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全武器を扱うということ、そこから見える世界。

クエストごとに毎回違う武器を担いでいると「なんでも使えて凄いね」と言われることが多々ある。逆に私からしたら、たった1つの武器で全部のクエストをこなせる人たちのほうが何倍も凄いと思う。

私は、モンハンデビューした2ndG当初から、どのタイトルでも全ての武器種を使っている。使いこなせているかと言われると必ずしもそうではないが、少なくとも使わない武器はない。基本的にあるものは全部触る。
もちろん、使う武器種を絞れば、今よりもっと上手に立ち回れるだろうということは自分自身も体感的には分かってはいるし、その点においても単武器種使いが多武器種使いに対して抱いているであろう疑問、すなわち「すべてが器用貧乏になってしまうのになぜ?」とか「武器への愛着はないのか」といった疑問も十分に理解できるものだ。

単武器種使いは日常的に、特定の武器への愛を語ったり特定の武器を布教するムーブメントを積極的に行う印象にあり、その行動原理も分かりやすいが、多武器種使いが「たくさんの武器を使うのはたのしいです」「みんなもたくさんの武器を使ってみよう」という旨の発信をする機会はそうそうない、だいたいそういうクラスタとして一括りにまとまっているわけではない。そこで今回のコラムでは、多武器種使いの一人として、そのような選択を取っている理由や背景、そして多くの武器を使えるようになって初めて気付く楽しみ方やメリットについて、書いてゆこうと思う。



武器の選択は「手段」にすぎない

多武器種使いと単武器種使いの決定的な違いのひとつは、武器種のカテゴリを「手段」と見ているか「役職」と見ているかであろう。私は、これまでの自分自身のアクションゲーム観から、その延長として、モンハンにおける武器選びを「手段」であると捉えている。

私が人生で初めて遊んだアクションゲームは「ラチェット&クランク2」。小学生のときにPS2で発売されていたタイトルである。1人用のアクションゲームで、ガラメカと呼ばれる武器を駆使しながら、ステージ上に登場する敵のキャラクターをひたすら倒しながら進んでいく。ガラメカは全部で20種類から30種類ほどあり、ほとんどが遠距離武器。ステージは多少入り組んでいたり複雑な地形もあるものの、概ね一本道で、最後まで到達するとボスと戦ったりストーリーが進展するなどして、次のステージへ向かう仕組みだ。

ラチェット&クランクシリーズの攻略性のうちのひとつは「ステージの地形や敵にあわせて、柔軟に武器を使い分けていくこと」にある。プレイ中は△ボタンを長押しすることで、ゲーム内の時間を止めたまま、いつでも好きなタイミングでガラメカを切り替えることができる。ステージへの持ち込み武器数に制限はない。同時切り替え要素のあるシューティングジャンルの他のゲームと比べても、その選択肢はかなり多い。

狭くて閉じた空間に敵が密集しているポイントでは、高威力で広範囲に爆発が及ぶ武器を使い、弱い敵に周りを取り囲まれた時には、攻撃の出が早くて至近距離の戦闘に特化した武器を使う。たくさんの個性あふれるガラメカの中から、その局面にぴったりの武器を次々と選択しながらゲームを進めてゆく。シリーズ作品を何本も遊んでいくうちに「敵の特性に合わせて、もっともコストの少ない戦い方を選択する」というアクションゲーム観が自然と身に付いていった。のちに遊ぶことになるモンハンでも、それは例外ではなかった。


もっともラクな戦い方を選ぶ

モンハンは「武器種を選択すること」自体には特にゲームとしてコンセプトは持たせていない。とりあえず1本使えれば十分だ。モンスターごとに記号性としての正解の武器種が用意されているわけでもない。何本も使いたければ勝手に使えばいいだけの話だ。しかしそれでも、「戦いやすさ」としてのモンスターと武器種の相性は、ある。
例えばマムタロト。大剣の難易度を10としたときヘビィの難易度は100くらいある(主観)

使う武器をひとつに絞ると、難易度10で戦える相手もいれば、難易度が80、90、100と跳ね上がってしまうモンスターもたくさんいる。武器種の習得にかかる初期コストは低くても、全部のモンスターを爽快に遊べるようになるまでは、かなり時間がかかってしまう。最悪の場合、どう足掻いても「爽快に遊べない」モンスターも出てくるかもしれない。潜在的な楽しいコンテンツを自ら潰してしまうのは不本意で、私にはそれは出来なかった。

逆に使える武器の択が多いとどうなるか。武器種の習得にかかる初期コストこそ増してしまうものの、モンスターごとに「難易度10で遊べる武器を選んで遊ぶ」ことができる。長期的な目で見ると、最小の労力で最大の楽しさを摂取できるのだ。シリーズを通して登場モンスターが増えることはあっても、新しい武器種が増えることはそうそうない。冒頭で書いた『たった1つの武器で全部のクエストをこなせる人たちのほうが何倍も凄いと思う』というのは概ねこのような理由である。

具体的に私の場合、ディノバルド亜種にはランス、ベリオロスにはハンマー、紅蓮バゼルには弓…というように、どのモンスターに何を担ぐかはある程度決まっている。初見のモンスターであっても、この武器なら相性よさそうだなというのはだいたい感覚で分かる。難易度に物足りなくなったら、そのとき初めて、ちょっと難しめの相性の武器に持ち替えて挑戦してみる。次第に1体のモンスターに対して使える武器種もどんどん増えてゆく。


全武器を使うと見えてくるもの(シリーズ全般)

複数の武器を扱う人のほとんどは、このような経験があるだろう。

あるモンスターと戦うときに、武器種Aでなかなか上手く立ち回れなかったが、何回か武器種Bでそのモンスターと戦ってから再び武器種Aに持ち替えると、なぜかすんなり狩れるようになった。

これは音ゲーなどによく見られるようないわゆる放置効果の類ではない。ひとつの武器だけを使っていると気が付きにくいことに、比較的短時間で気付けるというニュアンスだ。

武器種によってモンスターとの間合いの取り方は異なる。同じ近接武器でも大剣は双剣より少し遠くにいるし、遠距離武器になってくると、さらにモンスターから離れて戦うことになる。距離の違いにより、被弾しやすい攻撃・被弾しにくい攻撃というものもあるし、特定の距離でだけ位置取り回避できる安全地帯が存在するかもしれない。距離の違いで誘発する・誘発できるモンスターの行動が変わってくるかもしれない。ガード機能で攻撃の当たり判定の瞬間を覚えて、ガードなしの武器でのフレーム回避に応用することもできる。

上手い人ならば、ひとつの武器だけを使っていてもモンスターの挙動を完全に見極められるかもしれない。しかし我々普通のハンターにそれは難しい。そこで手っ取り早いのが「いったん別の武器種を使ってみる」というやり方だ。別の武器を担いで狩るだけで、それはもう意識しようがしまいが「モンスターを多角的に観ている」ことになる。武器種Aと武器種Bで全く同じ動きは出来ないからだ。モンスターを多角的に観ることが出来れば、あの行動のここの部分でこの攻撃を差し込めそう、とか、そういう発想が自然と出てくるのである。


全武器を使うと見えてくるもの(MHW:I)

今作はクラッチクローやスリンガー周りの新機能の導入により、以前にも増して「味方の使っている武器を考慮したパーティー連携」が重要となった。
例えば傷付けひとつをとってみても考えるべきことは山ほどある。入手したスリンガー弾の実用性も武器によって違う。細かい重みづけの差異は実際にその武器を使ってみないと分からないことも多く、そういった知識のあるなしだけでもPT火力は大きく変動する。

いくつか例を挙げてみよう。


・大剣はスリンガー弾を使った強化撃ちで、強溜めやタックルを挟まずにいきなり真溜めが繰り出せるため、スリンガーの拾えないエリアでスリンガー弾を排出してもらえると火力が大幅に上がる。大剣は1回傷付け武器であるため、自分ではスリンガー弾は排出できない。

・双剣は通常クラッチでは2回組に分類されるが、低位置部位ならば平時の攻撃から火力をほぼ落とすことなく1回傷付け(特殊クラッチ)も可能で、スリンガー弾を排出するタイミングを任意で調整することができる(つまり傷付けのためだけに序盤からスリンガー弾をぼろぼろ落として終盤の必要な時に排出できない、という事案を回避しやすい)

・ハンマーは溜め攻撃から直接クラッチ張り付きに派生でき、攻撃やスタン値を溜める行動の一環としてクラッチする場合も多い。他人とクラッチがかち合って振り落とされると納刀状態となり、力溜め状態が解除されてしまう。ハンマーがクラッチに積極的である場合は、頭は完全に任せてもよい。

・チャージアックスはクエスト序盤の火力の立ち上がりが遅く(ビンを貯めて盾/剣/斧を強化したりする)、傷付けモーションも遅いうえに、傷付け後は斧モードになる(戦術によっては嬉しくない)ため、1回傷付け武器とはいえクエスト開幕直後に傷付けするコストはかなり高い。

こういった事例が、ここには書ききれないほど武器種ごとにいくつも存在する。一概に、1回傷付け武器が傷を付けて、2回武器はクラッチ機能など使わなくて良い、という二元的な問題でないことがわかるだろう。同じ武器であってさえも、他のメンバーの武器種構成によっては、率先してクラッチすべきであったり、あるいは逆に攻撃に専念したほうがよい場面も出てくる。使ったことがある武器ならば、そういう判断が自然と出来る。


サブウェポンを1本増やして狩りのQOLを上げよう

多くの武器を扱うメリットは「モンスターの行動を多角的に観察する視点を養うということ」そして「他人の行動に気を配り、パーティー全体の火力の底上げに貢献できること」の大きく2点。
そして、ここまでの話で「ある武器を上手く扱えるかどうか」はほとんど関係がない。たくさん使うからといって、全部上手くならなきゃと焦ることもない。

特定の武器種は推さない。1本使う人は2本目を、2本使う人は3本目を。
新しい挑戦を初めてみませんか。

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