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俺たちはただ良い音が聞きたくてゲームをやっている

2020年5月におけるグローバルのモバイルゲームダウンロードランキングで1位になったのはCrazy Labsの「ASMR Slicing 」。

色んな形状の物体をナイフを使って上から下へカットしていく、ただそれだけ。カットするときに「スーーーー」、下までカットし終わった時に「トン」という良い音がする。タイトルに冠されている通りASMR、つまり心地よい音を楽しむゲームである。

音ゲーというジャンルは昔からあったし、ゲームのプレイにあわせて気持ちいい効果音が出るというのはデザインの重要な要素だと思ってはいたが、まさか効果音の気持ちよさのみを追求したゲームが出るとは…そして世界で一番ダウンロードされたゲームになるとは…。

振り返って、自分が最近までやっていたCoD: MWの何が良かったといえば、キル時の音である。キルした瞬間に「ディクシッ」という音が鳴るのだが、これがたまらない。2枚抜きすれば「ディクシッ」「ディクシッ」。コッキング、リロードといった銃固有の音も素晴らしいが、人工的に付加された「がっつり敵を捕らえましたよ!」みたいな音が酒を飲んだあとのラーメンのようにしっくりくる。

この話を書いていて思い出したのが超魔界村だった。ジャンプ、敵へのヒット、武器取得、鎧を着る時、全てにおいて「デュクシ」的音が盛り込まれていて、このゲームはこの音のためにやってたんだなと思わされる。

デュクシ」という表現についてはニコニコ大百科に記述があって、その起源はとんねるずの木梨憲武、ゲームで話題になったのはストIIとある。が、同じカプコンのロックマン1(1987年)のヒット音に「デュクシ」感があったので(音の高さは違えど)、カプコンのサウンドプログラマーの間でそういった音作りの思想が共有されていたのかと思う。重さを感じる音作りというか。2020年現在においては「デュクシ」感が伴った音が快感を引き出すという方程式は変わっておらず、音の発明の意義は計り知れない。

自分が好きな「デュクシ」音の羅列になるのだが、スーパーファミコンのタートルズインタイムはキャラクターの動きが軽いのに、信じられないくらい打撃音が重く、特に投げ技で敵を何度も床に叩きつける音はエクスタシーにいざなってくれるのでおすすめしたい。「デュクシ」「デュクシ」「デュクシ」

音固有の気持ちよさではなく、ゲームプレイ時の思い出で補正がかかって気持ち良いと感じる音もあって、例えばハーフライフのHEV Chargerの音なんてのがその最たるもので、一度でも触ったことがあるプレイヤーは「あああああようやくアーマーを回復できるぅぅぅぅ!」という思いで共に精神が整っていくのだが、この音を単体で聞いても特に感情は沸いてこないものと思われる。

この記事で何が言いたかったというと、そもそもビデオゲームというのはインタラクティブなメディアであり、多様なフィードバックが繰り返されることで「楽しい」、「気持ち良い」という感情が引き出されるが、そのフィードバックに音がつきものであり、多少ゲームデザインに難があっても、フィードバックの音さえ気持ち良ければ自分は満足しているんじゃないかということを考えたわけである。アクションゲーム(縦スクロールだろうと、ベルトだろうと、3Dだろうと)は、「デュクシ」感のある音で敵を倒せればそれだけで満足。

ASMRというジャンルとハイパーカジュアルゲームを悪魔合体したゲームが出てきて大ヒットを飛ばしていることを鑑みるに、銃の音とフィードバックの「デュクシ」音に特化したモバイルゲームが出てきたら、自分はそれに抗える自信は無い。

ビデオゲームの本質はASMRだったんだな(たぶん違う)

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