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終活

駅前の喫茶店。上品な東京ことばで話す老人が二人。

大病を患っていたらしい相手の回復具合を頻りに気遣っていた男性が、やがてボソボソと近況を語り始めた。

‥‥ある日の午後、所持品一切を駅のコインロッカーに預けて墓参り。寒い季節ということもあって辺りには誰もいない。お参りを済ませて墓に腰かけ、睡眠導入剤を飲んだ。そのまま眠りについて、目覚めると病院のベッドの上だった。誰かが通報したらしい。

はっきりとした自覚はなかったが、眠りながらだと苦しくないという思いはどこかにあった。今思えば、スマホまで預けたのはやはり死ぬことを考えていたのだろう。煩わしい家庭事情もあった。

病院もそう思ったようで、心療内科の受診を勧められ通院している。幸い良い医師に巡り合い・・・・。

概ねそんな趣旨の話しだった。

見た目の印象だけのことではあるが、教養もあり、それなりに誠実に生き、暮らし向きも良い。そんな市井の一老人の会話だ。

面白い町ネタとして紹介したいのではなく、ここから何か教訓めいたことを引き出したい訳でもない。何かちょっと捨ておけない感じがして、自分の備忘として記しておく。

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