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松田聖子;名演奏の歴史(デビュー初期②:チェリーブラッサム)

今回はチェリーブラッサムの演奏をレビューします。演奏の評価方法については前回の記事を参照。

静岡駅のチェリブラ

チェリーブラッサムには伝説的な動画が2つあり、基本的に夜ヒットでの演奏を扱うこのシリーズの記事とはいえ、これらを外すことはできません。

1つ目は、こちらのザ・ベストテン での演奏。

新幹線で移動中の聖子ちゃんが静岡駅のホームに途中下車して、停車時間の2分あまりで1曲歌い切るというとんでもない企画。企画ありきのネタとしか思えないのですが、なかなかどうして、この演奏が素晴らしい。

最初の方は聖子ちゃんの声の調子もさすがにイマイチかなという感じなのですが、尻上がりに声の伸びが良くなってくる。圧巻は2:00ごろに車内に押し込められてからで、イヤーモニターが外れている、つまり、それ以降ほとんどの時間、喧騒の中を伴奏の聞こえないアカペラで歌っていることになります。それでここまでテンポやピッチが外れないのはさすが。

そして扉が閉まるタイミング!これが完璧で、1秒早くても遅くても、ここまでドラマチックなクライマックスにはならなかったと思います。偶然を味方につけて、ギリギリ間に合うかどうかの演出をする聖子ちゃんのステージアイドル性に脱帽。

朝チェリ

2つ目がこちらの通称「朝チェリ」になります。たぶん朝の番組で流れていたチェリーブラッサムなので朝チェリ。

朝早いせいか、なんか目が腫れぼったいですがこの演奏は喉の調子が素晴らしい。チェリブラの演奏でここまで調子が良いことは珍しいと思います。レコード音源の口パクなんじゃないの?と思われるかもしれませんが違います。むしろこちらの方がレコード音源よりはるかに声が伸びてます。

唯一、伴奏がレコード音源のカラオケなのが残念ですが、聖子ちゃんの動きやカメラワークも良好で、こちらもチェリブラを語る上で外せません。

チェリーブラッサム 

#5 チェリーブラッサム①(曲目S、歌唱A、伴奏C、演出B)

ここから夜ヒットでの演奏に入ります。チェリーブラッサム、1981年作。作詞:三浦徳子/作曲:財津和夫。ということで、作曲がこれまでの小田裕一郎さんから財津和夫さんにバトンタッチしました。小田さんの古き良き洋楽をベースとした伝統的なスタイルに対し、財津さんの新しい感覚による息吹、まさに、何もかもめざめてく、僕はこの名曲を紹介するためにこのシリーズを書き始めたと言っても良いくらいなので、曲目S。

夜ヒットのチェリブラは全部聖子ちゃんの喉の調子が悪いと思っていたのですが、朝チェリと比べればそうでもないというだけで、普通に調子良いのでAで。

ただ、この演奏は伴奏が良くない。雑な部分が目立ちます。ギターも金管楽器も、不必要に音が割れている。ミキシングでうまく行ってないのかもしれないです。そして2:52からの間奏のギターソロが相当大失敗していますね……。

演出としては質素ですが、オーロラをイメージした背景が衣装(たぶん朝チェリと一緒)と合ってますし、1:32からのチェリブラ名物スクワットもよく撮れているのでA寄りのBで。

#6 チェリーブラッサム②(曲目S、歌唱B、伴奏B、演出B)

冒頭の郷ひろみとのイチャイチャがウザい。これは聖子ファンの総意なので仕方がない。それはさておき、この演奏も妙に伴奏が大きくて、バランスがおかしい。せっかくの聖子ちゃんの歌の良さが消されてしまっているように感じます。心なしか聖子ちゃんも乗りきれなかったような印象です(テンポが遅めなせいもあるかもしれません)。

ただ、普段は聞こえないボンゴなどの打楽器が結構はっきり聞こえるのは興味深い点かなと思います。実はこの動画では間奏がカットされていて、ニコニコ動画で間奏部分も聴けるのですが、うーん。前回ほど失敗してはいないがイマイチ……。

#7 チェリーブラッサム③(曲目S、歌唱A、伴奏A、演出B)

真打登場。スタジオの背景から、間欠泉とか大噴火とか呼ばれる演奏。夜ヒットのチェリーブラッサムはこれが一番良い演奏かと思います。正直、聖子ちゃんの喉の調子は良くない方だと思うのですが、バックバンドの出来が三度目の正直で素晴らしい。

重厚なブラス、絶妙なバランスのコーラス、今回はうまくいった間奏のギターソロ、やたら気合の入った指揮者と、伴奏の完成度は随一。

聖子ちゃんもこの時期にはこの曲を完全に自分のものにしています。2:45と3:55のポーズがバッチリ決まっていて、非常にカッコいい。ネタ的なポイントは、1:40でカメラが急に聖子ちゃんの二の腕をアップして(おそらく日焼けのアピール)、さすがの聖子も苦笑い。

チェリーブラッサム1曲で長くなってしまったので、今回はここまでとして、次回は夏の扉をお送りしたいと思います。

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