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多様性の中で生きる僕らの音楽のスゝメ⑤

こちらは前回です。乱筆乱文ですがよろしくお願いいたします。

複雑化する立場②

 最近「音楽何聴いているの?」という質問に上手く正確に答えられる人は果たしてどれぐらいいるのだろうか…という書き出しは前回にも行ったが、最近特に目立って増えているのは 「アニソン(アニメソング)聴いてます!!」という声である。
 特殊性の強いカテゴリーではあるが、近年では避けては通れぬ重要なトピックの一つでもあると思うので触り程度に触れていくことにする。


・アクセサリーとしての実態
 まずはアニソンとは何か?という問に対して言及しなければならないのだが、実はそれ自体が非常に難解である。一重にアニソン、と言われても

・主題歌(OP、ED)
・挿入歌(劇中歌)
・テーマソング
・キャラクターソング(以下キャラソン)
・声優、又はアーティストソング他

が関わり、複雑なものとなっている。

 時代背景によっても色合いや指向がかなり違うので曲に絡めて紐解いていこう。

・主人公の名前や所属を連呼する曲:
 
昭和のアニメやヒーロー、又は戦隊モノに多く見られ、劇伴に絡めて使われることも多い。

・主人公、キャラクターの心情や作品のストーリーを絡める曲(※★):
 
作品テーマからキャラクター個々にに焦点が当たる作品が増えるにつれ曲も多様化した。キャラソン等がこの部類に当たるか。

・作品のテーマに沿わせる曲(※):
 
作品テーマを作曲家やアーティストが噛み砕き、作品に寄り添いながらもオリジナル性の高い楽曲というのも数多く生まれている。

・作品と全く関係性の無い曲(★)
 
完全にレコード会社主流のモノが多く、会社がパワープッシュしているアーティストや新人を当てる事も屡々(他、タイアップ等)。

(※は角川書店が流行らせたメディアミックス戦略、★はアニメーション製作委員会制度の賜物と見ているが、果たして。)


・主軸は作品である
 つまりはアニソン自体は元来、そのアニメーション表題を浮き彫りにし、盛り上げるための装置であると言えよう。
 もっと端的に纏めると、

・あくまでもアニメーションというストーリーやそれに纏わるキャラクターが主軸。
・それに加えて全く関係性が無いレコード会社の思惑が前面に出ていることもある(厳密に言うとスポンサーとしての関係はあるのだが)。

 実際、アニメファンから見た音楽というものは単なるアニメーション作品に対するグッズの一部でしかない、という話を耳にすることが増えている。
 詳しく聞くと、どうやら作品に対する付属品(アニメグッズ)である、ということらしい。(やけに辛辣な意見ではあると思う。)
 
 そしてそんな彼らが語る音楽に対する善し悪しや議論の余地に関しては

・使用されているアニメ作品に合っているかどうか
・出演しているキャラクターや声優が歌っているかどうか

が主軸であり、音楽そのものに対しての論は、正直言って希薄である。
 実際にアニメーション作品に関わっているモノであるなら何でもアリ、どんな音楽でも正義という価値観は存在している。


・繋がりは「作品」
 かと言ってその音楽や曲は単なるオマケなのかと、適当に作られているのかと言えばそうではない、と言い切れる。その理由の一つにその出自が多彩な作曲家陣にも象徴されよう。

・ ドラマや映画などに起用される劇伴作曲家
・ アーティストやスタジオミュージシャン等の職業作曲家
・ ボカロPやゲーム作曲家などインターネット出身の新鋭作曲家
…等々。

 アニメ音楽は様々な分野や一線で活躍してきた猛者が務めることも多く、作曲家の門戸としては非常に広いので一重に"アニソン"というジャンルで括っても一筋縄では括れないことが伺える。

 だが、これらの実力者や著名ミュージシャンが携わる背景として

・ 音楽や曲がそのアニメ作品の一部、又は重要なパーツを担っている。
・ 分野として作品からの締め付けが映画より低いので作曲家自身の色を強く打ち出せる(監督が作曲家、ミュージシャンのファンなのでオファーした、という話は良く聞く)。

…と理由は様々だが、実際の所

・実動があるから

というのは否めない現状だろう。何せアニメに使用されることにより、(購入が予想される)購買層を単純に考えても

・作品に使われているから購入するアニメファン層
・その作品に携わるミュージシャンのファン層
・他、新規層

と、購買層の枝葉の広がりや目に留まる可能性がかなり強まり、ある程度の数字や知名度の上昇が期待できるからだ。

(※そしてこれは余談だが、こういうアニメ商材の客層の大多数は作品に関わる商品を購入することへのハードルが他の商材に比べて圧倒的に低い。
 理由としてはアニメ関連は若年層が主流という他に、熱心な層は実際に購入し、金銭を落とすことでそのアニメ自体の人気や応援に直接繋がることを身を持って知っているから、ということを挙げておく。
 具体例で言うとその先の続編やOVA、ドラマCDや劇場版など作品自体の存続に直接的に影響しやすい。)

 ターゲットが前述のような層なので、携わる側のメリットとしてその先の数字(実績)や作曲家自身の認知度の底上げ、更に先の未来への仕事(新作へのオファーや続編への作曲)に繋がっていき易いことも特徴的である。

 所謂アニソンとはメーカー側、アニメファン(視聴・購入)側から見れば認識、商材共に[アニメのパッケージ(作品)の一部]なのだ。
 しかしミュージシャン、アーティスト(制作)、ファン(こちらも視聴)側から見れば大事な楽曲(作品)の一つでもあるのだ。

 この部分だけ見ても[アニソン]を語る上での人々の錯誤や乖離が見て取れると思う。


 ・アニソン≠アニソン
 アニソンは非常に特殊性の強いジャンルではある、と言える。

・ミュージシャンサイドの音楽ジャンルや方向性
・アニメーション制作会社や作品サイドの打ち出したいカラー
・レコード会社や販売会社の売り出したいカラーやベクトル
・視聴者サイドの受け取り方(アニメ側か、音楽側かだけ取っても大分違う)

 これら全てがそれぞれ指向性を放っており、そして乖離してしまっていると言えよう。なので、立場としてのジャンルは実質上

[アニメで使われた音楽]

の一点でのみしか語られない。
要は議論の着地点が各自バラバラなので取り決めようが無いのだ。
 

 アニメ作曲家、という職業も特集される機会も増え、確実に市民権を得た。
 アニソン歌手、という独自性の強いファン層を持つアーティスト達が大きな会場でライブを行い、フェスも開催されるようになった。

 反面、音楽の観点から見ると特殊な出自のため、その音楽自体の魅力を語る際に必ずと言っても良いほどアニメ作品の影が付き纏う。

 複雑な心境でもあるし、残念な結果でもあるとも言える。だが、この流れのとある部分は近年の音楽の傾向と潮流を如実に物語っている、とも言えるのだ。

次回⑥へと続きます。


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