変革の方向性を見誤ったDXは失敗の元
事例で読み解く「間違いだらけ」のDX、第11回は「変革の方向性を見誤る」リスクについて取り上げます。
DX推進においては、目的・目標を明確にしておくことが非常に重要です。
そもそも変革の方向性を見誤ってしまうと、DX推進そのものが誤った方向に進んでしまいかねません。
このマガジンでは、さまざまな事例から「間違いだらけ」のDXを読み解いていきます。
自社に当てはまる事例がないか、DXの認識にずれがないか、チェックする上で役立つでしょう。
ぜひ参考にしてください。
本日の事例
Rシステム開発から「甘い誘い」を受けた吉田係長は、AI搭載のCRMツールと併せてクラウドPBXのセット契約を検討しています。
ここで問題となるのが、意思決定権を持つ岩崎役員にどう提案するか、という点でした。
(前回までのエピソードはこちら↓)
果たして、吉田係長はどのように提案書をまとめ上げるつもりでしょうか。
事例の解説
Rシステム開発が持ち込んだ提案に従うまま、新たな提案をまとめつつある吉田係長。
提案の論点はいつの間にか「コスト削減」と「業務効率化」へと移ってしまいました。
吉田係長の認識には、2つの重大な問題があります。
ツールの導入ありきでDXを推進しようとしていること
ベンダーの提案を鵜呑みにしていること
結果として、現状を改善するための提案に留まり、事業モデルを変革するような大胆な提案からいっそう遠ざかってしまいました。
DX推進は、多くのベンダーにとってまたとないビジネスチャンスでしょう。
既存のシステムやツールを「DX推進」の名目で売り込めるからです。
しかし、Y社にとって「AI搭載CRMツール」や「クラウドPBX」がなぜ必要なのか、根本的な理由について議論されていません。
目の前にある手頃な解決策に飛びついて、導入する理由を後付けしているに過ぎないのです。
このように、変革の方向性そのものを見誤ってしまうと、DX推進が全体として目的を見失ってしまう点に注意してください。
一度目的を履き違えてしまうと、ちょうどこの事例の吉田係長のように誤った施策を熱心に推進する原因にもなりかねないのです。
事例の間違いポイント
この事例の間違いポイントは「DX推進の目的を根本的に履き違えていること」に尽きます。
コスト削減や業務効率化は「現状を多少改善するための目標」であって、事業モデルの根本的な変革にはつながりません。
加賀さんの懸念通り、ビジョンに立ち返って議論し直さない限り、DX推進チームはますます迷走を深めることになるでしょう。
「必ず効果がある」「正しい判断だ」と一度確信したことを、人は疑えなくなってしまうものです。
だからこそ、DX推進は最初が肝心といえます。
DX推進に向けたプロジェクトやチームが発足した際には、最初に「DXを推進する目的は何か」をメンバー間で共有しましょう。
現状を改善するための「デジタル化」や「ツール導入」を目的と考えているメンバーがいると、その後の議論が迷走しがちです。
「ビジョンなきDX推進」に陥らないためにも、「変革」に対する共通認識を形成しておく必要があります。
まとめ
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