書店業界の「新」常識!? ~夕張書店(メロンブックス)の挑戦
先日、埼玉県にある熊谷市に向かう用事ができ、いつものようにいそいそとご当地ランチを物色しようとweb内を探索していたところ、視界の片隅にこの一文が目に留まった。
以下、そのままコピペ。
「メロンブックスの新形態店舗、タ張書店がついに籠原にオープン!
夕張書店とは
【いつでも気兼ねなく、ゆっくりと店内をめぐってコミケ新刊や書籍・コミックが買える】
24時間営業 で 完全無人 の同人書店!
まったく新しいメロンブックスで、皆様のご来店をお待ちしています!」
なんだこれ、ちょっと気になる。
本屋で無人ショップ?とか、システム的にどんな感じ何やろ?? とか。
自分の中で様々な疑問と好奇心のスイッチが入っていくのを感じる。
なので今回は自身の経験値を上げる目的として(建前)、恐らく世界初の店舗型無人同人ショップであろう、
「夕張書店 by Melonbooks 籠原店」
へと足を運ぶことにしてみた。
…ちょっとのスケベ心を胸に秘めていたのはここだけの秘密だ(本音)。
そもそもメロンブックスって、何?
名前は聞いたことがある、または初見という人も多いと思うので、以下に主な特徴と主観な印象をWikipediaの文章を魔改造してまとめてみた。
自分も過去の歴史は詳しくないし難しい話は苦手なので、正直この方が説明が手っ取り早くて助かる。
…とまぁ色々。
要するに紳士淑女/一般のエリアゾーニング(区分け)がしっかりされていて商業誌も創作物も置いてある、ショップ/店員さん共々頑張っている本屋だよ!!という認識でいてくれれば。
夕張書店はそれらを踏まえた上での無人店舗型24時間営業形態の同人書店に当たる。
…しかし、ここでも新たな疑問が湧く。
例えば、
無人店舗となると年齢制限のゾーニングはどうなるんだろうか?
とか、
そもそも新刊や新作の入荷とかどうなっているんだろう??
とか。
少しでもこの胸の内の疑問が解消できるなら…と手早く用事を済ませたボクは好奇心と疑問、そして少々のスケベ心とおまけに空腹を抱えながら、夕張書店へと向かった。
いざ、入店…その前に
それから程無くしていざ夕張書店の実店舗へと到着した。
今回の移動手段は車です。
駐車場は店舗の周囲に配置してあって、結構な台数が停められそう(20台はいけそう)。
早速わくわくしながら入店…と、その前に。
いそいそと鞄の中からスマートフォンを取り出す。
夕張書店の入店の際には事前に夕張書店へのline登録が必須で、line登録の際に入力する情報(生年月日)で年齢確認をしている。
なので時点で入店する前から年齢ゾーニング問題はすでに解決していた。
というわけで話を戻すと、入店時にはline画面から入店用のQRコードキーを貰う必要がある。
そのQRコードを店舗入り口横にある読み取り機にかざすと自動ドアが開く仕組みになっている。
これで店内へと向かえます。
(一旦店外に退出してしまってもlineから再入店できます。)
店内の様子
開店したばかりというのも相成って、店内は予想以上にクリーンな感じ。
そして元の建屋が店舗だったのか倉庫だったのは判らないのだけど、天井がヤケに高いので空気も籠(こも)らない印象だ。
…などと思いながら上を見上げた瞬間、驚愕した。
そこにあったのは夥(おびただ)しいほどの…
絶対に「無人店舗」という店舗形態を成功させよう、という気概と、絶対にお客様を犯罪者にさせない、という意思の強さを具現化したかのような防犯カメラの圧倒的な台数。
メロンブックスの「無人店舗への本気」が伺える箇所でもある。
店舗内は主に4つのスペースで区分けされている。
簡単にではあるが紹介していこう。
①商業誌/一般エリア
一般エリアは、主に一般向けの商業誌や同人誌、雑誌等が置かれている。
そこで一般向け商業誌の展開に感動した。
床面積が広い店舗の特性を生かした、圧巻のエリア横広がりの新刊の面陳(めんちん。面陳列の略)展示に思わずテンションが上がる。
什器や建屋の関係もあって、他企業書店では島(一ブロック)になって細々としていたり、棚で通路にしてしまっていたり、そもそも近年の(物理)本離れに寄る書店エリアの縮小があったり…と様々な理由で、ここまでの見事な面陳で「商品を魅せる」展開を行っている書店は非常に少なくなっているからだ。
※: 特集コーナーは範囲は狭いものの、その時期のアニメ化原作特集だったり、刀剣乱舞をプッシュしてみたり…と独自性があって単純に面白いです。
その新刊棚の裏側は一般向け同人誌の棚になっており、
展開数も豊富で見目麗しい。
なお、
物理メディアは昨今の傾向により絶対数自体が少なくなってきているので、ボカロ/歌ってみた/東方系界隈のファンは要チェックのポイントである。
②R18エリア
R18エリアでは成人向けの商業誌/同人誌や雑誌、PCソフトやジョークグッズ(意味深)等々を取り扱っている。
noteという媒体の特性上詳細は割愛するが(ゾーニング関係…)、店舗間での展開数や冊数振り分け等を加味してみても、ここ夕張書店でなら在庫が残っている可能性も高いので、その道のファンは是非チェックすべき(※)。
※: なお先の項で触れた店舗特典だが、設置スペースと防犯・汚損の関係上、商業/同人共にクリアファイルは付属しない可能性がある(一部例外もある)ので、そこは注意が必要だ。
③らしんばんアウトレットエリア
夕張書店の店内に入ってすぐ。
商業誌/一般エリアの什器を右側に抜けた一画には、サブカル系中古ショップ「らしんばん」が取り扱うアウトレットアイテムのエリアがある(※)。
本当に一画なのだが、店舗自体の床面積が広いお陰でコーナーを謳っているにも関わらず、アイテム数が本当に多い。
こちらもアイテムに展開に対するゾーニングはしっかりと対応していた。
ディグる(語源: 掘る。ヴァイナルLP/レコードを探す行為のスラング)だけでも相当の時間を要するレベルの物量があるので、お探しの物がある方は是非。
※: なお今のところ、このエリアにおいてらしんばん公式からの出店アナウンスは特にない(2024.07現在)ので、案外ホントに掘り出し物を探すチャンスかも知れない…知らんけど(笑)。
・アウトレット補足
先の項でらしんばんのアウトレットを紹介したが、店内には一般/成年同人共にメロンブックスが抱えるアウトレットコーナーも存在する。
共に別店舗の在庫なのでディグがかなり捗ると思う。
特に一般アウトレットの方には、著名作家の見目麗しい同人イラスト集や、商業連載ではなかなかできない様なコミック等の出会いもあるかも。
なので、同人界隈入門編!!な方や、掘り出し物を探しに遊びに来店するのも面白いと思う。
・精算レジ
一通り巡って自分の嗜好を満たすブツを物色できたら入口付近の精算カウンターへ。
勿論ここは、夕張書店の売りである無人レジで精算することになる。
パネルに画面タッチし、支払い方法を選択。
メロンブックスの会員であれば、ポイント付与のためにそのコードを(※)。
その後、商品袋や商品自体に付いているバーコードをリーダーで読み取り、
それぞれの支払い方法でらくらく精算完了できました!!
なお、何を購入したのかはヒミt(略)。
(※: 実は、
但し、夕張書店の精算でポイントを使用することはできないので注意が必要である。)
一通り店内をぶらぶらと
何だか喉が乾いてきた。
そんな時にありがたいのが次の項。
④フリースペースエリア
夕張書店の入口付近、入店してすぐ左側にはフリーに使える休憩所エリアがある。
2人掛け×3テーブルで憩えるスペースが設けられている。
そしてこの付近には自動販売機もあり、それらは店内で飲食も可能となっている。
この他にも軽食の自販機も存在し、
ボクも歩いていて喉が乾いたので、
…あ゙?カレーは飲み物でしょうが(圧)。
一緒に来た仲間達と戦利品の歓談をするもよし。
待ち合わせに使うもよし(買い物はしようね)。
オレンジジュース飲もうぜ!!で集まるもよし。
勿論、買い物疲れの休憩所として利用するのにも最適なので、無人ながらも自分のペースで買い物ができる。
この辺りの配慮が行き届いている所にも無人店舗への取り組みが伺えた。
まとめ(疑問点が日々改善のスタンスへ)
・無人の本屋さん、ってどんなんやろ、とある程度の想像はしていたものの、思っていた以上の最適解を持ってきたな…という印象。
・取り扱うアイテムの性質上、明るい陽の側面と世間から見れば仄暗い箇所が同時に内包されるような趣味であるが故に、他人(店員)と接客で関わるというノイズをキャンセルできる時点でこの様な店舗形態は実際にかなりの潜在的需要(ニーズ)があるように伺える。
・とは言え、無人店舗であるが故にやはり商業誌の新刊などは入荷していても店舗に並べられなかったりすることもままあるみたい。
けれどもこの辺りに関してはデメリットに感じるよりも「もしかして夕張書店に行けば在庫が残っているかも…」という思考に変換しておくのが、このお店との付き合い方、楽しみ方だと思う。
・以前に商品陳列していた社員さんに軽くお話を伺ったのだが、初の店舗形態である夕張書店を日々良くして行こう、と切磋琢磨しながら頑張っている様に感じた。
(例えば先の項でちらっと触れた暖簾は、ゾーニングの質問をした際の一言を実行し、設置していただいたものだ。)
もし不備や疑問があった際には、連絡や相談をしてみるのも一興かもしれない。
…無論、個人的なワガママを押し付けることはは言語道断だが。
個人的には新たな出会いや発見、はたまた探していたものが見付かるかも…という期待を持たせてくれるお店。
ただ近い将来を見据えると、この様な無人店舗の業態は増加の一途を辿りそうだ。
今からの準備、今からの助走。
それらを踏まえると、至極妥当な全力チャレンジだ。
今後の夕張書店の成功と未来に期待したい。
しかし、腹が減ったなぁ…。