ジョイコンで探るモーション操作の可能性

リモコン型のコントローラを剣のように振ったり、テニスラケット代わりにして球を打ち返したり...モーション操作の代表例としてまず挙がるのは任天堂のWiiだろう。体の動きを用いてゲームを操作する仕組みを、本格的に家庭用ゲーム機に導入した最初のハードと言える。
 モーション操作は一定の革新を起こしつつも賛否が割れた。体感操作の本能的な楽しさに魅了される人もいれば、思った通りに制御できずストレスを感じる人もいる。そういった尖ったバランス故か、現在の家庭用ゲームでこの手の操作法を売りにするソフトはあまり見かけなくなった。
 モーション操作はボタン操作に比べて扱いが難しく、無計画に導入すると操作性がガタガタになる。Wii時代は無理やりコントローラを振らせるようなゲームも多く、モーション操作そのものが不毛であるかのように誤解するゲーマーも少なくなかった。

現世代機であるSwitchのジョイコンは、Wiiリモコンから構造を変えつつもモーション操作を受け継いでいる。これをWii時代よりもバランスよく活用していきたい、というのが今回の記事の主旨だ。個人的に試作したジョイコンならではのゲームをいくつか紹介し、モーション操作の魅力を掘り下げていく。
 現状、ジョイコンの特性を活かしたソフトを作ろうとするのはほぼ任天堂だけで、他のメーカーがモーション操作に注目する機会は少ない。こういった記事をきっかけに、モーションセンサーの高いポテンシャルがもっと広まればと願っている。

最初に紹介するのがこのボクシングのような試作品だ。両手で2つのジョイコンを縦に握り、実際にパンチして的を狙う。
 加速度センサーによってパンチの強弱を判定しているため、勢いよく振って奥の的を叩いたりすることもできる。ボタンやスティックを使わない単純な操作だが入力の幅が広いのが特徴だ。

Wiiのモーション操作にありがちだったのが、ボタン操作でも可能な平坦なアクションを振り操作に割り当てるケース。コントローラを軽く振って特定のアクションを起動するというものだが、単に腕が疲れるだけで無駄に感じるプレイヤーも多かったのではと思う(振り操作が一概にダメな訳ではないが)。
 この試作のように入力の力強さまできっちり反映させると、ボタン操作にはないモーション操作ならではの強みが光る。体感操作は体の動きがゲーム内と深く連動してこそ没入感も増すのではないだろうか。

こちらはジョイコン1つ(片手)で手軽に操作できる飛行機ゲームの試作だ。コントローラを左右に捻って旋回、前後に傾けて上昇下降できる。
 要となるのは傾け操作の繊細さ。強弱の付いた動作を素早く直感的に制御でき、立体的な空間を自在に飛び回れる。指先だけで小さく動かすスティック操作と異なり、傾け操作は手首全体で大きく調整できるのが強みになる。

また、この動画で1つ注目して欲しいのが横方向にスライドするアクションだ。ジョイコンを横に振ることで左右に位置を調節でき、立体的な移動の幅が大きく広がる。
 モーション操作は傾け操作と振り操作にアクションを振り分けることができるのが特徴の1つ。精度の高い傾け操作をベースに、振り操作を補助的に(あるいはアクセントとして)付加すると、安定性があって自由度の高い操作を実現できる。

最後にジョイコンを2本用いた、コントローラとの一体感が楽しいゲームも紹介しておきたい。レバーのように両手でホールドしたジョイコンが手に馴染むのがポイントだ。
 ある意味大きなスティックを2本使うようなもので、非常に入力の幅が広く快適に空を飛び回れる。ジョイコンならではの分離操作を最大限に活かした試作品と言える。

家庭用ゲームの世界では両手で支えるプロコンのようなコントローラが一般的だが、左右に分離できるジョイコンはプレイヤーの姿勢を自由にしてくれるメリットがある。単純に便利なだけでなく、モーション操作の土台として欠かせない特性だ。
 左右の手を組み合わせて何かを動かすのは人間の生活の基本とも言える。人の体に最も馴染む入力体系として、分離型コントローラには高い将来性を感じる。

ソフトがハードの真価を引き出す

僕は今でも、モーション操作の価値が正しく伝わらないままWiiの勢いが途絶えてしまったと感じている。現在の家庭用ゲーム機ではボタンやスティックを用いた伝統的な操作スタイルが一般的となり、モーション操作はオマケ程度の存在に過ぎない。
 深く考えずにモーション操作をゲームに導入すれば、操作性が落ちてプレイヤーに悪印象を残す。Wiiの二の舞にならないためには、ジョイコンならではの適切な操作法を確立する必要があると感じた。
 新しいインターフェース(センサーなど)が導入された直後は、実験的なアイディアが乱立してソフトの作りが雑になりがち。だが優れたインターフェースには堅実で息の長い使い道が眠っている。ソフト屋はそういった深い価値をいち早く見抜けるようになりたい。

昨今は複数のプラットフォームでゲームを売るのが当たり前になり、個々のハードに敬意を払わない開発者も多い。特にコントローラはゲーム文化の要であるにもかかわらず、操作性の研究に時間を割けるメーカーは任天堂以外では限られている。
 ソフトを作る側に理解力がなければ、いくら先進的なハードが生まれても意味がない。ゲーム文化を前へと進めるために、ハードとソフトの両輪の重要性を改めて主張しておきたい。


※本記事はここまでとなりますが、有料部分にちょっとしたオマケを付けています。自分で試作してみて感じたジョイコンの限界と、コントローラの未来について思うことをまとめてみました。
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