見出し画像

25. 挑戦状

2015年12月。
リーマンサットが始まってから2度目の年末。
今年もいろいろあったなあ、などとこたつでミカンを食ってなどいたらどんなに気楽だっただろう。
11月に丸一年を迎えた直後、リーマンサットは創設以来の危機に直面していた。
それは

M氏「仕事の関係で、活動に参加できなくなりました」
H氏「子育てしなきゃいけないので、活動に参加できなくなりました」

なんてことになっていたからだ。

当時のコアになっていたメンバーが3/5になってしまう。
特に、M氏は創設メンバーで唯一の技術方面だったので、技術メンバーの中核がいなくなってしまう。
そして何より、

<これまでの構成>
宇宙好き O氏/M氏/H氏:宇宙興味ない S氏/ぼく=宇宙好き3:宇宙興味ない2
だったところ、
宇宙好き O氏:宇宙興味ない S氏/ぼく=宇宙好き1:宇宙興味ない2
と、宇宙開発団体にもかかわらず、コアで関わっている人間の半分以上が宇宙に興味ないという、極めて危機的状況に陥ることとなった。

とはいえ、実のところ当時のぼくは「まあ、確かにとても痛い状況であるけれど、うーんどうしようかなあ」くらいだった。
なぜならばそもそもぼくは宇宙開発に興味がないので、リーマンサット・プロジェクトがうまく行こうが行くまいがどっちでもいいから。ぼく自身は主役ではなく宇宙開発をしたい! と思っている連中を援護することが役割。それ以上でもそれ以下でもないと思っていた。

しかし、2015年仕事納めのその日、夜飯を一緒に食っていたO氏がぼくにこう言った。

「もっとちゃんとやれ!」と。

おそらく、O氏には焦りもあったかと思う。なんせ、M氏とH氏が抜けてファウンダーのキャパが40%失われてしまうのだ。
戦争教義では部隊の30%が損耗したらその部隊は機能を失う状態、つまり「全滅」とされている。この場合、5人のうち2人なので割合にすると40%。ちなみに部隊の50%が損耗したらステータスとして「壊滅」とされ再編成すら不可能な状態であり、つまりその時のぼくらは「全滅」と「壊滅」の間くらいのどっちにしてもどうしようもない状況である。
だがせっかく立ち上げたリーマンサット・プロジェクト。一年持ちこたえたどころか人も増えてだんだん大きくなっている。このまま進んでいけば夢として描いていた「素人でも人工衛星を作って宇宙に飛ばす」ことが叶うかもしれない。O氏はこのまま終わるわけにはいかないと思ったに違いない。
そんなとき彼は気づいたのだ。「こいつ(ぼくのこと)はまだ力を残している」と。

ぼくは正直少し震えた。怖かったわけでも恥ずかしかったからでもない。
おそらくドラゴンボールのフリーザさま(第二形態)や幽遊白書の戸愚呂弟(80%)は、悟空から、幽助から「おめえの力はまだそんなもんじゃねえだろう、本気を出せ」と言われた時、ぼくと同じような気持ちだったのではないか。

彼らが初めから本気を出さなかったのは決して相手を舐めていたわけではない。それは慈悲だ。常に本気の状態ならば不用意に周りを壊してしまうから力を抑えていたのだ。
フリーザさまや戸愚呂弟とまではいかなくとも、ぼくもそれまで本気を出していなかったのには宇宙に興味がないことのほかにもう一つ理由がある。ぼくが本気で何かやり出すと大抵誰も付いてこなくなってしまう(一人であれもこれもやって突っ走っちゃうから)ので、リーマンサットでは皆と一緒に進んでいくために敢えて力を抑えていた。皆とともに歩むためには本気を出してはいけないと思っていた。

だが彼にはそれが不満らしい。

その時の感情は歓喜に近い。なぜならばフリーザさまも戸愚呂弟も、本気を出したくとも出せなかったのだから。
しかし、ついに枷を外すときが来たのだ。外すことを望む者が現れたのだ。


ふっふっふ……。

はーはっはっは!

いいだろう。
望むというのなら見せてやる!
私の本気というものを!
残念ながら手加減はできない。
付いてこられなくなったとしても、後悔するなよ。
それはこちらの本気を望んだ貴様の責任だ!
いくぞ!!


2016年に続く。


打ち上げまであと2年9か月。

リーマンサットに興味を持ってしまった方はこちらへ
https://www.rymansat.com/


PHOTO BY NASA

皆さまのご厚意が宇宙開発の促進につながることはたぶんないでしょうが、私の記事作成意欲促進に一助をいただけますと幸いでございます。