【DX失敗例】ツールに夢を見過ぎてしまう
事例で読み解く「間違いだらけ」のDX、第7回は「ツールに夢を見過ぎてしまう危うさ」について取り上げます。
岩崎役員に提案を一蹴されてしまい、振り出しに戻ったDX推進チーム。
中堅社員の2人は、今度こそ提案を通そうと急ピッチで準備を進めていました。
果たして、どのような提案をするつもりなのでしょうか?
このマガジンでは、さまざまな事例から「間違いだらけ」のDXを読み解いていきます。
自社に当てはまる事例がないか、DXの認識にずれがないか、チェックする上で役立つでしょう。
ぜひ参考にしてください。
(前回のエピソード↓)
本日の事例
岩崎役員に「ビジョンがない」と言われてしまった2日後、吉田係長は再度DX推進チームを招集します。
2日前の憔悴しきった吉田係長からは想像できないような、自信に満ちた表情でした。
一体、吉田係長は何を始めようとしているのでしょうか。
事例の解説
CRMとは、本来「顧客関係管理」を表す言葉です。
紙ベースの顧客台帳であっても、取引先や顧客の管理に活用されていれば広義のCRMに含まれます。
ただし、近年では顧客関係管理のためのツールそのものを「CRM」と呼ぶことも少なくありません。
ちょうど吉田係長と松井さんのように、「CRM=ITツール」と捉えるケースが増えているのです。
たしかに、CRMツールを導入することで顧客管理を多面的に行うことができます。
ある属性の顧客を抽出したり、セグメント別にDMを配信したりといったことが可能になるでしょう。
しかし、こうした施策を実行するには顧客管理方法を十分に検討しておく必要があります。
ツールの機能は、あくまでも運用の利便性を高めるためのものに過ぎません。
運用方法まで自動的にツールが構築してくれるわけではないため、機能を使い切れない状況に陥りがちです。
加賀さんが心配している通り、ExcelがCRMツールに置き換わるだけであれば、有効活用されない可能性が高いでしょう。
事例の間違いポイント
今回の事例での間違いポイントは、ツールに夢を見過ぎてしまっていることです。
CRMのように多くの企業が活用しているツールの場合、「導入すれば便利になるに違いない」と錯覚しやすい傾向があります。
しかし、前述の通りCRMツールは顧客関係管理の利便性を高めるための、いわばサポートツールに過ぎません。
どれほど高機能であろうと、使い手しだいで有益なツールにも無駄なツールにもなり得るのです。
では、実際にCRMツールを活用するとどのようなことが可能になるのでしょうか。
CRMツールごとに異なる部分はあるものの、一般的には次の機能を備えたものが多く見られます。
顧客管理
メール配信
問い合わせ管理
進捗管理
外部サービス連携
ファイル共有
分析レポート出力
たとえば、営業部が抱えている顧客情報を有効活用して商談に繋げる場合を考えてみましょう。
従来であれば営業担当者ごとに行っていた案内メールの送信や顧客分析を、CRMツール上で一括して行えるようになります。
これにより、営業活動の段階に応じて統一したアプローチが可能となり、取りこぼしを最小限に抑えられるのです。
さらに、成功・失敗事例を共有することにより、営業部全体の活動精度を高めることにも繋がるでしょう。
こうした効果を見越してCRMツールを導入するのであれば、ツールを営業活動に役立てられる可能性が高まります。
単に「多くの企業が導入しているのだから、便利なツールに違いない」といった理由で導入するのはおすすめできません。
Y社のDX推進チームは、まさしく「他社での導入事例が豊富なツールだから」という理由でCRM導入を決めてしまいました。
ツールに夢を見過ぎたまま、走り始めてしまったのです。
まとめ
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