写真を誉められた日。

体育祭がある。体育祭が近づいてくると、クラスメイトはもちろん他クラスの、特にインスタグラムをやっている生徒を中心として誰か写真を撮ってほしいなんて言葉が飛び交う。

体育祭前日のインスタグラムのストーリーなんて誰か取ってくれますか?なんて言葉とそれに付随したアンケート機能だらけだ。

僕は写真を撮るのが好きで写真部に入った。でも人をとるのは元々苦手で、だから風景に没頭していた。いい機会だと思い、写真を撮ってくれますか?のアンケートに「はい」と答えた。

2、3人のアンケートにはいと答えた気がする。その中の一人に、いつも僕が登校する写真に♡をつけてくれる人がいた。ふと気になったので、その人にDMでいつもいいねしてくださってありがとうございます。と簡単に感謝をつづった。誰かからのいいねは単純に励みになるし、うれしい。だからこそいつもいいねしてくれるその方は僕にとって貴重だったし、とてもありがたかった。

返ってきた返事。要約するときれいな写真で尊敬します的なことだった。

本当にうれしかった。自己肯定感が低い僕からしたら他人からの評価というのは絶対だ。そのためそういう風にほめられると単純にテンションが上がるし、今後の活動に絶対的な影響を及ぼす。実際、そのDMのやり取りの後僕は写真をもっと頑張ろうと心に決めたし少なからずの影響があったことは間違いない。

写真は趣味程度に撮るだけだった。

元々写真を始めた、カメラを持ち始めたきっかけは友人の祖父にある。   友人の祖父は写真家で、色々な縁でその友人の実家に遊びに行ったときに出会った。最初の印象はすごくきれいな写真を撮るなぁみたいな幼稚園生みたいな感想だったと思う。その当時の僕は写真に興味がなかったし、撮られることに苦手意識があった。

というのも学校の行事等でイベントに帯同するカメラマンさんに撮っていただいた写真の僕はどうも写真写りが悪く、きれいに映らなければどこか不機嫌!みたいな感じで撮られることが多かった。そんなことないのに。

友人祖父は僕をいろんなところに連れて行ってくれた。ここでは伏せるが、その土地の有名なお城、有名な食事、または隣の県の有名な食べもの。

本当にいろいろなところに連れて行ってくれた。でも、写真家だから絶対に写真を撮られる。最初は写真写り悪いんだよなぁ...と思いながらもとってもらってた。でも出来上がった写真を見て本当に驚いた。

あれだけ写真写りが悪かった僕の笑顔がきれいに撮られている。

これが僕が写真に興味を持ったきっかけである。どう撮られるかももちろん重要だが、一番重要なのは誰に撮られるかだということが身にしみてわかった。

残念ながらその友人祖父は亡くなってしまった。お通夜に参列した際に四枚の写真をいただいた。

それぞれ春夏秋冬を表した写真。見ているだけで撮っているときの周りの情景まで浮かび上がってくるような本当に繊細な写真だった。

これが写真を始めようと思ったきっかけ。

人に影響されて始めたと言ったらそれまでだが、僕は今では本当に写真が好きになった。カメラも親のおさがりから自分で買ったものに変えたし。

でもやっぱり写真を誉められたことはまだなかった。もちろん親や祖母がほめてくれたことはあった。でも本当に赤の他人に褒められることは少なかった。確か担任と副担任がほめてくれたこともあっただろう。でも別のクラスの生徒、それに話したこともない人。そんな人がほめてくれた。

ものすごくいい経験になったと思う。この経験はきっといつか一人で思い出してにやにやするタイプ。

これからももっといろんな写真を撮っていこうと感じた夜更け。


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