「デジタル化との混同」はDX推進の大敵
事例で読み解く「間違いだらけ」のDX、第2回は「デジタル化」との違いについて取り上げます。
このマガジンでは、さまざまな事例から「間違いだらけ」のDXを読み解いていきます。
自社に当てはまる事例がないか、DXの認識にずれがないか、チェックする上で役立つでしょう。
ぜひ参考にしてください。
本日の事例
DX推進チームが発足してから半月ほど経ち、メンバーは具体的な提案に向けて動き始めていました。
(前回のエピソードはこちら↓)
ここでも加賀さんは中堅社員2人の議論に対して大いに疑問を感じます。
どのような議論が繰り広げられていたのか、実際に見ていきましょう。
事例の解説
DX推進でありがちな間違いの典型例として、DXをデジタル化(デジタライゼーション)と混同してしまうケースが挙げられます。
まさに中堅社員の2人が話していたように、デジタル化の延長線上にDXの実現が見えてくる、と錯覚してしまうのです。
加賀さんが懸念している通り、紙の書類やハンコをデジタルデータに置き換えたところで、根本的なワークフローは変わりません。
むしろ「データをアップロードする」ための手間が増えてしまい、かえって現場から不満が噴出することさえあるでしょう。
では、加賀さんが提案したように「ワークフロー全体を改善すること」が目的だったとすればどうでしょうか。
たとえば、有給休暇などの申請・承認をグループウェア上で完結できるようにする、といった仕組みが想定できます。
承認印を廃止し、場所を選ばず申請・承認が可能な仕組みに変われば、テレワークへの移行もスムーズに進むでしょう。
結果としてフルリモート勤務が実現し、遠隔地の勤務も可能になったり、業務の生産性向上に繋がったりするのです。
DXを推進するにあたって、手段と目的を取り違えることがあってはなりません。
デジタル化を当面の目標に掲げることは、手段が目的化してしまった典型例です。
事例の間違いポイント
今回紹介した事例の間違いポイントは、顕在化している課題を「デジタル化」によって解決しようとしている点に尽きます。
中堅社員の2人の思考は、次のような手順を踏んでいます。
スタート地点が「現状すでに見えている問題」のため、デジタル化すれば今よりは改善されるだろうという発想に留まっています。
目的となるゴール地点から逆算されておらず、現状を維持しながら少々便利にするだけの議論に終始しているのです。
DX推進を掲げるのであれば、根本的な課題から議論を始める必要があるでしょう。
たとえば「将来的に介護離職が増える恐れがある」「多様な働き方を実現していく必要がある」といった課題を抱えていたとします。
はじめに着手すべきは、既存の仕組みのうちテレワークを妨げる要因を抽出していくことです。
阻害要因の1つとして、紙ベースの文書のやり取りが挙がる可能性は十分にあるでしょう。
この場合、グループウェアの導入そのものが目的ではなく、多様な働き方を実現するというゴールから逆算されています。
デジタル化が目的ではなく、中長期的な経営リスクを見越したDX推進が実現するのです。
デジタル化ありきのDXでは、現状の分かりやすい課題を多少改善する程度の効果しか得られないことを押さえておく必要があるでしょう。
まとめ
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