09. 処刑台二歩手前
2015年1月14日。
物事というのは予想がつかない。
ぼくにとってはリーマンサット・プロジェクトが本当にいい例だ。
こんな感じじゃね? と安易に足を突っ込んだらあれよあれよととんでもない方向に物事が走っていく。
2014年、プロジェクト結成当時。ぼくらはこのプロジェクトを「10人くらいでみんなで本とか見ながら手を動かして人工衛星を作る」くらいに考えていた。
しかしMAKRE FAIREに出展して、「年始にキックオフのミーティングします、来たい人はどうぞ」と宣伝したところ、なんと20名ほど参加希望者が集まってしまった。
うん、確かにそのMAKRE FAIREで「趣味でできる宇宙開発は結構需要がある!」と手ごたえを得たものの、まさかこんなに集まるとは思っていなかった。10人きたらいいほうでしょ、くらい。完全に想定外。
どーすんの、まじで。
と思っていた。
数人来るくらいだから、まずは最初のぼくらみたいに「なんで宇宙やりたいの」とか「どんなことできるの」とか、「これからどうやっていこうか」とかをみんなでコーヒー飲みながら話せばいいや、としか思ってなかったから。
ところがまさかの20人。
いつものように都内某所の喫茶店に集まって、ぼくらはうーんとうなるばかり。
キックオフミーティングは月末。あと2週間くらいしかないのに、内容がまだ決まってない。
もちろん、おおまかなスケジュールは決めてある。
流れとしては
・目標や方向性とおおざっぱなスケジュールの確認
・衛星打ち上げに必要な概要の共有
・各メンバーの自己紹介
みたいな感じ。
しかし、これだけだと一時間程度で終わってしまう。
そもそも「みたいな感じ」ってなんだよ。
数名ならともかく、20人の前でそんな行き当たりばったりをやっていいのか(絶対によくない)。
だが正直なところ、当時のリーマンサットで決まっていたことと言ったら
「サラリーマンたちを集めて2年以内に人工衛星を作って打ち上げる」以上。
である。
ぼくらが人工衛星の制作に関してノウハウを持っていたら別だが、そんなもの切なし。あるのはコンセプトだけ。
いや、でもMAKRE FAIREでも言ったよね、まだ何も全然ちっともできてないって。人工衛星に関する知見もないって。
そもそも怪しさ満点のプロジェクトに来ようと思ったのは一体全体どういうことだ、参加希望の20人は何を期待していたのか!!??
さしあたり、その辺の聞き取りはしたい。
そんで、ミーティングに参加してくれる方たちがどういった意見や要望をもっているのか、みんなで今後どんなふうにやっていくかがよいかアイデアが出たらいいなあ(、と他力本願感満載だった)。
根本的な課題として作成する衛星自体のコンセプトがかっちり固まっていなくて、その辺はぼくらが独断で決めるのではなく、今後参加してくれるであろうメンバーの人たちから意見を募って、みんなで決めたいと思っていた。
というのも、このリーマン・サット(仮)というプロジェクトを立ち上げた意義の一つに「現状の宇宙開発における閉塞感を打破する」ということがある。
一般社会から見て「宇宙開発」と言うと、小惑星探査機「はやぶさ」の活躍など、以前と比べて身近にはなっているものの、以前として宇宙ステーション、気象衛星、通信衛星など、どうしても公的で生活からは縁遠いイメージになりがちだ。
しかし、超小型衛星ならば民間でも打ち上げることが可能になっていたので、技術的には気軽な面も大きくなってきている。
ぼくらはその「気軽・身近、民間でもできる」という部分にフォーカスして、宇宙開発の世界をもっと広げていきたいと思っている。そのためには「宇宙が大好きで宇宙開発にとても興味のある人『だけ』」でやるのではなく、「ちょっとだけだけど宇宙に興味を持っている人」、もっと言うと「宇宙開発なんて興味ない人」までも巻き込んで、宇宙開発に携わる人自体を増やしていく必要がある。
プロジェクトを進める上で一番の問題は「これからどうやって人を巻き込むか」である。
これはとても難しいことだけれど、ぼくらが最も大切にしたいことの一つだ。
ぼくらは方針として「宇宙開発に関係ない人、それこそ家族や友人など、身近な人を巻き込む」というのをあげており、打ち上げる衛星のコンセプトとしてはこの方針を土台に決める必要があると思っていた。
だからこそ参加してくれる方々の要望もざっくりと簡単にで構わないから知っておかなくてはいけない。となったわけである(なので他力本願ではない、決して)。
とはいえ、いきなり「じゃあみんなで作成する人工衛星のコンセプトを考えましょう!」と言ってもそんなもの出てくるわけがないので、「まずはこのメンバーで一人一人、サンプルとしてコンセプト案を考えて、Kick Off ミーティング前にもう一度打ち合わせをしよう」ということになって2015年一発目の打ち合わせは解散。
このプロジェクトを成功させるには、ぼくらだけでは困難で、たくさんの人の力が必要だ、ということを改めて感じていたことを覚えている。
それはメンバー数が400人くらいになってしまった今も変わってはいない。
と思う、たぶん。
リーマンサットに興味を持ってしまった方はこちらへ
PHOTO BY NASA
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