田代邦幸 - 合同会社 Office SRC 代表

メーカー勤務を経て 2005年より事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関する…

田代邦幸 - 合同会社 Office SRC 代表

メーカー勤務を経て 2005年より事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事しています。The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局。https://linktr.ee/ktashiro

マガジン

  • Good Practice Guidelines を読み解く

    事業継続マネジメント(BCM)の分野において世界で最も参照されているガイドラインである、BCI Good Practice Guidelines 2018 年版の内容を、順次解説していきます。

最近の記事

【宣伝】 「CBCI 資格認定トレーニングコース」の受講をお勧めする理由

筆者は 2022 年より、シンガポールの BCP Asia 社が運営している「CBCI 資格認定トレーニングコース」のオンライン日本語コースで講師を担当させていただくことになりました。 この「CBCI 資格認定トレーニングコース」は、事業継続マネジメント(BCM)の実務に必要な基礎知識を網羅的に学べるように構成されています。コースの内容は、BCM のガイドラインとして世界で最も参照されている「Good Practice Guidelines」に準拠しているので、世界標準とな

    • 「想定外」とはどういうことか?

      巷で「想定外」という言葉が使われる場面が本当に増えたと思います。個人的な感覚としては特に 2011 年の東日本大震災以降、特に使われる頻度が増えたように感じています。しかも BCM や災害対策に関する仕事をしているので、一般の方々よりも「想定外」という言葉を耳にする機会は多いのではないかと思います。 しかしながら一方で、私自身は「想定外」という言葉を極力使わないようにしています。また、理由は後で述べますが、むやみに使うべきでない用語だと思っています。 そこで本稿では「想定

      • 事業継続マネジメントにおける IT の継続性をどう考えるか

        多くの組織にとって、事業継続マネジメント(BCM)に取り組むうえで IT の継続性は重要なテーマのひとつだと思います。俗に「IT-BCP」などと呼ばれたりしていますが、IT が多くの組織にとって非常に重要な資源となっている現状において、IT システムが稼働停止しないように、もしくは停止した場合に短期間で稼働再開できるようにするための対策は、避けて通れない分野と言ってもいいでしょう。 そのようなニーズに対して、IT システムに関しては、冗長化やバックアップなど、トラブルや災害

        • 「IT-BCP」という言い方は間違い

          事業継続マネジメント(BCM)に関する話のなかで、IT システムの災害対策などを指して、「IT-BCP」という言葉が使われることがあります。つまり「IT の BCP」という意味ですね。 ところが、この「IT-BCP」という言い方は正しくありませんので、お使いにならないことをお勧めします。これが正しくない理由は、基本的な用語の定義に照らし合わせれば明らかです。 以下、国際規格「ISO 22301」の 2019 年版、およびそれを和訳して作られた「JIS Q 22301」の

        【宣伝】 「CBCI 資格認定トレーニングコース」の受講をお勧めする理由

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        • Good Practice Guidelines を読み解く
          8本

        記事

          ランサムウェアには本当に身代金を払わない方がいいのか

          本稿は、最近『リスク対策.com』の連載記事を執筆するために、ランサムウェアに関する資料をいくつか読んで学んだ結果をまとめたものです。私自身の専門分野から若干外れますが、興味深いデータがいくつかあったので、こちらにまとめておきたいと思います。 ランサムウェアとはマルウェアの一種で、コンピューターの操作をロックしたりデータを暗号化してデータへのアクセスができないようにし、これらの解除と引き換えに身代金を要求するものです。2017 年ごろから被害例が急増し、世界的に注目されるよ

          ランサムウェアには本当に身代金を払わない方がいいのか

          事業継続マネジメントには「どこで手を抜けるか」を考えながら取り組みましょう

          本稿は、拙書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)の一部に手を加えたものです。 -   -   -   -   - このたび執筆させていただいた拙書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』では、できるだけ多様な読者の皆様にとって役立つ本にするために、できるだけ網羅的に細かく解説させていただきました。これは読者の皆様の立場から見ると、自分(または自社)にとって不要なことも、それなりに含まれて

          事業継続マネジメントには「どこで手を抜けるか」を考えながら取り組みましょう

          他者の力も借りて合理的な事業継続を実現しよう

          本稿は、拙書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)の一部に手を加えたものです。 -   -   -   -   - 倒産リスクの高い中小企業の BCM 戦略頻発する大規模災害の例を見るごとに、もし自社があのような災害で被災したら企業の存続にかかわるのではないかと懸念されている方も少なくないでしょう。 特に、中小企業の皆様におかれましては、災害で倒産・廃業に追い込まれるリスクを切実に感じておられることかと思います。実際、過

          他者の力も借りて合理的な事業継続を実現しよう

          BCP をつくることには極力手間をかけずに済ませよう

          本稿は、拙書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)の一部に手を加えたものです。 別の記事で、BCM に継続的に取り組むことの重要性について述べましたが、もちろん BCP が不要という意味ではありません。 事故や災害などが発生した際の行動をわかりやすくしておくために、BCP を文書化しておくことは重要です。また、BCM における検討結果が BCP という形になっていないと、演習や教育訓練などの活動がやりにくくなりますし、改善

          BCP をつくることには極力手間をかけずに済ませよう

          著書『「事業継続マネジメント」実践ガイド』が出版されました

          私自身の初の単著となる書籍が出版されました。 以下に「はじめに」(前書き)を全文公開させていただきます。ぜひ参考にしていただき、役に立つとお感じになられたら、ご購入いただければ幸いです。 - - - - - 本書をお手にとっていただき、誠にありがとうございます。 本書のタイトルにある「事業継続マネジメント」(BCM)とは、事故や災害などの影響で事業活動が中断されてしまった場合に、どのような方法で事業再開・継続を果たしていくかを、平常時のうちに検討し、準

          著書『「事業継続マネジメント」実践ガイド』が出版されました

          事業継続マネジメントの活動を普段の商売に活かしましょう

          本稿は、拙書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)の一部に手を加えたものです。 事業継続マネジメント(BCM)に関する仕事は「掛け捨ての保険」にたとえられることがあります。これは、BCM はあくまでも万が一の時に備えるための活動であって、事故や災害などが発生しない限り、これらの活動に費やした労力や費用は役に立たないという考え方によるものです。そのような認識のもとで BCM に取り組むのは難しいのではないかと思います。 とこ

          事業継続マネジメントの活動を普段の商売に活かしましょう

          「できるだけ早く復旧させる」ことが事業継続マネジメントの目的ではない

          本稿は、拙書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)の一部に手を加えたものです。 より早く復旧させるには、より多くのお金がかかる事故や災害で事業活動が中断されてしまった場合(例えば製造業であれば工場で製品を作れなくなった、など)、「一日でも早く復旧させたい」と誰もが考えると思います。事業中断が一週間、二週間と続いた場合に、損害や各方面への悪影響がどれだけ大きくなるかを考えると、少しでも早く事業活動を元通りに再開させたい、と思わ

          「できるだけ早く復旧させる」ことが事業継続マネジメントの目的ではない

          非営利組織はどのように事業継続マネジメント(BCM)に取り組むべきか

          本稿は、拙書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)の一部に手を加えたものです。 この記事にアクセスしてくださった皆様の中には、政府や自治体などの公的組織や NGO などといった、非営利組織の方々もおられるかと思います。そこで非営利組織における BCM についても触れておきたいと思います。 結論から申し上げると、BCM の基本的な考え方や方法論は非営利組織に対しても同じです。ただし次項で説明するとおり、営利企業と非営利組織と

          非営利組織はどのように事業継続マネジメント(BCM)に取り組むべきか

          事業継続には最初から継続的なマネジメント活動として取り組みましょう

          本稿は、拙書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)の一部に手を加えたものです。 -   -   -   -   - 「BCP」と「BCM」 BCP とは「事業継続計画」の英語表記(Business Continuity Plan)の頭文字をとったものです。事故や災害などによる事業中断が発生した場合に、これに対応してどのように製品やサービスの提供を再開・継続させるかを文書化した計画書を BCP といいます。 ここで何となく

          事業継続には最初から継続的なマネジメント活動として取り組みましょう

          「防災」と BCM との関係を整理しておきましょう

          本稿は、拙書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)の一部に手を加えたものです。 こちらにアクセスしてくださった皆様の中には、企業などで防災(もしくは災害対策)と事業継続マネジメント(BCM)の両方を担当されている方も少なくないでしょう。これまでの筆者のコンサルティングの経験においても、お客様側のご担当者の多くはこれらの両方を担当されていた方が多かったと思います。そのような事情もあってか、防災と BCM とが混同される場面が少

          「防災」と BCM との関係を整理しておきましょう

          「事業継続マネジメント(BCM)は中小企業には難しい」というのは誤解です

          本稿は、拙書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)の一部に手を加えたものです。 これまでのコンサルタントとしての経験の中で、中小企業の方々と事業継続マネジメントに関するお話をする機会が数多くありましたが、そのような場で「大企業のように人もお金も余裕のない中小企業にとっては、BCM に取り組むのは難しい」という声をよく聞きます。 ところが、これには典型的な誤解が 2 つ含まれています。 -   -   -   -   -

          「事業継続マネジメント(BCM)は中小企業には難しい」というのは誤解です

          BCI GPG を読み解く〜 #8 組織の文化を理解し、これに影響を与える (PP2-1)

          今回から PP2 に入ります。PP2 には「Embedding」もしくは「Embedding Business Continuity」というタイトルが付けられています(注 1)。「embed」という単語には「埋め込む」、「組み込む」という意味があり、GPG においては事業継続プログラムを組織の活動に組み込み、定着させるために行うべきことが書かれています。BCM ライフサイクル(下図)でも中心に位置づけられている、とても重要な領域です。 事業継続プログラムが組織に「定着してい

          BCI GPG を読み解く〜 #8 組織の文化を理解し、これに影響を与える (PP2-1)