デザインアワード のすすめ ~世界のデザイン賞の特徴と難易度~
つながりのある空間デザイナーさんから、海外のデザインアワードのことを教えてほしいと連絡をいただくことが最近多くなりましたので、僭越ながら参考になればと思い、こちらに書かせて頂きます。
建築設計・空間デザインスタジオである弊社KTXアーキラボは2009年から、国内のデザインアワードに、2013年から海外のデザインアワードに応募を始め、これまで15ヵ国150タイトル(2020年5月現在)のデザインアワードを受賞してきました。
弊社の受賞歴はこちら
【弊社獲得デザインアワード一覧】
現在はイタリア・中国・韓国・アゼルバイジャン・アメリカ・日本など、各国のデザインアワードの審査員を務めております。
弊社がアワードに挑戦する理由は、自らのマーケティングのためです。
以前、東京のクライアントから、兵庫県姫路市という田舎にあるデザイン事務所へ設計を依頼することに対して、実は最初抵抗をおぼえたと言われ、自らのマーケットを広げるためには、地方にあっても確かなデザイン力があるということを、「客観的なエビデンス」と共に示す必要がある、と感じたことがきっかけでした。
デザインアワードはデザインビジネスの本質を客観的に評価する指標として、加点法で貯めていけるものであると思います。獲れれば効率の良い広告になります。デザインビジネスにとって、アワードはマーケティングサービス、そういう観点でデザインアワードを見るなら、拡散能力が高く、費用対効果の高いアワードが我々デザイナーにとっては良いアワード、ということになると思います。
アワードを受賞することにより実感したメリットとしては、受賞が増えるにつれ、デザインへの信頼度が増し、ほとんどのプロジェクトにおいて、デザインを完全にお任せして頂けるようになったことです。最近は予算などの制約の範囲であれば、どんなデザインでも自由にやってほしい、と依頼されることがほとんどです。デザインの自由度が高くなることにより、独自性のあるクオリティの高いデザインを提供できるようになり、その結果、また次回の受賞に結び付くという、良いスパイラルの中で仕事をさせて頂いています。
受賞はクライアントにとっても、話題を提供するという面でメリットがあると思います。今はSNSですぐに情報が拡散されるので、話題の拡散による宣伝効果があります。また、クライアント企業の社内的なモチベーションアップの一助にもなり得るのではないかと思います。
そのほかにもデザイナーとしては、アワード受賞により様々なメリットを享受します。各アワードごとのメリット・デメリットや必要な費用などは、また次の機会に書かせて頂きます。
■海外デザインアワード10選リンク
ネームバリューの高いもの、比較的出品しやすいものなど10のデザインアワードをご紹介します。
① ■イタリアA' DESIGN AWARD
松本が審査員を務める、世界最大規模の国際デザインアワード。世界最大級ということで、応募数も多いが受賞者も多い。上位タイトルはプラチナ賞からブロンズ賞まで、上位タイトルを獲得するには一定のクオリティを要するが、一般多数のWinnerを獲得するのは比較的容易。企業名で応募すると登録料がかなり高くなるので、デザイナー個人名での応募がおすすめ。授賞式は素晴らしいロケーションを有するイタリアのリゾート地、コモ湖のほとりにある歴史的な宮廷で行われ、出席者のドレスコードはタキシード・カクテルドレス、という格式高い雰囲気。インパクトのある授賞式の写真が撮れるので広告効果も高い。徒歩圏内にファシズム合理主義建築カサデルファッショがあるので建築関係者は必見。
他のアワードと比べて受賞作品のメディアへの露出度がかなり高く、受賞者が受け取るキットも充実しており、受賞後のメリットが非常に大きいと感じる。
A'デザインアワード授賞式の様子はコチラのブログに紹介しています
② ■WAF(ワールドアーキテクチャーフェスティバル) & INSIDE(インサイド)
建築誌「AR アーキテクチャーレビュー」や「AJ アーキテクトジャーナル」を出版する emap が主催する建築(WAF)と空間デザイン(INSIDE)のデザインアワード。2年ごとに決勝の舞台は世界を転々とし、今年と昨年はアムステルダム、一昨年と4年前はベルリン、その前はシンガポールで行われた。オンライン審査を経て、各カテゴリー数組の決勝進出者が選ばれる。決勝戦は審査員の前でライブプレゼンテーションを行い、その年の世界一のデザインを決めるというもの。おそらく世界で一番エキサイティングな建築・空間デザインアワードではないかと思う。決勝に参加するファイナリストにはザハハディドやBIG、ネリ&フー、OMA、MVRDV、へザウィック、日本からは日建設計などなど、超有名な建築設計事務所が名を連ねる。決勝に進出すれば、そんな建築界のスター達のプレゼンを目の前で見れるだけでなく、自らも同じステージでプレゼンし、彼らと肩を並べて戦うことができる。ピータークックやフォスターなど世界的スターキテクトが普通に会場を歩いていて声をかければ気さくに話してくれ、自分の作品への意見を聞けるという、建築・空間デザイナーには夢のような場所。渡航費、滞在費、入場料など、かなり費用はかかるが、それに見合う経験を得られる。プレゼンの動画を記録しておけばSNS用の広告としても使い勝手が良い。
弊社は2014、2015、2017、2018、2019年の5回に渡り決勝に進出し、2019年カテゴリー優勝を果たした。また、2020年リスボン大会では松本が日本人唯一の審査員を務める。
決勝戦プレゼンテーションがWAF公式チャンネルにて公開されています
③ ■iFデザインアワード(ドイツ)
世界三大デザインアワードの一つと言われる。受賞難易度は高い。受賞した場合の受賞料(受賞者に選ばれると盾などの受賞キットを受け取るために支払う費用。決して賞をお金で買えるわけではない)が1600ユーロ(現在のレートで約19万円)とかなり高かったので、弊社は一度受賞した後、応募していない。。。有名なアワードなのでネームバリューは高い。(一般的にほとんどのデザインアワードにおいて受賞料というものは不要だが、ドイツのデザインアワードは受賞料が必要なものが多い)
弊社は2018年に受賞。
(ウィキペディアより抜粋)
iFデザイン賞は、“デザイン界におけるオスカー賞”を自称し、世界的に最も権威のあるデザイン賞の一つ。ドイツ・ハノーファーを拠点とする、デザイン振興のための国際的な組織インダストリー・フォーラム・デザイン・ハノーファーが1953年から主催し、毎年全世界の工業製品等を対象に優れたデザインを選定する。
④ ■Red Dot Award(ドイツ)
ドイツ、エッセンのDesign Zentrum Nordrhein Westfalen(ノルトライン=ヴェストファーレンデザインセンター)が主催する国際的なプロダクトデザイン賞。プロダクトデザイン、デザインエージェンシー、デザインコンセプトのジャンルにおいて賞が存在する。1955年に創設されたこの賞はデザイナーと製造業者に応募資格があり、受賞者は年に1回開催されるセレモニー (Ceremony) で賞を授与される。受賞プロダクトはエッセンの歴史的なツォルフェアアイン炭鉱業遺産群の構内にある「レッド・ドット・デザイン・ミュージアム」に展示される。
こちらも世界3大デザインアワードのひとつでハイレベル。受賞難易度は高い。iFデザインアワード同様、受賞料が高額。ジャーマンデザインアワードやICONICデザインアワードなど、ドイツのメジャーなデザインアワードは全体的に受賞料が高い傾向にあるので、弊社は最近応募していない。しかし iF同様ネームバリューは非常に高い。
弊社は2017年に受賞。
⑤ ■GOOD DESIGN AWARD(アメリカ)
1950年創設で同様の賞の中でも非常に長い歴史があり、世界的に認知されている。日本のグッドデザイン賞とは無関係。ドイツのiF、Red Dotと並んで世界3大デザインアワードと言われる。こちらも受賞難易度はやや高め。
弊社は2017年と2019年に受賞。
⑥ ■DFA Design for Asia Awards(香港)
上記世界3大デザインアワードに比べると難易度は下がるが、アジアのデザインアワードの中では比較的レベルの高いデザインアワード。建築・空間デザインだけでなく様々なデザインを対象としたアワード。弊社が初めて応募した海外のデザインアワードがこの DFA。授賞式は香港で行われる。
弊社は2013年Merit Recognition、2014年シルバーアワード、2017年ブロンズアワード、2019年Merit Recognitionを受賞。
⑦ ■APIDA(香港)
HKIDA(Hong Kong Interior Design Association)が運営する、こちらも香港のデザインアワード。空間デザインに対象は絞られる。アジアの空間デザインアワードの中ではレベルが高い。月刊商店建築など日本のメジャーなメディアも受賞者をとりあげるので、アジアのデザインアワードの中でも受賞のメリットは比較的大きい。日本からの受賞者も多い。
弊社は2014年Excellence、2017年Winner、2018年Winner、2019年銀賞を受賞。
⑧ ■FRAME AWARDS(オランダ)
世界で最も権威のある空間デザイン誌のひとつ、オランダのFRAMEが主催する空間デザインアワード。オンライン審査を勝ち抜き、決勝に残った各カテゴリー数組のファイナリストがアムステルダムで行われる決勝戦にてプレゼンテーションを行う。
弊社は2014、2019、2020年の三度に渡りファイナリストとして決勝に臨んだが優勝経験は無い。
⑨ ■ASIA DESIGN PRIZE(韓国)
韓国のデザインポータルサイトDESIGNSORIが運営するデザインアワード。様々なカテゴリーのデザインを広く公募し、学生の作品も応募可能。2018年に弊社松本が審査員長を務め、以降も審査員を務めている。昨年はカリム・ラシドが審査員長、今年は大阪芸術大学デザイン学科長高橋善丸教授が審査員長を務めた。難易度的にもやや敷居が低く、授賞式もソウルで行われるため参加しやすい。初めての海外デザインアワード挑戦には最適。日本からの受賞者も多い。
⑩ ■Sky Design Awards
昨年2019年、香港・日本を拠点とし、メルシーマガジン社によって創設された、建築、インテリア、ビジュアル、インダストリアルデザインを対象としたアワード。2020年からカナダも参加し、3カ国を拠点とする。アワードを通じて、デザイナーと事業者とのマッチングを試みるので勝者のメリットは高い。
弊社は第一回となる昨年、金賞を受賞し、本年は松本が審査員を務める。
以上10アワードの紹介でした。
以下は弊社がこれまで獲得したアワードの一覧です。それぞれのアワードの特徴、メリット・デメリットや費用などはまた次の機会にご紹介します。
■ 2020年
118 DNA PARIS DESIGN AWARDS WINNER(フランス)
117 EURASIAN PRIZE(ロシア)
116 IDEA-TOP Design Award FINALIST(中国)
115 A’DESIGN AWARD PLATINUM,GOLD AND BRONZE(イタリア)3作品
112 Muse Design Awards GOLD WINNER(USA)
111 FRAME Awards FINALIST(オランダ)
■ 2019年
110 Urban Design & Architecture Design Awards FIRST AWARD(USA)
109 IDA Design Awards SILVER WINNER(USA)
108 A&D Trophy Award EXCELLENCE AWARD(香港)
107 Archilovers Best Projects of the Year(イタリア)
106 LIT Lighting Design Award WINNER(USA)
105 LIT Lighting Design Award Honorable Mention(USA)
104 GOOD DESIGN AWARD Winner(USA)
103 IIDA Global Excellence Award WINNER(USA)
102 APIDA SILVER MEDAL(香港)
101 Design for Asia Awards MERIT AWARD(香港)
100 日本空間デザイン賞 BEST100(日本)
099 WAF World Architecture Festival FINALIST(イギリス)2部門
097 INSIDE festival WINNER(イギリス)
096 London International Creative Competition HONORABLE MENTION(イギリス)
095 A’DESIGN AWARD GOLD×2 AND BRONZE(イタリア)3作品
092 Muse Design Awards PLATINUM×2/GOLD×1(USA)3作品
089 Le Prix de Genève pour l'expérimentation architecturale FINALIST(スイス)
088 FX DESIGN AWARDS WINNER(イギリス)
087 ARCHITECTURE MASTER PRIZE WINNER(USA)
086 NOVUM design Award GOLD WINNER/SUSTAINABLE DESIGN OF THE YEAR(フランス)2部門
084 Sky Design Award GOLD WINNER(香港・日本・カナダ合同)
083 ABB LEAF AWARDS FINALIST(イギリス)
082 Architizer award FINALIST(アメリカ)
081 ArchDaily Building of the Year Awards FINALIST(アメリカ)
■ 2018年
080 London International Creative Competition HONORABLE MENTION(イギリス)
079 WAF World Architecture Festival FINALIST(イギリス)
078 INSIDE festival FINALIST(イギリス)
077 AICA施工事例コンテスト 入選(日本)3作品
074 Interior Design Best of Year Honoree 2018(USA)
073 APIDA WINNER(香港)
072 FRAME Awards FINALIST(オランダ)
071 ARCHITECTURE MASTER PRIZE (USA)3作品
068 ABB LEAF AWARD FINALIST(イギリス)2作品
066 グッドデザイン賞(日本)2作品
064 JCD INTERNATIONAL DESIGN AWARDS BEST100(日本)2作品
062 A’DESIGN AWARDS GOLD×2 AND BRONZE (イタリア)3作品
059 INTERNATIONAL ARCHITECTURE AWARDS(アメリカ)
058 JCD INTERNATIONAL DESIGN AWARDS GOLD WINNER(日本)
057 GOOD DESIGN AWARD (オーストラリア)
056 iF DESIGN AWARD 2018 (ドイツ)
■ 2017年
055 JCD INTERNATIONAL DESIGN AWARDS BEST100(日本)
054 WAF World Architecture Festival FINALIST(イギリス)2部門
053 INSIDE festival FINALIST(イギリス)
052 A&D TROPHY AWARDS 2017(香港)
051 IIDA Global Excellence Award Winner(USA)
050 Interior Design Best of Year Honoree(USA)
049 Nichiha Siding Design Contest 2017(日本)
048 GOOD DESIGN 2017(USA)
047 DESIGN FOR ASIA AWARDS BRONZE AWARD(香港)
046 APIDA Winner(香港)
045 SPARK GOLD WINNER(USA)
044 AMERICAN ARCHITECTURE PRIZE (USA)
043 IIDA BEST OF ASIA PACIFIC DESIGN AWARD(USA)
042 LIXIL front contest GOLD WINNER(日本)
041 IDEA International Design Excellence Awards FINALIST (USA)
040 Red Dot Design Award (ドイツ)
039 ICONIC AWARD Winner (ドイツ)
038 THE PLAN AWARD FINALIST(イタリア)
037 A’Design Awards Platinum,Gold and Silver (イタリア)3作品
034 日経新聞社 SHOP DESIGN AWARD 優秀賞 (日本)
■ 2016年
033 IDA International Design Award SILVER AWARD (USA)
032 A’design award GOLD AWARD (イタリア)
031 K’design award GOLD AWARD・ WINNER(韓国)2作品
029 German Design Awards Winner(ドイツ)
■ 2015年
028 IIDA Global Excellence Award (USA)
027 The Grate Indoors Finalist (オランダ)
026 姫路市都市景観賞 特別賞 (日本)×2作品
024 JCD Design Award Best100 (日本)
023 グッドデザイン賞 2015 (日本)
022 Iconic Awards Winner(ドイツ)
021 INSIDE festival Finalist(イギリス)
020 A’Design Awards GOLD AWARD(イタリア)
■ 2014年
019 IIDA Global Excellence Award (アメリカ)
018 Design for Asia Awards Silver Award (香港)
017 INSIDE Award Finalist (イギリス)
016 World Interior News Award Finalist (イギリス)
015 IIDA Best of Asia Pacific Honorable Mention (USA)
014 APIDA EXCELLENCE (香港)
013 A&D Trophy Awards EXCELLENCE (香港)
012 Interior Design’s Best of Year Honoree (USA)
011 JCD Design Award BEST100 (日本)
■ 2013年
010 Design For Asia Award Merit Recognicion(香港)
009 JCD Design Award BEST100 (日本)
■ 2012年
008 JCD Design Award BEST100 (日本)
007 17th CS Design Award Nakagawa Chemical Award (日本)
006 アイカ コンテスト (日本)
■ 2011年
005 JCD Design Award BEST100 (日本)
■ 2010年
004 JCD Design Award BEST100(日本)×2作品
■ 2009年
002 BEST STORE OF THE YEAR (日本)×2作品
海外部門 優秀賞
飲食業部門 優秀賞
【この記事を書いた人 松本 哲哉】
KTXアーキラボ 代表・一級建築士・大阪芸術大学非常勤講師
2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界8位(日本国内1位)