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『損保の闇 生保の裏』から学ぶ保険会社の生存本能

「ドリーム年金」の罠

娘のアメリカの高校の卒業式に参加するために、義理の姉が3週間ほど訪米していた。義理の姉の息子、即ち私の甥はこの4月からとある日本企業に就職し、NISAや保険の購入などを検討しているという。詳しそうに見える私に、これを保険の外交にすすめられたらしいので、助言をしてあげて欲しいと、「ドリーム年金.PDF」なるいかがわしい名前のファイルが送られてきた。中身を見てみたらファイル名にそぐわない破廉恥な内容であった。以下がざっくりとした内容。

  • いわゆる生命保険と貯蓄の抱き合わせ保険商品

  • 5年間月払いで年間6万円ずつ積みたて、5年で払い込み完了

  • 満期に315,000円の返戻金を取得

  • 期間中の死亡保険金つき

ChatGPTに利率を計算させると利率は1.8%程度。勿論、銀行に預けるのと比較すれば悪くはないが、会社に入ったばかりの新人がどうして死亡保険金が必要なのか。5年という期間も新入社員の心理的負担を下げる絶妙なラインで、少しいままでよりも懐の豊かになった若者の財布からちゅーちゅーと吸い取ろうという思惑がみてとれる。「こんなのやめて、NISAをもっと活用しなさい」と助言をしておいた。

『損保の闇 生保の裏』

先日『損保の闇 生保の裏』という本を読んだ。

本書は、一時期日本を騒がせたビッグモーター問題や悪質な生命保険商品や公平を装った保険代理店の裏などの実態を克明に描いたルポタージュ。筆者の柴田秀並氏は朝日新聞の経済部の記者で、金融畑が長いようだ。自分の培った取材網と粘り強く丹念な取材から、日本の損害保険・生命保険の問題点を見事にあぶり出している。新聞を読まなくなってから久しいが、こういうジャーナリズム精神に溢れる力作を読むと、新聞社もまだまだ捨てたものではないと感じる。

保険会社の生存本能

本書で紹介されるのは

  • 自賠責保険の獲得欲しさに、ビッグモーターの過剰な保険金請求に目をつむった損害保険会社

  • 顧客の不安を不必要にあおり、高リスク・高手数料商品を言葉巧みに売りつける生命保険会社

などの保険営業の現場の現実だ。本書を読めば「売上と利益をあげるために手段を選ばない、損害保険や生命保険に内在する論理」がよく理解できる。

これらの現実を見ると、「顧客の利益そっちのけでなんだかなー」とは勿論思う。その一方で、「難しい」保険商品の特徴を最大限に活かして「知識がなさそうな奴を鴨にする」というのは、保険会社のDNAに刻まれた生存本能であり、それを変えることはできないという現実も本書は示してくれる。私も勉強不足が故に、高い勉強量を保険会社に払った経験もあるので、もっと勉強して騙されないようにしなければ。

まとめ

NISAが始まり、今まで銀行預金か、保険商品くらいにしか行き場のなかった日本の金融資産の行先が多様化するのは必至だ。それは保険市場の縮小に結びつくが、その売上規模を保険会社がやすやすとあきらめるとは思えない。これから進むのはNISAフック(NISAをわかりやすく無料で説明しますよ、と案内し、高手数料の保険商品を売りつける)のような保険会社の生き残りをかけた悪あがきだ。そんな中で賢い選択をし続けるには、YouTubeなどを賢明に使いながら勉強を続けることだ。若い世代が変な割を食わないように、自分自身も勉強して、子どもたちに生き残る知恵を教えていきたい。

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