目先のコストにこだわるDX推進はNG
事例で読み解く「間違いだらけ」のDX、第10回は「目先のコストにこだわってしまう」という事例を紹介します。
DX推進=ツール導入という発想はNGであることを、前回までの記事で繰り返しお伝えしてきました。
しかし、結果としてツールの導入が必要になるケースは出てくるでしょう。
その際、目先のコストに囚われてしまうあまり、DX推進の方向性を見誤ってしまうことのないよう注意が必要です。
このマガジンでは、さまざまな事例から「間違いだらけ」のDXを読み解いていきます。
自社に当てはまる事例がないか、DXの認識にずれがないか、チェックする上で役立つでしょう。
ぜひ参考にしてください。
本日の事例
Rシステム社の担当者に信頼を寄せた吉田係長は、AIが搭載されているというCRMツールの導入に前向きになっています。
(前回のエピソードはこちら↓)
ここで、Rシステム開発の担当者から「甘い誘い」を受けることになります。
果たして、吉田係長はどのような判断を下すのでしょうか。
事例の解説
CRMツールの導入に乗じて、クラウドPBXも売り込んできたRシステム開発。
吉田係長は、やすやすと術中にはまってしまいました。
そもそも吉田係長は、岩崎役員に反対された前回の提案内容は間違っていなかったと考えています。
提案内容に問題があるのではなく、提案の仕方に課題があると思っているのです。
そのため、導入コストがクリアできれば提案が通りやすくはずだと錯覚してしまいました。
ちなみに、ベンダーが複数のシステムを同時に提案してくるケースは決してめずらしくありません。
ベンダーへの依存度が高まれば高まるほど、ベンダーと付き合い続けていかざるを得ない状況になっていくからです。
CRMは顧客情報、クラウドPBXは通信インフラに関わる重要な仕組み。
一度導入したら、別のシステムへの入れ替えにはコストも労力もかかるでしょう。
加賀さんが疑問視しているように、初期費用が高い・安いという目先のコストで判断すべき問題ではないのです。
事例の間違いポイント
この事例の間違いポイントは、目先のコストにこだわり過ぎていることです。
そもそもクラウドツールはサブスクリプションモデルのため、初期費用ではなく月額費用が主な収入源となります。
印刷複合機のリースがビジネスとして成り立つのは、長期間にわたってランニングコストを徴収できるからです。
クラウドPBXの初期費用を無料または格安にできるのも、基本的には同じカラクリだと思ってください。
しかも、顧客情報や通信インフラは企業にとって決して軽んじることのできない重要な仕組みです。
導入から時間が経てば経つほど、別のシステムに移行するハードルは高くなっていくでしょう。
つまり、導入の決定は極めて重い判断なのです。
初期費用が無料だから、といった安易な考えで導入を決めるべきではありません。
目先のコストこだわってDXを進めてしまうと、こうしたワナにはまりやすいため十分注意してください。