拠点(ノード)に専用回線で接続する方法です。ノードは全国 70 ヶ所のデータセンタ(DC)に設置されています。回線業者に対し、DCへの回線引き込みが可能であることを確認し、接続のインターフェース(例:400GBASE-FR4)接続の準備ができたら、ノードまでアクセス回線を用意してもらいます。これで組織(LAN)→SINET(ISP)→Internet がつながります。
インターネットのルーティングプロトコル(BGP)
いままでは物理的な接続を見てきましたが、相互通信を行うインターネットを使った通信では、通信を行うパケットのあて先を正確に把握し、維持していく必要があります。この、パケットの宛先を正確に把握し、維持していくための技術を「経路制御」と言い、経路制御を行うためのプロトコルを「経路制御プロトコル」と呼びます。
経路制御プロトコルの分類方法はいくつかありますが、制御しようとする経路の対象範囲によって、EGP(Exterior Gateway Protocol)、IGP(Interior Gateway Protocol)の二つに大別することができます。EGPはインターネット上で組織間の経路情報をやり取りする経路制御プロトコルであり、BGP(Border Gateway Protocol)はEGPに分類されます。BGPでは経路制御を行う組織ごとにインターネットの世界で唯一の番号が割り当てられ、個々の経路を識別します。このインターネットの世界で唯一の番号をAS(Autonomous System)番号と呼びます。詳細は割愛しますが、ざっくりASがなんらかの組織ネットワーク、BGPがインターネットで通信するための仕組み(組織ネットワークと組織ネットワークをつなげるもの)くらいで覚えてください。
世界につながるインターネット
いまでは当たり前のように思われていますが、インターネットは世界中につながりを広げています。日本国内であればSINETでみたように光ファイバー網を敷設して、ネットワークをつなげれば通信できるようなイメージが湧きますが、海外につなげるにはどうすれば良いでしょうか?ここで登場するのが「海底ケーブル」です。
海底ケーブルとは、海底に敷設されるケーブルで、主に国際的な通信やインターネットのデータ転送に使用されます。これらのケーブルは、地理的に離れた大陸間や島々を結び、膨大な量のデータを高速で伝送する役割を果たしています。下記の「Submarine Cable Map」は、海底ケーブルがどのように地球上に張り巡らされているかを視覚的に知ることができるネットサービスです。
ここまででもお腹いっぱいだと思いますが、これ以外にも「無線通信」「移動通信」「衛星通信」などインターネットを構成する要素はまだまだあります。インターネットの「見える化」はできませんでしたが、その一部でも垣間見ることで、インターネットに興味を持って頂ければ幸いです。多謝。
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