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17. リーマンサットブルー

2015年3月未明。

第二回のミーティングにて、リーマンサット・プロジェクト(仮)が開発を進めていく人工衛星のミッションが決まってしまった。これで本当に人工衛星を作らなくてはいけなくなってしまった。とはいえ、このころはまだ気楽だった。人工衛星を作るのがどれだけ大変なのか知らなかったから。

さしあたり、全体の体制として「技術班」と「広報班」の二本柱を立てることになった。

「技術班」は言わずもがな、実際に人工衛星を作る部門。ミッション候補は3つあって、それぞれ別々に進めはするけれど、そもそも当時は誰も人工衛星開発について知らなかったので、電源とか通信とか、基礎的な部分は一緒にやりましょう、みたいな形だった気がする。

そしてもう一つの「広報班」はリーマンサットと宇宙開発のすそ野を広げることをする部門。リーマンサットのウェブ運営、(自分たちが楽しめる)コンテンツ作りはもちろん、外部との交渉、お金のこと考えるなど、人工衛星を作る「以外」のことをやるのはこっち、という形でできた。
もちろん、ぼくは後者の所属。人工衛星を作る教科書みたいな本があって読んだけれど、半分どころか四分の一くらい読んだところですでにわけがわからなくなったので、当時から技術班にはほとんど関わっていない。

その広報班だけれど当初に話をしていたのは主にHPのこと。
ちなみに当時は作っていたHPは今みたいに立派なものではなく、最低限作りましたってもので、コンテンツも全部ぼくが書いていた。
ちなみに、一部今でもみられる。↓
http://rymansat.blogspot.com/

ところでリーマンサット・プロジェクトのカラーと言えば青(空色)を基調としていることを関わっている人はご存じかと思う。
では、どうして青(空色)なのかはたぶんほとんどの人が知らないのではないだろうか。

まあたぶん、宇宙(そら)に向かっていくから空色、というのが多くの人の認識なのだろうが実はそれとは別のおおもとの理由がある。
実は、当時ベンチマークにしていたとある団体のチームカラー赤で、ぼくらは何もかもそことは逆の方向へ持っていこうとしていたから。というわけでカラーも赤の反対で青! となっている。

そのチームと言うのは宇宙開発界隈では名高い、月面に調査機を打ち上げて走らせて賞金を獲るレースに参加していた日本の某チームだ。
なんかもー、これぞ「宇宙開発してる人たち」の典型というか見本と言うか。

・チームのメンバーは航空宇宙工学の専門家であったり、経歴豊かなビジネスマン
・大手企業からスポンサー受けたり、技術提供受けたり、メディアとタイアップしたり
・スマートでカッコいいチーム
・指揮系統があってピシっとしている
・最高峰の技術と人員を投入して優れたものを作る
・一般人も参画できるけど応援のみ、その応援の参画も条件付き
・チームカラーは赤

恐れ多いことはなはだしいが、趣味でできる、誰でもできる宇宙開発を掲げたリーマンサットが目指すのはこの某チームの真逆じゃん。彼らの真逆を行くことがぼくらの道筋だ! となっていた。

というわけで
・チームメンバーは宇宙開発のど素人、そこら中にいるごくごく普通のサラリーマン。エリートや特別な人はいらない。
・特定の先からヒトモノカネの援助は受けない。自分たちで自由にやるのが第一!
・思いしかないのだからカッコいいわけがない。頭のねじ数本外す勢いで泥臭く、暑苦しく。カッコよくスマートに、なんてリーマンサットでは邪道!
・上下関係なんて存在しない。指揮系統もなし。メンバーそれぞれの意思や事情を尊重し自分でやることを見つけて自分でやる
・成果物がダサかろうがしょぼかろうが関係ない。「楽しい」が一番
・誰でも参画可。来るもの拒まず去るもの追わず
・チームカラーは青

とかなんとか。ちなみに広報班で当時アイデアがあったコンテンツで、その某チームさまと一回対談したいね、などと言ってたりしたし、打ち上げを果たした後の2019年現在でもたまにそんな話題になり、「ぼくらは宇宙にちゃんと行ったんだから最終的な到達点としてはこっちが上だろ」なんていう人がちらほらいたりする(もちろん、某チームさまとの対談は現在までも実現していない)。

向こうはゾウから見たアリくらいの認識だっただろうが、アリにはアリの生きる道がある。当時のぼくらは方向性をあっちだこっちだと言いながら一歩を踏み出したばかり。でも気概だけはたっぷりあって、王道なんぼのもんじゃい、ぼくらはぼくらの道を切ら開いてやる、と意気揚々リーマンサット的宇宙開発への道を歩き出した。

零号機打ち上げまであと3年半。

リーマンサットに興味を持ってしまった方はこちらへ
https://www.rymansat.com/


PHOTO BY NASA

皆さまのご厚意が宇宙開発の促進につながることはたぶんないでしょうが、私の記事作成意欲促進に一助をいただけますと幸いでございます。